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「現場力」って何だろう!?[20241126]
今週は「日本産業の弱点」について話しをしてみたい。
「日本企業は、現場力が凄い」と多くの方々が語る。
ところで、現場力とは何だろう?
高度経済成長期に存在していた日本の強みは「現場力」だったと思う。
現場力の中身は「真面目」「コツコツ」「継続して同じことを同じようにする」ことだった。
おかげで経験曲線が示すとおり、経験時間が長くなれば「生産効率」「生産品質」が上昇し、結果的に生産コストが下がる。
日本の高度経済成長は、ここが一番の強みだった。
円高がどんなに進行しても、輸出し続けられた由縁がここにある。
これが現場力の真の姿である。
さて、今はデジタル時代。
経験曲線の漸近部にいきなり達する生産現場が、立ち上がる時代である。
つまり、経験曲線に基づくメリットを「先行している」だけでは勝てない時代に入ったということである。
この事に気付いていないのは日本だけではなかろうかと思うことが、ちょくちょくある。
どうやって生産性を高めるのかについて、経産省や大手ITベンダーは「CPS(Cyber Physical System)で生産ラインに様々なセンサーを装着し…」といったようなことを言っている。
間違いではないが、そのセンサーが収集してくるデータを何に使うのかが問題なのにそこに言及することはない。
GDP世界第3位のドイツでは「インダストリー4.0」といってデジタル時代を牽引してきたが、経産省はCPSやデジタルツインを工場にセンサーを付ければ良いというような説明をしていた。
世界最速のスーパーコンピュータ開発の話に似ていると思うのは私だけだろうか?
昔、蓮舫氏が事業仕分けの時に「世界第2位じゃダメなのですか?」と言った話である。
その頃Gartnerに勤めていた私は、こう思っていた。
「高速スーパーコンピュータは単なる道具なので、それだけでは、その是非は議論出来ない。問題は、そのスパコンで何をするかであり、そのことを議論しなさい」
CPS、デジタルツインも同じだ。
何をするのか、目的は何か? の議論をしないのは「日本のお家芸」なのだろうか。
以前に、経産官僚にこの話をぶつけたことがあるが、彼はこういう説明をしてくれた。
「部局にもよるがテクノロジー振興は役所として声をあげやすいが、企業経営そのものに口を挟むのはかなり難しい」
マネジメントは、様々な考え方があるし定石通りよりもその外側の方が成功する場合もかなりある。
なるほど…、だからテクノロジーだけなのか。
つまり、お上からの情報は「手段」にしか言及しないよということなのだ。
手段と目的を履き違える人はたくさん存在するのだが、その元凶は経産省にあるかもしれない。
そういえば先日、某若手起業家のピッチを聞きに行った時の話。
「私の脳内メーカーは『お金』『お金』『お金』『お金』『お金』で占められています」と会場を笑わせていたが、この時も私は、お金は手段でそれで何をしたいかが重要なのではと心で呟いていた。
話を戻そう。
現場力とは、手段である。
ではその手段を使って、何をしたいのか?
時代はデジタル時代である。
そして、現場には様々なセンサーが付けられており、生産現場がどのように稼働しているのかが手に取るようにわかる。
それをCPS:Cyber Physical Systemと呼んでいる。
で、目的は何だろうか?
確固たる目的無くCPSに投資した企業の何と多いことか!!
センサーを設置し、リアルタイムにデータを取得し、それらを蓄積する「目的がない」。
これが日本の常識らしい。
合同会社タッチコア 小西一有