希死念慮と朝日

朝の7時。
私の部屋には窓が2つある。
カーテンのかかった窓が2つある。

朝起きて直ぐにカーテンを開けるのが日課。

今日は開けない。
上半身だけ起こして、少し俯いて自分の髪先を眺めていた。
眺めた後に起き上がって、顔も洗わずに冷蔵庫へ。お気に入りのガラスコップに牛乳。パンを焼いて白い皿へ。今日はバターも塗らなくていいや。
部屋の真ん中、ガラスのローテーブルに置く。

机の上には映画のチケット、ブランド物の手帳、なんとなく買ったオシャレなポストカード。
壁にはポスター。本棚。本棚にいつもかけている目隠しと背表紙焼け避けの布はくしゃくしゃになって床に落ちている。

ローテーブルに頭だけ乗せてじっとコップを見つめた。コップの中でしーんとしてる牛乳の液面を見ていた。

ああーとかううーとか声が聞こえる。私の声だ。私の声なのに私の意思と関係なく口から漏れてくる。

関節を労わるような緩慢な動きでやっとカーテンを開けた。
ぴかぴかの快晴だ。
顔に日が当たって、それだけで何か立っていられなくなって床に転がった。

部屋が焼けてる。
きらきらの朝日で焼けてる。
机の上の映画のチケットもブランド物の手帳もオシャレなポストカードも、
壁のポスターもお気に入りの本の背表紙も、目隠しの布も、全部全部焼けてくれないかなと思う。
こうして日光を浴びて、じわじわ日焼けして、それらに印刷された色も文字も全部薄くなって、真っ白になってくれないかな。

即物的に大事にしているもの全部真っ白に。

そうしたらきっと私の中の何かも真っ白になってくれる気がするのだ。

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