見出し画像

IT支出額をどう視るか[20241112]


今週は、IT支出について色々と話してみたい。

昨日はIT支出の対売上比率は問題ではないということ、また、何にお金が掛かっているのかに注目して欲しいと話した。

この、何にお金が掛かっているのかに注目すると、新規投資と保守・運用費にわかれる。

新規投資は、固定資産勘定になる物件の話をしているわけではない。

新規開発案件のことである。

ここまで話をすると「固定資産勘定になっていて…」と財務(税務)会計を持ち出す人々がいて話がややこしくなることが多い。(笑)

そんなに減価償却が気になるなら(はっきり言うと)それがどうしたと言うのか。

固定資産を定率法で処理をしているから云々、と御託を並べてどうするのだろうか?

私が話したいことは、IT支出全体の「新規案件」比率のことだ。

健全にマネジメントされているIT組織は、新規案件比率が高いか上昇傾向にあるはずである。

それを知りたいだけなのに、減価償却方法なんかに拘ってどうするつもりなのだろうか。

IT支出の定義は各社各様で構わない。

ただ、この定義がコロコロ変わると「評価軸」を失ってしまうので決めてくれればよいだけだ。

大事なことは、マネジメントの方向性に従って結果が出ているかどうかをチェックしアクションを正しく起こすことである。

そのための定義であることを忘れないでほしい。

新規にシステムを導入するとその後に運用保守に関わる費用が計上されていく。

システム導入に関わる費用が高価であればあるほど保守・運用費も高価になる。

従って、単純に新規投資を増やせばよいと言う話でもない。

TCO(Total Cost of Ownership )という考え方を、米Gartnerは提唱していた。

情報システムを導入する際、目先の導入費用だけを見るのではなく経年費用も考慮するようにということである。

「一度、導入したら次は何年後に刷新できるかわからない」

そんなことを言う方がいるかもしれないが、情報システムのライフサイクル計画は立案しておくべきだ。

7年使っても、10年使ってもよい。

基幹システムはもう15年以上稼働していますという話も聞くことが多いが「ライフサイクル計画」も無いということではないはずだ。

すごく簡単に説明すると、システム開発は、何らかのベネフィットを獲得するために実施される。

そして、事前に計画されたベネフィットが獲得できるかどうか監査しながら改善を繰り返し所定のベネフィットを獲得する。

ベネフィット獲得が終了すれば、システムは用済みになるので「廃棄」されることになる。

ここまでが、企業情報システムのライフサイクルだ。

廃棄まで計画するのが基本だと心得たい。

会計システムに終わりはないだろうなどと言わないようにして欲しい。

基幹システムに終わりはないかもしれないが会計システムには終わりがあり、リプレースとかマイグレーションは十分にありえる。

ともかく、TCOを計算するためにはシステムのライフサイクルを計画すべきである。

TCOに対していかなるベネフィットを獲得するのかが「ライフタイムバリュー」なのだ。

今日、話したかったのは、保守・運用に掛かる費用を如何に抑えて新規投資を増やすのかに腐心すべきだということ。

保守・運用をしなくてよいと言っている訳ではない。

この費用構造を分析して、低減できる可能性を極限まで検討すべきだと言っているのである。

往々にして、この辺りの話をし始めると色々な暗雲がさしかかってくる。

「社員のほとんど運用・保守要員になっている」とか「運用・保守を担当しているパートナー会社への支払削減が出来ない」なとどいう話である。

ほとんどの事業会社でこういう構造に陥っているのではないか。

IT要員をキチンと配置できている企業ならば、こんなことはないだろう。

しかし、IT要員配置を十分に行えない企業では、運用・保守ばかりに追われていて「企業成長に貢献するIT」になっていないのだ。

社長自らが「IT支出が高い!」などと口走っているようでは「企業成長に貢献するIT」を企画検討する筈もないだろう。

支出額ばかりに囚われず、「何をすべきで」「何をしていない」か。

また、先述のような構造に陥っている原因について、経営者自らが「核心に触れるまで」詳らかにして欲しい。

ビジネスに忙しくてそんな暇がない!?

経験から言うと、会社組織というのは「後方部門から腐っていく」ものですよ。

合同会社タッチコア 小西一有

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?