業務マニュアルでは解消しない溝[20240719]
今週はよくあるテレアポ(マーケティング事業社)の話に始まり組織間の溝が低品質を生み出す構造の話まで至った。
そこから少し話は逸れるが、今日は人材採用について考えてみたい。
生産労働人口の減少により、人材採用は益々難しくなっている。
一般企業の採用試験は、筆記試験などもあるが多くは何回かの面接試験を通して合否が決められる。
今までは、幾度かの面接によって、候補者が自社に上手く馴染める人であるのかどうかを見極めてきたのではないかと思う。
そもそもの価値観が違うと会社に入ってから苦労するだろうし、企業サイドも辛いというのが正直なところだ。
しかし、人材採用が難しくなると、多少の難アリ物件でも採用しなければならなくなる時代は直ぐそこに来ている。
難アリ物件と言うのは「価値観が今までとはちょっと違う」という意味だ。
「働くこと」や「仕事」についての考え方が従来の社員たちとは合わない人材を採用しなければ人員充足出来ない時代。
組織間の溝が出来るのは、価値観の違いが発端だが、個々の人材レベルで価値観が合わず業務に支障を来すのである。
「個々の業務をマニュアル化して徹底的にその通りに仕事をさせるのだ!」
そう言う方もおられるだろう。
程度の差はあれ、現在でもそういう考え方の下で業務遂行されている組織が少なく無い。
ただ、実のところ個々の業務は完全にマニュアル化することはたいへん難しい。
当社事業の目的は何で、この部署では何を求められているのかなど上位レベルでの理解が必須になる。
業務マニュアルは、個々の仕事は明記されているが、その仕事の重要性や他の仕事との関係性、ビジネス全体から見た時の位置付けなどは説明されていないことが多い。
勢い「書いてある通りにやれば良いのだ」と指示をする。
「当然、言われた通りにやりました」「それ以外の指示がある場合は明記してください」と反論されてしまう。
「言われたことはするけどねぇ」とおじさん達がぼやいているのが、このパターンである。
難アリ物件の場合は、そもそも価値観が違うから仕事をして貰うハードルが更に高くなる。
マーケティング会社にテレアポをアウトソーシングする場合に留意すべきことと根底が同じ問題を抱えているとは言えないだろうか。
テレアポ会社の価値観と、仕事を依頼するサイドの会社の価値観は全く別物である。
だからこそ、そのレベルでの業務説明は必要不可欠だし納得して貰わなければ仕事は出来ない。
マネジメントと一言で表すのもおこがましいくらいに「方針」「指針」の類いを徹底的に共感して貰うプロセスが必要である。
そこを端折りたいから業務マニュアル通りに仕事をして貰うのだ、と言ってしまえばそれまでということだ。
人材採用が更に困難になる時代にも、そのように言い続けるつもりだろうか?
ビジネスプロセスの諸課題は、組織間の溝に生じる価値観の問題である。
しかし、これを改善・改革することにより顧客経験価値を爆上げすることも可能になる。
間違ってもERPを導入することによってビジネスプロセスの諸課題が解決されることは無い。
私は、以前に大規模コールセンターのセンター長を務めていた。
右も左もわからない業務だった。
在籍人数は800人もいて、その長たるや何をすべきか。
簡単ではないが「方針を打ち出すこと」が最初にすべきコトで、その方針を800人全員に理解して貰うことだと自身で理解出来るまで半年くらいは掛かったように思う。
人の上に立つという仕事は、「方針(=戦略)」を何よりも大事にする仕事だと身をもって体験した。
40歳になる少し前での経験だった。
テレアポを担当する企業の「馴れ馴れしい若い(声の)女性からの電話」をきっかけに、ビジネスプロセスの問題や人材と人財育成につちてふつふつと考えたのだった。
梅雨が明けて、朝晩とても暑い日が続くようですが、皆さんどうか健やかにお過ごしくださいませ。
合同会社タッチコア 小西一有