3.侍タイムスリッパーとか 時代劇とか
ちょっと前に話題になっていた「侍タイムスリッパー」を11月7日に観てきた。あまりネタバレを書きたいとは思いませんが、多少含んでしまっている事は先にお詫びします。
さて、内容を無理矢理短く言うと「侍が現代にタイム スリップして珍道中」である。「武士が現代にタイムスリップする」という設定自体はよくある設定ではある。ならばこの作品は、どの様にその「あるあるの設定」にどの様な要素を加えて特徴を出したのか。そこで武士が剣術の技能を存分に生かして、時代劇の斬られ役になるという設定を加えてきたのである。なるほど面白い。
この映画の主人公は、実際の斬られ役と知られる福本清三氏がインスパイアされている(感がある)。福本氏が世間一般で知られる事になったのは、トムクルーズ氏や渡辺謙氏が出演していた、「ラストサムライ」だと思う。作中でもハリウッドでも活躍してる監督が出てくるが、その辺りの事情も加味されているのではないだろうか。
福本氏は「ラストサムライ」で印象的な芝居や、匠の斬られ姿を披露している。寡黙な武士の役ではあったが台詞も話している。作中の主人公も重要な作品に抜擢され台詞を貰っている。
作中には時代劇あるあるや、有名作品を思わせる作品がイジられ気味に出てくる。作中に没入する迄は、正直に書けば「うーん、何だかちょっと言語化出来ないけど•••なんだかなぁ。」と思ってしまったのが正直な所である。ただ冷静に考えればタイムスリップした武士があれこれするという事が無茶苦茶なので、この「なんだかなぁ。」という気持ちは当たり前だし、後々意味を持ってきたりもする。
作中のコメディー部分は本当に面白い所と、くだらない所があるという事は書いておく。そのくだらない所と本気の落差が、この作品の見所とさへ言えるのでマイナスの要素ではないと思う。
この作品は自主映画である。GAGAが配給についたり、全国公開してはいるがあくまでも“自主”である。大手メジャーと比べては予算は小さい。作中に助監督役の女性が出てくるが、本当に助監督もやっていたりする。小劇団だと役者も舞台装置やったり裏方やったりもするが、自主映画でもそんな感じなのかも知れない。自主映画でも予算の違いはあるので一括りにするのは良くないかも知れないが。
自主映画で撮影所を使用している事は異例との事。時代劇隆盛の頃ならば認められ無かったかも知れない。ただ、そんな時代だからこそこの映画が生まれたのだろう。
世を忍ぶ仮の姿で町人と相対した後に、「成敗!」となる暴れん坊なドラマや、眼の中に印籠を入れようとするあのドラマ、桜吹雪やら、お金を投げてぶつけたり、年末恒例の長尺時代劇も無くなってしまった。
NHKではまだ大河という大看板がある。しかし、毎回戦国や江戸や幕末ばかりというわけでもなく、マラソン走ったり平安と言った変化球もあるので、絶対に武士が活躍する時代劇があるとも言いきれない。
歴史好きや時代劇好きの方には、「まだやられていない人物はいる。」という意見もあるだろう。だが、小中高校位まで普通に日本史やってきた人が思いつく位の人となると大抵の人物はやられている。同じ様にドラマ作りをしても既視感が出てきてしまう。どう違う要素を入れるべきなのかという事がある。
漫画やアニメでの武士が活躍するものは多くあり、漫画原作の時代劇の映画自体は作られている。ハリウッドでも「SHOGUN 将軍」がエミー賞を18冠をかっさらった。映画や配信では時代劇は数は自体は減ったが作られている。地上波(特に民放)ではもう極僅かである。
作品により違うという事は前提として、時代劇は現代劇と比べてお金がかかると言われている。ドラマだけでなく、テレビ番組の予算が少なくなってきている。その様な時代になり、尚の事、時代劇は作り難くなってきている。そこで予算をかけても、キチンとしたものを作ればという事がより大事になってくるが、チケット代や配信の料金でペイされるという事がわかれば、自ずと地上波よりそちらが中心になるのは自然な流れなのかも知れない。
横道に逸れ過ぎてしまった。戻します。😅
主人公は斬られ役という俳優として生きていくと決めていく事になる。そんな時に武士との狭間で揺れ動く出会いがある。クライマックスに向けての流れは見応えがあり、「斬られ役としてではない殺陣」が出てくる。息をのむ。
現代と相容れない武士としての自分、斬られ役としの自分、大きな役を貰った後の自分の揺れ動きはカッコよさとトンチンカンな動きとして現れている。
細かくつっこめばツッコミどころは多い映画かもしれない。ただ予算的に大きくない自主映画という中で、ここまでのムーブメントを生み出したこの作品は色んな意味で「真剣」で「命がけ」だなと思った次第である。
自分は注力して時代劇を観ているというわけではない。大河を観たり再放送でチラッと観たりはするが、時代劇を多く観てきた層とも外れていると思う。そんなコアな時代劇ファンじゃない人が観ても面白いと思う。作品全体の設定も漫画やアニメ的とも言えると思うので。
乱文誤字脱字失礼しました。終わります。
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