奄美で本当に美味しいと感じたもの
《敬老会》間近の週末、とにかくまわりが慌ただしい。
青年団やら、婦人会やらに属しておられる方は、とっても忙しいはず。
来週の月曜、敬老会が行われるという。
そうか週明けは祝日だと今更気づき、大急ぎで親にお祝いを送った不届者。
とにかく3年間、人が集まるイベントが無かった村。
皆で楽しもうと、余興や、美味しいおやつ作りの準備に余念がない。
豊年祭に続き、敬老会から運動会へと続くイベント続きの月。
どの種目に出られそう?と聞かれて返答に困るお年頃。
都会なら、何処で、誰が、何をしていようが、参加など不要。
運動会なんて、学校卒業したら、無縁。
でもここでは、動ける限り、子供がいようがいまいが、参加するという気配が漂っている。
その運動会までの間に、食のイベントもある模様の宇検村。
10月1日に観光でお越しであれば、宇検村までお越しいただくと、美味しいものが食べられるイベントをやっていますよ。
残念ながらその日にガイドの仕事が他で入ってしまった私、一体何が提供されるのかと気になっていたら、宇検村から突然一方的に取引を打ち切られた市内のジェラート屋さんも来てくれるという朗報が。
一年前、何度も市内の店舗へ足を運び、お詫びをした。
毎回旬のジェラートをいただき、そのおいしさは折り紙付き。
今度のリサイクル市には来てくださいねと声を掛けていた。そんな時に骨折されていたオーナー。無事に復活して、青年団のお祭りに出ていただけるという嬉しさ。
もしも「塩サンゴアイス」が手に入ったら、ぜひ試してみて欲しい。
最初の旅で、一番おいしいと思ったのは、加計呂麻島出身のオーナーが作るこの加計呂麻の塩を使った塩サンゴアイスだった。
もはや宇検村では手に入らなくなった名品を求め、月に一度車を2時間走らせアイスを買っていた私。
一方的に契約がなくなり、どんなにか腹立たしかった事だろうかと思うと、大人な対応に感謝しかない。
敬老の日と体育祭準備で大忙しとなる為、どの集落も慌ただしい。お手伝いをするため、いろいろお話を聞きに回る新参者。
なんとその間には、早朝の呼びかけ運動もあるではないか……。
恐るべし。でもこうやって、人と人の絆が強くなるのだろう。
隣に誰が暮らしていようが気にしたこととなかった私には、新鮮でしかない。移住者やIターンも多い集落なので、新鮮に感じる人もいれば、久々の感覚の人もいる模様。
声かけ合って、活動をされている婦人会の方々を見ると、頭が下がる。
盛りだくさんの週末。どこのご家庭も、今日中に済ましておかねばならないことに懸命なご様子。今日中にいろいろやっておかなねば、週末に身動きが取れないことが確定。
私はというと、何だかわからないまま10月から始まるインボイスの説明会のために通訳案内士団体の会議に参加せてもらったり、相変わらず深夜に海外からくるショートメールに返信したり、お客さんのSNSを確認して義理の「いいね」押すかの葛藤をしたり(義理チョコならぬ、「義理いいね」を卒業中)、今度やって来るツアー団体のプランの確認をしたり、他の市町村の人と打ち合わせしたり……ああもう時間が足らぬ。
それを知ってか知らずか、役場の企画観光課が何やら大学生観光客の為に動いている案件からは外してもらっていたストレスフリー地域おこし協力隊。
意図的に仲間外れしているなら、そんなところに属していちゃまずいけど。
ここは神の村。毎朝、神棚に祈りをささげる村。
悪因には悪果が。
一緒にいて神の怒りを受けたくはない。
そもそも儲け方を知らない人間を何なら軽く軽蔑する気質の関西人。
天から降る金だと思って採算を考えず湯水のように使って楽しそうにしてる人の姿を見ると、若干、引く。
まぁなんか村独自の大人の理由があるのでしょう、これ幸いと村民のご意見を聞きに回った。
「どうせ何も変わらん。補助金目当ての奴ばっかりが、ここに来る」
そう言う人を見る度に、私の役割は何だったのだろうと思う。
今回の件もしかり、確かにこの村は変わらないのかもしれない、とは思う。
けれど変わらなければ、あと数十年で消滅すると、言われている。
本当に何かを変えたいと、補助金に頼らず利益を上げようと心底思っている人たちと動き始めた昨今。
ともかくも、ひとつでも案件を片付けようと赴いた市内の役場への帰り道、宇検村から往復2時間もかかるガソリン代(国税)を無駄にしてはならぬと、昼休憩を利用して、久しぶりに新規店舗を確認した。
2時間ってね、新幹線だと東京から京都まで行けますからね。ものすごい時間のロス。
ずっと確認せねばと思っていた場所、「みしょれ市場」。
市内に本物の手打ちそばが食べられる店があるので、いつもなら、市内出張時のランチはそこ。だって、ランチって、パパッと食べられるが基本。
けれど、今回は、どうしても確認したかった新しい店舗。
綺麗だし、入りやすいし、価格もお手頃。
いわゆるフードコートなので、高級感は無い。
庶民的に色々食べられますよ。という感じ。
席を確保して、お金を払って、商品を持って行き、自分で片付ける。所謂、フードコート。
思っていたよりコンパクトな造りで、お近くのマダム達で賑わっていた。
大型のテレビには、美しい奄美の景色の映像が繰り返し流れている。
実はその場所は、そこからかなり遠い。
観光案内できる人はいるのだろうかと、店内を見回して驚いた。
スタッフに外国人多数。訪れた時間によるのかもしれないけれど。
研修生か、実習生か。島に大学は無いので留学生ではあるまい。
観光客向けの店舗を期待していたのだけれど、中に入ってみて、地元の方が来やすい作りだと感じた。とりあえず、英語対応はできそうな気配。
実際、明らかにインバウンド観光客らしき人も来店している。
が、残念なことに駐車場がない。
しかも、交差点の角ゆえ、バスどころか普通車も停車不可能。
これ、なかなか致命的。
つまりは、地元の人か、この付近のホテルに宿泊している人が、徒歩で来ることを前提に創られた、という事なのかと思う。
横断歩道を隔てた真向かいに広がるだだっ広い空き地を、どうか自治体の力で有効活用して欲しいと願うばかり。
店内は 勿論、観光で来る人も、楽しめるはず。
「奄美にしかない」という食材はない印象だけれど、どちらかというと黒糖焼酎の品ぞろえの方が多くて楽しめそう。
そりゃホテルから歩いて来るなら、たくさん飲めますからね。
メニューに載っている焼酎の種類が豊富。市内の居酒屋さんにないものも、もしかしたらあるかも。(タイトル写真)
有難いことに、ドリンクメニュー表紙には、富田酒造さんの焼酎に続いて、宇検村の開運酒造さんの焼酎が並んでいた。
黒糖焼酎を飲んだことがない人には、まずは「れんと」がお勧め。
誰もが飲みやすいと感じるすっきりした味わい。
ウィスキーのような、オークの香りを楽しむなら、「紅さんご」。
何度かお伝えしているけれど、毎年開かれているTWSC(TOKYO WISKY &SPIRITS COMPETITION)で2年連続最高金賞の、ベスト・オブ・ベストに選ばれた名品。これ焼酎じゃないでしょ?と思うかも。
次のページにも、その次のページにも、名品の焼酎の写真が続く。
老舗の焼酎がずらり。
ここなら、黒糖焼酎を手ごろな値段で、昼間っから、色々ワンショットで楽しめる。
観光客目線でひと言、言わせてもらえるのならば、日本酒の唎酒のように、小さなグラスで飲み比べできるセット品を作って欲しかったなぁと感じた。
これは、この店舗だけのことではないのだけれど。
飲んべえの多い奄美大島。基本大きなグラスでぐいぐい飲む。
けれど、大きなグラスで出されると、観光客は色々な種類が飲めない。
よって、ティスティングのためにいくつかの工場まであちこちに行かねばならない⇒その為には運転手がいる⇒バスツアー以外では、焼酎が飲めない⇒でもバスの本数が無い。という悪循環。
みしょれ市場の場所は、屋仁川から徒歩で5分程度。
ホテルウエストコートからなら3分もあれば到着。
去年新しくできたばかりの、ぴかぴかのサンデイズ奄美からも徒歩圏。
但し、交通量の多い道路を渡るので、夜間は車とハブにご注意を。
喫煙者向けの喫煙場所も、店舗の外にあった。暑いけど。
トイレが広くてこれまた驚いた。車いす用のバリアフリートイレももちろんある。
靴を脱がずに行けるバリアフリートイレ。実は島にはなかなかない。
ユニバーサルツーリズムも、始まってもいない。
前途多難過ぎる現状を誰に訴えればよいのか。
奄美大島では午後2時過ぎたら食事ができる場所がなかなかないので、空港の午後到着の方むけのランチ場所としても良いかと思う場所。
駐車場がないことだけが残念過ぎた。
ここに外貨両替機の一台くらい置けば、もっと海外の人が利用し易くなるかもしれない。
外貨両替機が一台も島にないことを、Tax free認定の店舗がないことを、海外旅行客は知っているだろうか。(イオンくらい?)
カードや携帯決済アプリが使えない店だらけだということを、都会から来る人は知っているだろうか。
ところで、日本中の美味しいものが集まっている街で生まれ育った私。
大阪は粉もんの街、ではあるけれど江戸の頃より北前船が北海道からやって来ていた昆布の集積地でもある。鰹節に昆布出汁ミックスが命!の文化。
うどんにとろろ昆布は普通。
不味い出汁の味には、ほとほとげんなりする。故に、煮干し出汁はあまり得意ではない。唯一、煮干し出汁で食べられたのは香川のうどん。
出汁というより、うどんの美味しさに衝撃を受けた。
神戸も三重も近江も近すぎて、小さい頃から和牛に慣れ親みすぎて他府県で食べた肉は美味しいと思ったことがない。東京なんて、そりゃその値段なら旨くなきゃ犯罪でしょ的な価格。まぁでも美味しかったからいいかと納得していたら、実は関西圏の肉だったりする。
マグロの中落も大好きなのだけど、新鮮さが命。和歌山のマグロ解体ショーなんか、車で飛ばして時間合わせれば見に行けたので、一時期毎月のように行って、温泉の行きかえりに食べるものだった。何より、身の引き締まった中トロやマーブル模様の大トロがあり得ないくらい手ごろな価格。
神戸に行けば、本物の中華料理やインド料理やイタリアンが食べられたし、京都の味の濃い野菜で作られた漬物や、おでん、おばんざいなど、とにかく「美味しい」が普通にあふれているところで育った。
これが、後々面倒なことになった。
とにかく、日本全国どこへ旅をしても、「美味い!」と感じることが子供の頃からできない人間になっている。旅行に出る度、食に困る。
かつて島根出身の知人が、大阪の貝類は何を食べても不味い。と言っていたが、本物を食べて育ってきた人はやはりそう思うのだろう。大阪の繁華街で売られている岩ガキの馬鹿高い価格に彼女が驚いていたことを覚えている。確かに、大阪には美味しい貝類はもはや無い。
若かりし頃は、関西の旅行会社がこぞって作っていた日帰りバスツアーなるものに、それこそ学生の頃は温泉付きカニツアーによくお世話になった。
けれど、もはや食べ放題など無縁のお年頃。美味しいものを少し頂きたい。
そして本当に美味しいものは、絶賛して広めずにはいられない。
こういう訳で、料理を覚えようとも思わなかった。
周りにすごく美味しいものを作る人が山ほどいるのに何を言うという感じ。
(言い訳)
島に来て、ようやく少し、酒のつまみ?くらいは作るようになったものの、食材が美味しければ何とかなるというレベル。
そんな私が、奄美大島で美味しいものを探し続けた。
もっと詳細に言うと、「私の味覚に合うもの」を探し続けた。
さてさて話は戻るが、ランチに何を食べようかと、フードコート内をうろつき、お店にあった「クロマグロ」を注文。
予想通りそれは瀬戸内町からやって来ていた。何なら、それ、宇検村で養殖しているやつでは?とか思った。
温かすぎる奄美の気候と、さばく時の指の体温で油が若干解け始めていて、勿体ない!という感じ。お味については……いや、美味しいですよ勿論。
多分かなり美味しいほう。
でも、関西人が、特別「うまっ!」と叫ぶ類のものかどうかは……ね。
せっかく高いお金出して旅行して、レンタカーまで借りて、島中回ってるのに、美味しい料理は?って聞いて、誰の口からも「鶏飯」しか出てこなかったら1泊2日しかできんでしょ。他にもあるでしょ。これじゃベジタリアン来られないよ。ワンフネ(豚の煮物)以外、何か他にないかい?
実はシマ野菜の料理があればと、ちょっとだけ期待していた。
実際の所、お総菜コーナーがあったので、もしかしたらこれからそういうものが並ぶのかもしれない。小分けパックなら、出張者もホテルに持って帰って一杯ひっかけながら、島の味を楽しめるはず。
入口には、未稼働の冷凍庫らしきものが見えていたので、これからまだまだ何やら動きそうな予感のする店だった。
関東と奄美の両方でお寿司屋さんをやっていた人が言うには、奄美の魚は、海水温が温かすぎるせいで、油が少なく身が締まっていない、油が多いものは、扱いが難しい。とのこと。
だから、まぐろもしょうゆ漬けにする人が多い。一度冷凍してからでないと安心できないという人もいる。ハワイの人がアヒポキ(マグロしょうゆ漬け)にするのと同じ。
もしくは、煮つけかフライ。この二択。
刺身が温かく柔らかい(とろけるとは違う)のは、実に勿体ない。
けれど、これがここの味なのだから、それも観光客には味わってほしい。
全国から美味しいものが集まる関東、そもそも美味しいもので溢れる関西。
そりゃあ、観光客は、厳しいです。
本物を食べたいな。と思うと、いつでも、どの国でもすぐに往復できるようになった時代。
それは有難いのだけれど。
大阪の、本物の、鰹節の粉がこれでもかと入っているネギ焼きが食べたい。
神戸の、本物の、あのステーキを食べたい。
京都の、本物の、繊細な昆布だしの効いたおでんが恋しい。
実家の関西では、すっかりジャンク食を好んで食べるようになったこの頃。奄美にない店のものを食べたい!という欲求。
輝いて見える「M」マーク。
仕事終わりで出かける気力もなくなると、宅配一択になる。
そんな状態で数日過ごしてから島に戻ると、いかに体調が悪化しているかがわかる。
島に戻って数日、「料理をしない」ことで有名になっている私に、島の野菜と味噌でおかずを作ってくださる人々。
そして、あっという間に体調が回復。
食は命。その言葉を痛感する。
観光客が、いえ、都会のお客様が「美味い!」と唸るものをここで探すのは難しい。
でもね。
ここに暮らし、その長い時間の中で、色々な方のお宅でご馳走を頂いてきた身として言えることは、実は家庭料理が最高ということ。
凡そ食文化というのは、その土地の気候、歴史、風土から生まれるもの。
ここ奄美では、鳥も魚もフライにするか煮るがスタンダード。
それは、暑い気候の中で、腐らせないようにする工夫。
その両方が苦手な人は、食べられるものの選択肢が本当に少ない島。
そして、野菜しか食べない観光客にとっては、毎日おにぎりか、カレーか、フルーツになる可能性がある。
素敵なお豆腐屋さんや郷土料理の店など、北部にあるにはあるけれど、毎日豆腐という訳にもいかない。
島料理を出す店は、あるにはあるけれど、毎日食べられる味か?と聞かれたら困る。
旅の楽しみのひとつ、「食」の部分。
島でしか食べられないもので、美味しかったものは、何?と聞かれたら私の答えはいつも同じ。
「地元の人が捕ってきたシシで作った汁と、生レバー」(自己責任案件)
「ドラゴンフルーツの皮の天ぷら」(過去の投稿↓をご覧ください)
他で食べた時は、「こんなもんか」と思っていたシシ汁。
いつも捨てていたドラゴンフルーツの皮。(の、天ぷら)
その人の作ったシシ汁には、シブリ(冬瓜)のスライスが入っていて、葉付きニンニクや島ショウガで臭みが消えていて、それはそれは美味しかった。
奄美に来て、初めてお代わりをしたもの。
その土地で育った肉を、その土地の野菜で時間をかけて煮込んだもの。
最高の食材で作られた一品。
その人の、その料理は、間違いなく天下一品の品だった。
その時、共にそれを食べた人達が、その美味しさをより記憶に残るものにしたのかもしれない。
美味しいものの究極は、食べる人のことを思って時間をかけて作られたもので、大切な人たちと食す家庭料理だったということ。
それだと観光客が気軽に食べられる日はなかなか来ないかもしれないけど。
観光の売りになりそうものを、「恥ずかしいから」と提供しない、幻の一品を作る人達。
お酒を酌み交わしながら、どんな辛いことも、体制への不平も不満も、最期には笑い飛ばすシマの人たち。それはきっと、何十年も前から変わらない。
そんな雰囲気の店を作れたら、いや、地元の料理好きの人たちの家に泊まり、島唄を唄いながら、焼酎を飲みかわせるようなプランが出来たらいいなと思う。
それに向け、まい進中の今です。