【感想】TOUGH外伝 龍を継ぐ男 BATTLE.380 差し金
鬼龍は道化師なんだ。
笑われながら龍を継ぐ男を盛り上げるんだ。
◆前回までのあらすじ
あの男に近づく千載一遇のチャンスだったホワイト・ナイト・バトルだが、当人は大会そっちのけでS地方で狩猟を楽しんでおり、当初の思惑が空振りに終わった鬼龍。しかし、そんなあの男のすぐ傍に彼を狙う復讐者の影が!?
◆ボリス再び…!!
~ R国S地方 ~
警備兵A「ヘラジカを殺した奴はどこに行った?」
警備兵B「どこに消えたんだ?まだこの近くにいるはずなんだ」
あの男の狩猟場に現れた巨大ヘラジカの変死体。銃器や刃物を使用した痕跡はなく、人の手で首をへし折られたとしか思えない死体を見て周辺を警戒するR国の警備兵たち……が、犯人の姿はどこにもない。
だが凍結した湖の上を歩く警備兵2人の真下には氷面を隔てて身を潜めている"最強囚人兵・ボリス"の姿があった。
ボリスは君のすぐ下にいるよ。
(めっちゃボリスの姿が透けてるんスけど、いいんスかこれ?)
演出がモンスター・パニック映画のそれですね。しかもボリスの服装がパンイチという異常さ。こんな軽装で凍結した湖の中を行動できる彼はもはや人間ではない。
一応ハイパーボーンの骨の成長を抑制するために普段から特殊冷却スーツを着ている設定だけど、シベリアの極寒刑務所で服役中に足の指が凍傷で壊死しているから寒さに対して無敵ではないはずなんだが……。
◆二度目の暗殺
結局、巨大ヘラジカを殺した犯人を見つけることができず、警戒を解いてその場を後にしようとする警備兵だが……突如、湖の氷を突き破ってボリスが奇襲。あっという間に警備兵1人の背後を取って首を折り、死体をそのまま盾にしながら激しい銃撃戦が始まった。
ボリスの圧倒的な戦闘力の前に成す術なく蹴散らされていく警備兵たち。しかし、彼らが肉壁となってボリスを足止めしている間にあの男は輸送ヘリに乗り込み、その場から逃亡しようとしていた。
ボリス…すげえ、感動するぐらいワンマン・アーミーだし。
やはり最強囚人兵の名は伊達じゃないですね。正直、今の鬼龍がこの状況になったら一溜も無いと考えられる(『タフ外伝 鬼龍』で中東の過激派組織を1人で壊滅させた「あの強さ」どこへ!!)。
銃を持って迫ってくるボリスに対して、急いで離陸を始めるヘリのパイロット。ボリスは僅かに間に合わず、苦し紛れにヘリに向かって銃弾を撃ち込むが…既に有効射程の外。逆にヘリの警護兵が放ったグレネード・ランチャー(GM-94だよな…)の擲弾がボリスの近くで炸裂。
ボリス「くそおおおおっ(ザバァ」
直撃こそしなかったが足場であった湖の氷が崩壊し、既の事であの男を取り逃がしてしまう。
暗
殺
失
敗
あの男「ファ~危ない」
ボリス大丈夫?これで大統領暗殺未遂2回目だけど。
これ結構不味くないですか?今回の襲撃犯がボリスなのは確実に割れてるし(変装くらいしろや…)、こうなると一緒につるんでいる鬼龍おじさんの立場もヤバいんだよなぁ。
そういえばボリスが1度目の暗殺未遂で始末されずに生かされたのって何か理由があったっけ?いくら戦闘能力が高くて利用価値があるとはいえ、大統領を暗殺しようとした危険人物を冷徹で猜疑心の塊なあの男がわざわざ恩赦を与えるのは不自然だと考えられるが……。
サド看守「しかし不思議だよな 命を狙ったお前をなぜ始末しなかったのか」←現状本当にただ不思議なだけなんだよね、すごくない?
◆鬼龍とボリス
~ R国首都 ~
(背後に見えるのがクレムリン宮殿、WNBが行われたオリンピック・スタジアムから少し遠いね…何なら公開計量やったボリショイ劇場の方が近い)
鬼龍「バカなことをしてくれたなボリス」
携帯でボリスと通話しながらR国の首都を練り歩く鬼龍は今回のボリスの勝手な行動に対して、これであの男の警備がより一層厳重になり、今まで以上に近づくことが困難になると怒りをあらわにしていた。
ま、なるわな…。
鬼龍直々のお叱りを受けるボリス、残念でもないし当然。でも鬼龍おじさんも"あの男強火ファンであるヨシフの前であの男を散々愚弄しまくった上で接見したがる"という傍から見ると超怪しいムーブをやってるから遅かれ早かれな気がしますね。
(鬼龍「あの男…糞」→ヨシフ「ククク...ひどい言われようだな まぁ日本人はそういう感情持ってもしょうがないけど」→鬼龍「で あの男にはいつ会えるんだ?」→ヨシフ「・・・」)
ボリス「わ…悪かったよ」←ちょっとカワイイ
ボリスの言い分としては鬼龍から何の連絡もない状態が続いた上に同志であるゲルマノヴィチ博士の訃報(←今通話してる相手が裏切ったぞ )…さらに仇であるあの男がS地方に狩猟に行ったという情報が耳に入り、居ても立ってもいられなくなったのこと。鬼龍はお前が軽率な行動を取ると俺の首まで危うくなるから自重しろと怒り心頭の様子で電話を切る(手遅れを超えた手遅れ)。
うん?鬼龍から連絡がないのにゲルマノヴィチ博士がキラー・ジョウに始末されたのどうやって知ったんだろ?反体制派の情報網か?
表向きはヴィクトル・グループ側について反体制派にとっては裏切り者である鬼龍&ボリスって協力が得られにくいと考えられるが、反体制派も一枚岩ではないし、ゲルマノヴィチ博士のバックにいた組織と殲滅されたオリガルヒ・グループは違うってことか。
当然とはいえボリスは鬼龍がゲルマノヴィチ博士を売ったこと知らずに信頼しているのはちょっと可哀想に感じる。一応、ボリスも鬼龍に協力して反体制派のオリガルヒをぶちのめしたから非難できる立場ではないけど。
あと、前回の感想でボリスがS地方で待ち伏せできたのは最初から全て知っていた鬼龍が情報を横流ししたと予想していたけど結局自力で情報を掴んでいて驚きましたね。
これじゃあ大会中ずっとヨシフおじさんの隣にいたのにあの男にも会えず、狩猟に行ってることを終わり際に知った鬼龍おじさんがバカみたいじゃないですか。
激動のスケジュール過ぎる……。
S地方がR国首都からどれぐらい離れているか分からないけど、ボリスの情報が博士の死亡→あの男のS地方狩猟の順だから今回の襲撃はホワイト・ナイト・バトル第10試合前から少なくとも半日ぐらいは経っていそうな気がする。あの男はホワイト・ナイト・バトル当日~翌日の間に狩猟を楽しんでいたって感じかな。
そして…黒幕の正体を知れた以外は特に成果を上げられず、白鯨のおっさんと駄弁っただけで1日が終わった鬼龍に哀しき日程。
◆差し金
鬼龍「…ったく これだからバカは疲れる」
通話を終えて愚痴りながらストリートを歩く鬼龍。前方から子供と手を繋いだ女性が歩いてくる。彼女は鬼龍のすぐそばを横切ると……
一瞬で鬼龍の背後を取り、
注射器を首筋に刺して薬物(?)を打ち込んだ。
突然の出来事に驚愕の表情の鬼龍(←すまん、この顔あまりにもマヌケ過ぎて笑ってしまう)。
女性「さあ行きましょうね」
そして何事もなかったかのように子供を連れてその場を立ち去っていく。鬼龍は痙攣しながら口を抑え、その場に膝から崩れ落ちる。
う あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ(PC書き文字)。
女性工作員に失神KO!
怪
宮 物
沢 を
屈 鬼 超
辱 龍 え
た
怪
物
プ・レボに醜態を晒される
かつて「悪魔を超えた悪魔」と呼ばれ、米国大統領ですら恐れていた(過去形)、"あの"宮沢鬼龍がメス・ブタ工作員に不意打ちで薬を打ち込まれている!!
久しぶりに見たぜ、猿渡先生の鬼龍sage展開。この至高の技を受け継ぐ者がいないだなんて……あまりにも勿体ない(←勘弁してくれ)。動物園のゴリラにあわや殺されかけ、今度は子連れのメス・ブタに負けるのか…こ…こんなの納得できない。
いやマジで2年前のゴリラ→悪魔王子にボッコボコ展開の並みの衝撃だわ……いくらなんでも耄碌しすぎ。今の鬼龍って絶対TOUGHのガンビーノ暗殺包囲網突破できないでしょ。
あの時は殺気を孕んだ相手を遠距離でも察知する能力があったのに……。
メタ的には命まで奪う薬ではないはずだからメス・ブタ工作員に殺気が無くて気付かなかったと考えられるが……それにしてもダサすぎる。
悪魔王子はこんなクソゴミの跡を継ぎたいのん?
熹一「はうッ」←メカ・モスキート&テーザー銃
静虎「はうッ」←針
龍星「はうッ」←針
悪魔王子「はうッ」←注射器
鬼龍「はうッ」←注射器
龍を継ぐ男、不意打ち針・強すぎ問題。針はダメだろ(ガシッ。そして悪魔王子と鬼龍は共にR国の注射器にやられている辺りやっぱり親子っスね。
それとこの鬼龍を不意打ちした女性……ボリスの亡き妻のエレーナにめっちゃ似てないですか?ボリスはエレーナの死体を確認しただけで実際の死亡シーンを見てはいないんだよなぁ……もしかして…いや、考えすぎか。
鬼龍「…ったく これだからバカは疲れる」←灘の関係者「…ったく これだから鬼龍は疲れる」
◆忍び寄る悪の手
一方、裏ではヨシフと悪魔王子が密会を行っていた。ヨシフは鬼龍なんかいつでも殺せる、死よりも生きる方が難しいと言い、悪魔王子に足してお前は生きたいかと問いかける。それに対して彼の返答は……
悪魔王子「ああっ 鬼龍の血肉を喰らってでも生き抜いてやる」
奈落の底からどこまでも昇りつめてやるという不撓不屈の精神と底知れぬ生への執着心、"悪魔"を超越し本物の"龍"となろうとする彼にとって鬼龍ですら餌でしかなかった。
裏切りの悪魔王子……鬼龍の運命は如何に!?
~
スタンプ「龍星見たか」
龍星「はい見ました」
スタンプ「汚いマネするよな」
龍星「はい」
スタンプ「鬼龍は迷惑な奴だが少しだけ応援したくなった」
龍星「はい(少し)同感です でもよくよく考えたら普段あの人がやってることをやり返されただけですよね?」
スタンプ「やばっ 因果応報ってあるんだな 鬼龍のことだけど」
~
あの男に取り入るためにR国へ悪魔王子か龍星の心臓を高く売りつけようとしていたら逆に自分が売られてた……それが鬼龍です。←己の悪因悪果を呪え!
この展開にあの世でゲルマノヴィチ博士はほくそ笑んでいると思うよ。
鬼龍の安否に関しては「灘神影流"総身退毒印"その参」とかで事なきを得るか、捕らえられてサド看守編か、熹一や龍星、ワンチャン鷹兄が助けてくれるいつもの展開があるから心配ないとして(このオッサンいっつも身内に助けられてんな)、悪魔王子は認めてもらいたいと思っている鬼龍を裏切って何が目的なんだろう?
流石に本気で鬼龍を切り捨てるとは思えないし、うまいこと鬼龍を撒き餌にしてR国も利用してやろうって魂胆なのか……米国が依然として敵だから目下最優先なのは身の安全保障だしね。
今週ラストのシーンは
・悪魔王子に頸動脈治療の痕跡が見えないから大会前の話
・普通に鬼龍襲撃後の話
の2パターンが考えられるが、前者だとすると最初から鬼龍の目論見はヨシフに筒抜けだったってことになって鬼龍がかなりマヌケに見える。後者は悪魔王子の傷の有無が気になるが、大会終了~ボリス暴れる~鬼龍襲撃まで実は数日経っているってことにすればまぁまぁ納得できる気がする。てか普通に後者な気がしてきた。
(龍継の時系列グッチャグチャだからあんま深く考えても意味ないけど)
◆忍び寄る悪の手… ← もう鬼龍と悪魔王子とR国で勝手にやってろって思ったね。
次号、鬼龍の運命は…!? ←「次号、○○の運命は…!?」は禁止カードにしませんか?これ便利すぎ。
◆まとめ
不意打ち&クスリ展開なんてのはどうでもいいんだよ。
問題なのは…メタ的に鬼龍が死ぬわけないから読者に対して只々醜態を晒しただけなところだ。
格闘漫画における大会というフォーマットに(一応)収まっていたホワイト・ナイト・バトルが終わったら途端に猿濃度が急上昇して今後の展開が不安になってきた…それがボクです。
今週の注射器展開は久しぶりにパンチの効いた展開である意味盛り上がりはしたけど、かつて「生殺与奪の権は我にあり」と息巻いていた鬼龍が今ではその逆……年々弱体化していく様は老いぼれの悲哀を感じますね。
昔の鬼龍:米国大統領をいつでも〇せる。
今の鬼龍:←いつでも〇せる。
めちゃくちゃマヌケ面で注射器打たれたページ読んだ時は思わず唖然としましたよ。
鬼龍はクソ迷惑な奴で私も毎度リアル・ネット問わず愚弄しているが、何だかんだ好きなキャラなのでこう無様を晒すと悲しくなってくる。
せめてここまで鬼龍の見た夢ってことにできませんかね?
◆余談
・リカルドについて
龍を継ぐことは早々に辞めて日本で毎日ラーメン健康生活してるリカルドは勝ち組を超えた勝ち組。ミスター鬼龍の厄介ごとにも巻き込まれないし。てかR国完全にリカルドのこと忘れてない?
・龍を継ぐ男における鬼龍の醜態について
今頃になって御狐様達の呪殺祈祷が効いてきたのかもしれないね。
遅効性を超えた遅効性。
◆次号予告
次のプレボNo.29は7月1日月曜日です。
出典:猿渡哲也『TOUGH外伝 龍を継ぐ男』第380話