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業務改革:基幹システム≠会計システム[20241011]


先日、とある上場会社の役員とお会いした際の話。

お会いした理由は「基幹システムの入替中」とのことで、各事業部に散らばっているIT要員を集結させたいというご相談だった。

この会社では、事業部のニーズが直ぐにIT施策に反映されるようにと、事業部内にITチームを組織している。

ビジネスのスピードが速いところは、このように組織しているところが多い。

もちろん、この方法には短所もある。

それぞれの事業部でIT投資を決定する為に「投資が重複」したり、全社的な施策を実行すれば効率良い投資が行えたりするが、そうならないことが多い。

簡単に言うと「コストが増大するデメリット」があると指摘されている。

ただ、何をするにしても長所・短所はあるので、その時の企業の経営環境に応じて変化出来るくらいの柔軟性は欲しい。

さて、この役員さんにこんなことを尋ねてみた。

「基幹システムって何ですか?」
「御社の中での基幹システムの定義で結構です」

役員は、しばらく考えてこう返答された。

「基幹システムとは、止まってはならないシステムだと聞いております。従って、会計システムを基幹システムと呼んでいます」

うん、前半は間違えていない。

しかし「止まってはならない=会計業務」とするのは如何なものかと思った。

実は、こちらの役員は経理や総務・システムなどを管掌されていているが、そもそもは経理畑の方だそうだ。

なるほど、だから「会計業務は絶対的な存在」になっているのかと理解できた。

会社の状況を一番把握している部署は「経理」だと言う方がいらっしゃる。

間違いではないが、私はこの言い方は好きではない。

何故なら、会計業務を担当している経理は確かに「数字」で会社の状況を確実に把握している。

しかし、予測は出来ない。

会計業務を行っている経理が知っているのは「実績」であり将来予測ではない。

経営が最も知りたいことは「将来予測」である。

将来予測は、何処に聞けばわかるのか?

「営業現場」が一番良く分かっているであろう。

それと「基幹システム≠会計システム」との関係が見えないとおっしゃる方はいるだろうか?

将来予測をするためには営業活動が見える化されて初めてわかるのだが、営業支援システム(CRMとかSFAとか)の数字は意外にアテにならないものが多い。

弊社では「企業の素活動を記録するシステム」を基幹システムと呼ぶことにしている。

素活動というのは、経営上記録したい活動の全てのことだ。

その昔は、コンピューティングパワーが貧弱だったため、こういう考え方(素活動を全て記録する)はできなかった。

だから、代わりに「会計」をシステム化して企業活動の状況を把握しようとした。

会計システムを核としたERP(Enterprise Resources Planning)の基本思想である。

会計情報と言うのは、営業だろうが、生産だろうが、物流だろうが、すべて共通だ。

従って集計して評価しやすいのである。
先述の通り「結果」しか分からないのだが。

仮に、企業の素活動が全て記録されて分析できるのであれば将来予測をすることが可能だ。

営業に聞かなくても、(企業の素活動としての)営業の行動を追跡できればそのデータを分析すれば察しが付く。

勿論、○か×かを予測するような博打の話をしているのではない。
受注確度のパーセンテージなどの話である。

昔々は、会計という全ての業務に対して共通の尺度で見られる道具に置き換えただけなのだ。

本来、経営に資する情報を集めるためにコンピュータに何を期待したかというと、素活動の記録なのである。

そして、素活動が記録されたデータを引き出して分析したり仕事をしたりとするシステムのことを「情報システム」と言うべきである。

会計システムでさえも「情報システム」の一つなのだ。

素活動の記録が止まっては企業活動が見えなくなるので「止まって貰っては困る」。

だから、それを基幹システムという。

大々的にこの思想を取り込んだコンピュータシステムは存在しない。

ただ「会計=基幹」という考え方には、違和感がある。

そうでなければ、業務改革は成立しないからだ。

業務改革のために業務をドメイン分割して設計そのものを見直せば、素活動を記録することは全く不可能ではない。


合同会社タッチコア 小西一有

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