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私がタッチングを始めたのは、母のがんがきっかけでした

 私がタッチングを始めたきっかけは、母のがんの介護でした。がんになった母に最後までできたのがタッチングだったからです。タッチングを始めて20年、タッチングの本も2冊、出すことが出来ました。今回は、私がタッチングを始めたきっかけのお話です。


マッサージが大好きだった母

 私の母はマッサージが大好きでした。母はがん以外にも何度か手術をしていて、手術のあとによく母をマッサージしていました。がんになったときも、同じようにマッサージしていました。ですが、がんが進行していくにつれて、母はマッサージを嫌がるようになったのです。

終末期の母にできたこと

 がんが進行していくにつれて、母はマッサージをすると「しんどい」と嫌がるようになりました。最後の頃は、腹水に胸水も溜まって寝返りも自分で打てなくなっていました。でも、話もろくに出来なくなった母を撫でさすると、フッと息を吐いて楽そうにしてくれたのです。たまに小さな声で「気持ちいい」と言ってくれました。私はそれがうれしくて、母が亡くなる前日まで、撫でさすり続けました。

撫でさすることは、タッチングだった

 母を撫でさすることが、タッチングとわかったのは母が亡くなってからでした。母の死後、私は撫でさすることで、なぜ母が楽になったのか知りたくて、鍼灸やアロマテラピーを学びに学校に行きました。鍼灸もアロマも、とても面白く、勉強になったのですが、どちらもタッチングを学ぶことはできませんでした。そして、そのどちらも母にはできないと思ったのです。

鍼灸やアロマが母にできないと思った理由

 鍼灸もアロマは本当にいい技術なのですが、終末期の母にできるかと考えたとき、私はできないと思いました。

 浮腫で肌が弱っていた母に鍼を刺したり、お灸をすることはできません。声も出せなくなっていた母にアロマの香りを選ぶ気力はありませんでした。それにアロマトリートメントは圧が強すぎて母にはできないと思いました。だいぶ後になって、アメリカではアロマトリートメントはディープティシュ・マッサージと言われていると知りました。強めのマッサージに分類されているので、体力の落ちていた母では耐えられなかったと思います。

当時、日本でタッチングは知られていなかった

 20年前の日本ではタッチングはまだ知られていませんでした。もちろんタッチングを学べる場所も、どこにもありませんでした。タッチングが学べないと知った私は一つの決意をしました。

どこにもないなら、自分で作ろう!

そこから患者さんのためのタッチングの開発が始まったのです。

10年かけて開発したマシュマロ・タッチ

 患者さんのためのタッチングを作ろう。そう決意してから試行錯誤を重ねる日々が続きました。曖昧だったタッチングとマッサージの違いを明確にし、タッチングには何が必要なのかを考え続けました。そして、患者さんのためのタッチングの「マシュマロ・タッチ」ができたのです。マシュマロ・タッチができたときには、10年もの月日が流れていました。

エビデンスの壁が立ち塞がった

 これでマシュマロ・タッチを患者さんに提供できる思ったとき、次の壁にぶつかりました。それはエビデンスです。患者さんに提供するには、安全性が求められます。どんな効果があるのか、害はないのか検証されないと認められません。患者さんにするにはエビデンスが必要だったのです。

マシュマロ・タッチのエビデンス

 エビデンスに悩んでいたとき、一緒に仕事をしていたアロマセラピストだった見谷さんが「大学に入って研究します!」と言ってくれたのです。彼女は宣言通り、神戸大学に入って、マシュマロ・タッチの研究をしてくれました。そして論文も出してくれました。看護師になった見谷さんは看護師向けのタッチングを広めてくれています。

タッチングの本を2冊、出版しました

 多くの方にタッチングを知ってもらうために、タッチングの本を2冊、出版しました。看護師さん向けのメディカル・タッチと介護士やご家族向けのマシュマロ・タッチの本です。

中央法規出版


星湖舎


コロナ禍でタッチングのトレーニング機器を開発しました

 タッチングは人に触る技術なので、人を相手に練習します。でも、コロナ禍で人に触れなくなったとき、私は人がいなくてもタッチングを学ぶ方法を模索しました。そうして出来たのがタッチングのトレーニング機器です。

撫でるだけでタッチングが覚えられる

 かまぼこ型の上部を撫でるだけでタッチングを判定し、側面の液晶画面に○✖️で表示します。看護師さんのタッチング講座に導入して、手軽に練習できる、使いやすい、わかりやすいと好評を得ています。ちなみに特許も取りました。

タッチングを広めて、世界中の人の不安を解消した

 タッチングは不安や緊張、抑うつ感をやわらげ、リラックスする効果があります。コツさえわかれば、マッサージより簡単なので、誰でもできる技術です。患者さんだけでなく、小さなお子さんや高齢者まで使えます。家族のケアに手軽に使えて、ストレス解消に役立ちます。

 今、マシュマロ・タッチは、がん患者さんだけでなく、認知症患者さんや高齢者のケアにも広まっています。受験生のお子さんのストレスケアに使われる方もいます。私はマシュマロ・タッチを世界中に広めて、世界中の人々の不安を解消たいと思っています。


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