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ビジネス戦略と現場の業務の乖離が問題[20240522]


東京は本日も雲が厚くスッキリしない天気で、もやもやとする日だった。

もう梅雨かとも思ってしまう。

昨年だか一昨年だったか、随分経ってから「梅雨入りしていたと推測される」みたいな発表をしていたなと思い出す。

この「もやもや感」、ビジネスプロセスやら業務改革とかにも感じるのではないだろうか?

ビジネスプロセスとは「業務の工程」ということだから、手入力とかFAX送受みたいな前近代的なことを明白にするために現状調査しなければならないのだと強く主張する方にお会いしたことがある。

このレベルの話は、正しくビジネスプロセスの議論をする時には話題に上がらないのが普通である。

問題にして欲しいのはビジネス戦略と現場の業務が乖離していることなのだ。

現場は賢いので、自立する。

自立するとは、目先の仕事について創意工夫出来るし、経験に裏打ちされた見事な施策を展開する。

しかし、先に述べたような「FAXの送受信」とかの話になると、新たな登場人物が相手になる。

組織の壁を超えて議論したり調整したりすることが出来ないからだ。

ここが良くも悪しくも現場なのである。

このこととビジネスプロセス問題とは深く関係がある。

FAXの送受を議論の中心に据えるかどうかは別として「組織の壁を超えて横串方向に流れるビジネスプロセス」を改革・改善して対処する課題である。

どんなに細かい業務フローを記述しても組織の壁を超えて議論するのは困難である。

ちなみに、現代の企業が抱える課題の一つが縦割り組織のために生じる諸問題だ。

そして、その諸問題に対応するのがCIO(最高情報責任者)の責務であると一橋大学商学部の神岡太郎教授が述べられていたが問題は解決されないまま約20年が経過して現在に至っている。

失われた30年は、ここにも存在したかと、とても残念に感じてしまう。

日本はOECD加盟国の中でも群を抜いて労働生産性が低い。

意外に思われるだろうか?

昨年の12月に日本生産性本部が発表した内容によると、OECD38ヶ国中の30位にランキングされていると言う。

デジタル化に遅れを取っているのが主な原因の一つだと言われているが、それは機械化(=デジタル化)だけの問題ではない。

そもそもの業務構造が非効率だということなのである。

「機械化が遅れている」と理解してしまっては対策を見誤ってしまう。

各社が「業務改革をしよう」とプロジェクトを始めるのだが「どうしてよいのかわからない」という状況の筈である。

いきおい「機械化だ!」と手作業を見つけてはシステム化するのに躍起になる。

「これがDXなのだ」と機械化案件を探したり、「機械化案件はありませんか!」と現場から意見を求めたりする。

さて、殆どの企業は中期経営計画(即ち戦略)を策定する。

しかし、戦略が新しく打ち出されても現場は何も変わらない。

戦略がダサいことも指摘されるが、それよりも問題は戦略を落とし込む方法を誰も知らないからだ。

戦略を現場に落とし込めなければ経営も疑心暗鬼になって大胆な方向性・目標を掲げられなくなるのである。

失われた30年とは、この繰り返しで起きてしまった。

「現場は賢い」が、現場は現場しか見えていない。

経営戦略とは会社全体を俯瞰している訳で現場とは目線が全く違う。

経営体が策定した戦略を、現場に正しく落とし込んで実直に遂行して貰うことが企業経営の根幹なのである。

このような現象は組織が肥大化し「専門分化」が始まったことにより問題がより大きくなってきた。

問題が大きくなったのは「洋の東西を問わず」発生していたが、日本だけ「失われた30年」の間に何も対策出来なかった。

対策出来なかっただけならともかく、機械化よろしくRPAだとかシステム導入だとか「合理的な戦略投資かどうかを考えることなく」機械化支出だけを増加させてしまった。

ビジネスプロセスは、戦略を業務手順に落とし込むための概念である。

そしてビジネスプロセスを設計することにより組織間の壁を超えた問題を明確化し対処する方法を検討する手立てを与える。

論理的にかつ正しくビジネスプロセスを設計するためには、ビジネスアーキテクト(BA)が必要である。

ビジネス戦略、ビジネスモデル、ビジネスプロセス、システムズエンジニアリング(システム思考)などに造詣があり「業務設計」が出来るスキルを有する人材を指している。

日本ではビジネスアーキテクト(BA)養成が遅れている。

このことが、国際競争力を根本的に遅らせている原因になっているのだ。

合同会社タッチコア 小西一有

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