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たまには真面目に仕事の話:通訳案内士ってどうよ10ー ふーてんの寅子、活動再開ー
久しぶりの投稿になってしまった。
のんびりしに来たはずの奄美大島で、なんだか慌ただしい日々が続いている。
そう、観光客が戻って来た。旅行割の成果も大きい。
入国制限が緩くなり、インバウンド客も、来春の予約も激増している。
それに合わせるかのように、旅行説明会が各地で行われている。
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ひとり「宇検村ってご存じですか?」的な営業をして、名刺を配り倒す。
飛行機の時刻も、バス時刻表も変わり、以前に投稿した記事も修正しなければと思いながら、目の前にあることを片付けるだけで精いっぱいで手にした資料は古い冊子一部。
しまバスさんは有難いことに、宇検村を巡るツアーを作成してくれていた。
感謝感激!
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与論島の説明を聞きながら、行ってみたい気持ちが爆発する。
移住して早10か月。いつでも行こうと思えば行けたのに。
それでなくてもゆるゆるの自分の能力が、この数年で極小まで縮んでいる。
いやそうじゃなくて……。
どうしても、真っ白なビーチが最大で現れる時期に行きたかった。
(言い訳)
アイランドホッピングは必ず目玉になる商品。けれど船の本数が少ない。
群島の全島を巡るとなると3週間必要になる。かなりの富裕層向けツアー。
一度自分で体験して、その記録をここに載せたいと思っているのだけれど。
いかんせんコストと日程が……。誰か、休んでいる間の給料出してくれ。
出張する度に思うのだけれど、お酒飲めたら出張も楽しいのだろうかと。
どこに行こうが、観光客が徒歩でアクセス可能な範囲を確認するだけでくたびれ、コンビニで軽食を買いホテルの部屋で食べて終わるという生活が何日も続いた。
観光地の暗闇で、面倒そうに歩いている女が、ひとり写真を撮っていたら、私だと思っていい。
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そんなコンビニ晩ご飯生活が続いた大阪出張のある日。
深夜、焼酎マイスター講座の宿題レポートを書き続け、お腹が空いた女。
携帯でコンビニを検索する。と、すぐ近くに一軒発見。
そこは、驚きのコンビニだった。というか、さすが大阪やな。という感じ。
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こんなにコンビニに長くいたことないよというくらいに展示品を見つめ続ける怪しい女。食事を買うはずだったのに……。
買ってしまった魅力的な品。
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いつ作るつもりやねん。どうやってこの小さい出張鞄に入れるねん。
いや、でもガンダムやで。買わずにおれる?
ここのコンビニの店長、きっと私と同世代に違いない。
それでなくてもネジが緩んでいる頭が、肉体的疲労と寝不足でおかしなことになっている。
翌日も実家で休めばいいものを、次のツアーのピックアップ場所と、新しいホテルの下見をしておかねばと京都まで足を延ばした。
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京都はもはや海外各国から来た人たちで溢れかえっている。
久々に英語を使うもコミュニケーションツールは、使わないと錆びることを実感して打ちひしがれるゆるゆるガイド。
生まれながらのバイリンガルが心底羨ましい。
紅葉の秋、櫻の春の頃は怒涛のシーズンとなる日本。
世界中から、多くの人が夢に見た写真の景色を求めてやって来る。
ロンリープラネットの表紙にあるような静かな竹林はもう無いのに。
話が前後するが、出張直前、市場には希少フルーツの「アテモヤ」が並んでいた。完熟のアテモヤの種の周りは、手が止まらなくなるくらい美味しい。
種と一緒にフワフワの白い実を摘んで口に入れ、黒くて大きな種を吐き出す。集落に普通に育っているものも十分美味しいのだけれど、農園の方が、手間ひまかけ育てられたものは、もっと美味しくて、形も綺麗。
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こんな珍しい品を、簡単に食べられる自分が「幸せだ」と感じられる。
幸せは手に入れるものじゃなくて、幸せになる心を育てることなんだと、
聞いたことがある。この村にいると、そんな心が少しづつ育つ気がする。
何があるわけでも無いのに、心が豊かな人たちが暮らす村。
会社員になって、毎日の500円ランチにうんざりしていた新人の頃。
忙しすぎてコンビニ食が主食になっていた、中堅の頃。
いつの間にかランチ2000円以上が当たり前になっていた役職付きの頃。
接待で食べる食事は、全く味がしなかった。
会社員を辞めて、フリーランスになってからは特に食に関心がなくなった。
二足のわらじ生活は、食欲より、睡眠欲が勝つ。
動くためのエネルギーであればエナジードリンクでさえ十分な食事になる。
そんなことを続けていたら、身体を壊した。
そうして今、また出張のたびコンビニにお世話になっている。
コンビニが無い村に移住しても、人間そうそう変わらないらしい。
旅した先で、美味しいものをご案内できるガイドにならねばならないので、
それなりに高級店にもいかねばならないのだけれど。
「普通が一番」
と、脳梗塞で身体がマヒした母は言っていた。
二度ともとに戻らない身体を、腕を、指先を見つめながら。
いつだって大切なことに気づくのは、それを失った時だから、
人間はたちが悪い。
私が入院していた時に書いたウィシュリストの2/3は終わった。
残りは、なかなか大変そうなものばかり。
特に「大切な人とアマルフィに行く!」は、いつ叶う事か。
二拠点生活は、それなりに大変だけれど、常にアップデートしていく街を知らないと、ガイドは出来ない。
新しいホテルに改装したホテル、閉店したレストランに開店したレストラン。もう視察は無理!というくらい増えていて別の街のよう。
長い説明会行脚、博多の最終日。ようやく落ち着いて食べることにした。
私はガイドスイッチがオンになると、食事が美味しく感じないのだと思う。
しかも飲めないので、滞在時間は僅か30分。
ひとりで無心に食べて出て行く女がいたら、私だと思っていい。
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ここの肉じゃが、面白かった。
何がって、書いてしまったら来る人が楽しめないので、是非訪れて肉じゃが注文して欲しい。
何を頂いても美味しかった。
グループで楽しそうにしている人たちを横目にそそくさと店を後にした。
でも今回は、食べる前に写真、撮りました。
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この食器、どうやら今人気の様子。
京都の焼肉屋さんでも、これ使っておりました。でも、二人前からしか対応しないと言われ、お肉屋さんでは断念したのですが、このお店は、一人分でも対応の、おひとり様歓迎のお店。
さて、旅行説明会に無理やり同行させてもらい続け最後に訪れた博多。
わくわくする面白いホテルに宿泊した。
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京都任天堂のレンガ造りの本社は、瀟洒なホテルへと生まれ変わり、
スクランブル交差点を見下ろすスポットは工事中で大回りが必要。
伊丹空港でさえ、随分前にすっかり様変わりしている。
博多のショッピングエリアは拡大し続けている。
ホテルも生き残りをかけ、特徴を前面に打ち出さないと人が集まらない。
このホテル、アジアからの海外旅行客でほぼ埋まっていた。
勿論フロントも日本の方ではない。
そんな情報は、通訳案内士ネットワークからどんどんやって来るのだけれど、島に引きこもりすぎていて確認をするのが追いつかない。
群島説明会を終えると、すぐさままた大阪へ向かった。
空港に着くや否や、ネットワークからやってくるメールの嵐。
焦る心を落ち着けようと、久しぶりに飛行機でも見ようと、上がったデッキには沢山の観光客(?)がいた。
いや、もしかしたら航空機マニアの方々か。
高価そうなカメラで機影を追っていた。
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綺麗になる前の空港デッキにもよく訪れていたことを懐かしく思い出した。
あの頃、大切だった人たちのなかで、会いたいと思う人は僅かになった。
伊丹空港は、この辺りの大学生のデートコース。
かつて至近距離で、真下から航空機のお腹部分を見上げていた場所は、どこだったのだろう。
そんな思いで、北ウィングと南ウィングを交互に見ていたら、寒気がした。
とんでもなく寒かった。完全に油断していた。先月とえらい違った。
半袖を着ている場合じゃない……。
楽しそうな家族連れが行き交うデッキ。3年ぶりのこの感覚。
嬉しくて、嬉しくて、有難くて。
そして思った。
私を奄美大島に呼んでくれた方への恩を忘れかけていたな、と。
離れないと見えてこないものが、きっとある。
カラフルなスカーフを頭に巻いたムスリムらしき人々が楽しそうに笑い、
大きな荷物を載せたカートを押すインバウンド旅行客が行き交うフロア。
英語も韓国語も聞こえていた。他の言語は聞き取れない。
息も絶え絶えに、それでも生き延びた観光業界の人々。
一層力強く、前に進もうともがいていた。
二度と元に戻らないと思えた、過酷な数年。
本当なら、奄美大島で新たなツアーを率いているはずだったのに。
またこうして、関西のツアーを手伝っている自分がもどかしい。
そう思えるという事は、私は奄美大島が、まだ好きで、まだやりたいことが、やり残したことがあるという事で。
(というか、まだ始まってもいない)
《人は旅をする生き物で、それはDNAに刷り込まれているようなもの。移動をして食べ物を探し続け、根を下ろした先で食物を育てはじめ、集団の中からリーダーが現れ、集団同士で戦いが始まり、勝ち抜いた人々で国ができてきた》
そんな話を、通訳案内士の講座で聞いた。
どの国に生まれたとしても、他の国を覗いて見たいという気持ちは、人間が持つ本能のようなものなのか。
日本以外は受け付けない、という人もいるらしいけれど。
そんな人でも、日本国内は旅すると言っていた。
あなたは旅が好きですか?
私は旅をしないと、心が死んでしまう種族。
「根無し草」と、言う人もいるけれど。
根を下ろすと腐るんです。
同じところにいると腐る星の元に生まれています。きっと。
小さな一歩を共に歩みだせる人を見つけたと思っていたら、勘違いで。
そこに根付くかと思ったら、大きな風が吹いて連れて行かれる。
そんなことを何度か繰り返してきた。
いつの間にか、温かい人々に囲まれて、暖かい南の島で暮らすようになってもう10か月、いや、まだ10か月か。
同じ場所(国、都道府県)に、3年以上いたことが無い「ふーてんの寅子」は、これからも風の向くまま、気の向くまま、好きなことだけをして生きるのだろうと思っています。
その前に、「赤十字救命講習」を受け資格を大阪で更新予定。
お客様の身体に何が起こっても動じない。
ガイドとして応急処置できることは当たり前のこと。
勿論、何事もないにこしたことは無いのだけれど。
ペアを組んでくれている相棒の先輩には感謝しかありません。
今月末には、また奄美大島へ戻って、温かい仲間と一緒にフリーマーケットをしようと思っています。
いよいよ奄美大島でのインバウンド向けツアーも発表しようかと。
観光客の皆さま、奄美大島の皆さま、ぜひ宇検村へお越しください。
詳細は、また、後日。
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参加を許可してくださったたくさんの皆様、本当に感謝してます!