通訳案内士の奄美大島 観光バス旅日記……のその前に
梅雨入りして、数日たった、久しぶりに晴れたとある日。
「そうだ、空港に行こう」
と、突然思い立った。しかも、バスで。
しかも、宇検村から奄美空港へ。
実際のところ、地域おこし協力隊には、業務で使用する場合は社用車の使用が認められているのにも関わらず、そんなことをしようと思った。
(役場の皆様、お気遣いありがとうございます。感謝)
何故そんなことを思い立ったかというと、
これから再開することが確実なインバウンド観光客が使用するであろう公共交通機関の導線確認をしたかったから。
え? タクシーないんですか? って声が聞こえそうですが。
勿論あります、市内や空港には。でも宇検村にタクシーは無い。
奄美空港まで2時間以上の距離を、タクシーに乗りながら島内周遊できる人は、なかなかの富裕層でしょう。
海外から個人旅行で来るインバウンド客は、99%免許を持っていない。
過去ご案内した百数十名のお客様のうち、国際免許を持っていた人、僅かに一名。
都内のマリオカートに乗りたかったのに!と怒りながら国に帰ったお客様、ええ、いっぱい見てきましたよ。
(そんなに乗りたいなら、ちゃんと下調べしてから来いよ)
ご存じですか?
通訳案内士は、旅客を乗せることのできる運転免許2種を持っていない限り、お客様を載せてガイドしながら運転することができません。
京都で違法で観光客を乗せていた違法白タクがどれほど多かった事か。
恐らく、ここ奄美でも結構な数がいるのではないかと思ったりしています。
マジで、二種免許を取りに行こうかと考える日々。
そう思って調べてみたら、二種が取れる運転免許試験場がなくて、種子島に行かねばならないのだけど。
でも、認定されたエコツアーガイドだけは、二種免許が無くても、例外的にお客様を載せられるそうです。
タクシーが少ないし、物理的に、ガイドを載せて運転手も雇ったら、ガイド費用が膨大になるからだと思います。
利用できるタクシーが少ないのは、通訳ガイドにしたって同じなのに。
奄美群島の観光に携わっている「偉い」と自負されている方々。もしくは、国土交通省の方、これを見ておられましたら、タクシーの少ない島内では、エコツアーガイドだけでなく、通訳ガイドに対しても、お客様をご案内するための運転許可をお与えください!
(いや、もう特別ルールができるのを待つよりも、二種免許を種子島まで取りに行く方が絶対早いのはわかってんねん)
けれども、です。
CO2削減だの、SDGsだの、持続可能なコミュニティ還元型の観光だの言っている以上は、やっぱり電気自動車でもない限りは、小さな集落へ乗り入れる車は減らすべきなのでしょう。
CO2削減を謳いながら、電気自動車が走るようになりました!と言いながら「いや、島での観光は、レンタカーしかないからね」って、言い切るって、おかしくないか?
シマの人達が、「え? バス? 頭おかしいんじゃない?」とまでは言わないにせよ、「バス乗る観光客なんているの?」とまで言われるバス観光。
いますから!
何なら豪華客船でやって来るお客様だって、島ではタクシーが少なすぎて、しまバスに乗ってます。
と、いう事で、最初のくだりの言葉に繋がったのです。
分かってますよ。難しいのは。
でもね、ここに来られるのが、人生一回だけの人もいるかもしれない。
免許の無い人、海外だけでなく、国内にも沢山いるはず。
きっと、そういう人たちの残念がる気持ちが、車生活が当たり前の人達には理解できないのだと思います。
今あるコミュニティバスに、海外の人達と観光客、地元のおじいおばあが乗り合っている姿を想像するだけで、なんだか、ほんわかあったかい気持ちになるのです。(混み過ぎたら困るのですが、それはまた別の課題)
先に世界遺産に認定された屋久島では、早々と「やくざる号」なる観光バスを取り入れていました。これなら地元の人にも迷惑がかからないのだけれど。ハイシーズンの座席は予約でいつも満席だった記憶があります。
(今、やっているのだろうか?)
優しい人たちに囲まれている私は、ここに移住してきた時から空港まで車で出迎えていただき、市内への移動も「不便だろうから」と、社用車を使わせていただいている。
勿論、完全プライベートな用事で使用することははばかられるので、仕事を必ずかませるようにはしているのですが。
というわけで、移住してからほぼ半年、公共交通機関というものをまともに使っていなかった私。厳密にいえば、公共交通機関の便が悪すぎて、地元の人は、免許返納者以外はバスはほぼ使いたがらない。というのが現状。
思い出すのは数十年前、京都の金閣寺に行くのに文句を言い続けていた人達。行ったことがある人は分かると思うけれど、なにせ、行きづらい場所にある。けれど、そこから竹林で有名な嵐山はすぐそこ。
市内から金閣寺へと、地下鉄やバスを乗り継いでから、嵐山へはタクシーで回って行くというルートを知らなければ、とんでもなく遠回りになる。
それができない人は「団体」観光ツアーバスへどうぞ、ということでした。
数十年経った今、公共交通機関でどうやって動くかについて、様々なネット情報があって、個人旅行者だって、海外からふらりと来た人だって、もはや困ることはなくなりました。
ここ、奄美大島、宇検村へも公共交通機関で気軽に訪れられるようになって欲しいのです。そして、ここ宇検村で、のんびり一泊して欲しい。
「瀬戸内の古仁屋には楽に行けるのにな」そんな思いがありました。
自動車免許を返納した、時間とお金に融通のきく方は沢山いて、奄美大島に来たい人も沢山いて、けれど、バスルートマップと時刻表を見た瞬間に
「なんじゃこりゃ?」と、なるはず。
行先表示は難解、かつ、知らない地名だらけ。
ルートには世界共通語である「番号表示」はなし。
もしあなたが外国に行って、なんて書いてあるかさえ分からない未知の読めない言語だけが表示されたバスが次々にやって来たら、あなたはどのバスに乗るだろう? 行先を紙に書いて、運転手に見せたところで、その目的地で安心して降りることは出来る?
どんなにネットが発達したところで、バックパッカー、ひとり旅、公共交通機関利用の個人旅行はいつだって大冒険。
しかも、ここでは、ほぼWifiがつながらないという恐ろしい現実。ポケットWifi必須。(それでも市内以外の山の中は、ほぼ圏外だけど)
訳が分からないから、面白い。
アクシデントがあるから、楽しい。
けれど、最低限、事故や事件に巻き込まれないように。公共交通機関に乗車する時だけは、安心して乗って欲しい。
市内ルートや空港ルートでさえ、分かりずらい。
何故なら、これまでそれは、地元の人向けに作られていたから。
「枝線バスは廃止の方向で」が当たり前の島。
「自家用車で移動」が、当たり前の島。
けれど、通院に利用するシマのおじいやおばあ、
通学にバスを利用する高校生、
大和(地元の方は内地の方のことをこう呼ぶ)からくる観光客、と、
バスが無くなると困る人たちは沢山いるはず。
世界遺産に認定され、増え始めた国内観光客に対して、重い腰を上げ始めているのは明らかで、バス会社の方たちも懸命に努力されているところ。
そうしてインバウンド対応は恐らくこれから始まっていくはずです。
補助金で動いているのが殆どの「枝線バス」に「コミュニティバス」。
ここだけでなく、内地の街だって同じ理由でバスはどんどん廃止されているのだから、人口の少ないこのエリアでそうなったとしても何ら不思議ではないこと。
けれど、本当に廃止されてしまったら?
免許返納者も、国際ライセンスを持たずに来るインバウンド観光客も、恐らく代理店のツアーに参加するしか観光の方法はなくなります。
そうなれば、大型バスが入って行けない場所だらけの宇検村には、運転ができる人だけしか来られないという事になっていくのです。
奄美大島最高峰の湯湾岳に沢山の観光客を乗せて登っていくツアーバスや、北部の有名観光地、あやまる岬へ空港からバス移動している観光客。
世界遺産エリアのある宇検村を目の前で通過していることを知らずに、ただひたすら加計呂麻を目指して古仁屋までバスで乗り過ごして行く観光客。
今回、バスに乗る旅で、そういう人たちに沢山出会いました。
「ああ、宇検村行きの可愛いバスを利用してくれれば」
「ああ、宇検村には目が覚めるような、絵にかいたような、奄美ブルーの、誰もいないサンゴの海があるのに」と、思う日々。
(タイトル写真はその写真)
ということで、始めたバスルートの探索(大げさ)です。
壁にぶち当たりながらも、バスを乗り継ぎ、車窓をのんびり眺めながら出た一つの結論は、
「とりあえずバスに乗って宇検村に来るサンプルツアー行程を作ってみる」
でした。好評ならまたルート増やそうかなと。
宇検村に来てくれる人には、どんなサービスしようか……。
……は、これから考えることにします。
奄美が初めての方向けにも、人気の北部有名観光地へのアクセスも、ある程度確認して、お伝えできたらと思っているところ。(有料級やん)
どれだけ自腹でバスに乗る必要があるのか、費用が怖かったりするけれど。
これって、きっと、車を運転せずに観光したいと思う人が、初めて奄美に来て感じる気持ちと同じ。
レンタカーで行きますから、という人にも、まぁ、そこそこ役に立つはずの情報を出せたらと思っています。
不肖、ゆり姉こと、ゆりさん(こっちでそう呼ばれている。まだ慣れない)
「奄美に癒されに行きたい、でも車に乗れない!」という皆様のため、地味ながらも有益情報を垂れ流します。
もとい、プチお役立ち情報をこれから提供させていただきます。
(2022.5月時点情報)
そうして皆様の力で、観光の底力で、廃止されるかもしれない可能性のあるバス路線を救っていただきたい!のです。どうかお力をお貸しください。
でも、地域おこし協力隊員としては宇検村に誘導するルートが優先なので。その辺はご勘弁を。
(次回、奄美大島 観光バス旅日記ーその① へつづく)