そうだ、奄美大島へ行こう(その5:海も、人の心も、結局汚すのは人だった)
確定申告終わりましたか? これが終わると春ですねぇ……。
どんな季節感覚やねん。(と、読んでる人の心の声が聞こえる)
最近は陽が落ちたら寝ていたので、こんなに夜更かしするのは久々。
確定申告のおかげ(?)で目が冴えて、久しぶりに読んだり書いたり。
ここ、宇検村は、ここ数日すっかり夏のような景色です。
ちらほらと、観光客の姿も見え始めています。
『車でしか来られない場所に、わざわざ足を運んでくださった皆様、
どうか安全運転で、最後まで楽しい旅を!』と願いながら、走り抜けていくレンタカーを見送る日々。
(一応バスはあるけど……そのうちルート紹介します)
ほんまに、今、開いてるとこ少ないから、
地元の面白ガイドさん連れて山や海に行くのが一番やねんけどねぇ。
高速で素通りして、いいものを全部見過ごして、
何も無かった……ってことにならんと良いけどなぁ。
周りにある自然を贅沢にゆっくり味わう場所。
何せ、観光化されていない。それが好きな人にはたまらない場所。
所謂、観光地らしさが、綺麗な看板以外は見当たらないことに戸惑われる方も多いはず。
『公衆トイレでも綺麗な場所見つけたら必ず立ち寄っておいてくださいね。
ちょっと先で、店で借りて、なんて無理だから。
何ならコンビニはないし、お店もそうそう開いてはいないです。
あ、トイレにもハブがいるから気を付けてくださいね。
草むら歩いちゃ駄目ですよ。
何もないからって、勝手にテントたてて寝ちゃ駄目です(人の土地多し)。
行きたい場所には、必ず電話してから行ってくださいね。
(かなりの頻度で電話繋がらないけど)
自動販売機とか滅多にないので、見つけたら買っておくか、飲み物は持って行ってくださいね。
ゴミ箱ないので、ゴミは持って帰ってくださいね……』
もっといいこと書けよ!と言われそうだけど。
注意事項は先に伝えないとね。との先輩の言葉を思い出し……いろんな想定をして、ツアーのメモ帳を書くだけの日々。
観光客が村民に触れあえる日々は、まだちょっとだけ先。
インバウンド観光客は、更にその少し先だけれど、そろそろ緩和される気配も漂い始めた。
そんな中で、恐る恐るやって来てくれる観光客のレンタカー。
積極的に道行く人に声を掛けている観光客の姿を見かけると、ついつい応援したくなってしまう。
美味しいもの食べた?
あのお店に行けた? 朝の市場見た?
ルリカケス見た? クロウサギは?
海はどうだった? 山の花咲いてた?
魚釣れました? 波はどうだった?
あの海岸とってもいいでしょう!
今夜は晴れているから、きっと星がすごいよ!
畑仕事手伝ってみる?
あの人に聞いてみて、きっと詳しいよ~。
なんて、そんな風に気軽に語らえる場所を作っていきたいな、と思う。
(美味しいものもいっぱいありますよ)
移住者が少しずつ増えてきているのは、応援する役場や、地域おこし協力隊の担当者の力があってこそ。
それでもそうやって、期待してやって来ていても、街にいた時以上に繋がる人たちに嫌気がさしてしまう人もいるかもしれない。
そう、どんなに場所が変わっても、人間やることは同じなのだ。
海岸に打ち寄せるプラスティックゴミを見る度に思う。
海を汚すのも人、綺麗に保とうとするのも人。
役場の人達が、時に総出で、いまだ流れ着き続けている軽石を清掃していることを知っている人は果たしてどれくらいいるのだろう。
そんなことを知ってか知らずか、汚れた海を批判するのも人。
かくいう私だって《汚いなぁ》くらいに、大阪にいた頃は思っていた。
自分で綺麗にしようとは思わずに。
久しぶりに大阪に戻った時に気づいた。
家が汚れるのは人が住むからで、虫が出るのも人がいるから。
もうここでは大きな蜘蛛と一週間同居しても動じなくなってきたけれど、
中には要注意の毒を持つ蜘蛛もいるらしい。
人がいないと出ないから不思議だ。
大阪でひとり山のように残していた仕事を片付けながら、
もう宇検村に戻りたくて仕方が無かった。
大阪が嫌いとかちゃうで! 誤解せんといてや~。
感染症下で、なかなか動けずにいたせいで思うような活動が出来なかった。
というのは言い訳で、観光客でさえ怖がる村の人たちの中に飛び込んでいく勇気が無かった。
わずか二日の帰阪で片付けられた多くの仕事を思い、この二か月で、もっとできたことがあったのではと悔やむ。活動期間に機嫌のある協力隊員。
奄美空港で5日前から申し込んでいた抗原検査。陰性結果を受け喜び勇んで村に戻ったものの、PCR検査は街と違って2日後にしか結果が出ない。
たった2日だけれど、とてももどかしかった。
いったい何のために来たのか。
自問自答の日々。
同じように村の人だって感じているのかもしれない。
幸い周りには、そんなことを言う人がいる気配は今のところないけれど。
《聞くも因縁、見るも因縁》というらしいので、人の噂話が耳に入るようになれば、そういう気配がそろそろ近づいているという事なのかもしれない。
酸いも甘いも辛酸舐め過ぎた大阪のおばちゃんの私は、
鬱陶しいことはスルーするという鈍感力が身についているようで、
嫌がらせしてるの? 妬み? ふうん、それってなあに? 美味しいの? 状態。
というか、他人がどうでもいい性質(性格?)にいつからかなっている。
それでよくガイドをやっているなと友人は驚くのだけれど。
ガイドこそ、鈍感力は必須だと思うのだが。
でないと、お客様アンケートと評価シートに耐えられないぞ。
もしくは既にそういう中にいるけれど、本当に鈍感力に磨きがかかっているのか? 周りの心優しい人たちが、聞こえないようにしてくれているのか?
いざとなったら、関西弁でスイッチオンするけどな。
ま、いっか。 ここは間違ったことやってたら神様がサインくれる。
人を妬む心は、結局自分を焼き尽くす。
それはきっと誰もが知っていて、それでもやめられない事。
無理に考えないようにする必要などないとは思うけれど、
人として当たり前の醜い心を自分は持っているな、と思えれば少しは楽。
自分は卑しい人間なのだと。だから癒されたいのだと。
そんな自分に気づけなければ、神様はそれに気づくまで、メッセージを送り続けるだろう。
『あ、わたし妬ましいと思ってるな』と、
そうやって妬んでいる自分に気づけたら、呪いは解けるはず。
自分で自分にかけた呪いは、自分でしか解けません。(体験談)
人の心を癒すのも人だし、傷つけるのもまた人。
もし、あなたを妬んだり羨んだり、意図的に黒い心で近づく奴がいるなら、こっそり呪いをかけましょう。
この神様だらけの村を舐めちゃいけません。
どんなに頑張ってドライヤーしても髪がうねってはねる呪いとか。
ちょっとしか運転していないのに、めっちゃガソリンが急に減る呪いとか。
洗車した次の日に限って、天気予報になかったはずの雨が降る呪いとか。
何かを買った翌日に、その商品の値段が半額セールになる呪いとか。
楽しみにしていたプリンが目の前で売り切れる呪いとか。
……いっぱいかけてさしあげますよ。
いえ、私じゃなくて、ここに根付く何かの力が、きっとね。
冗談はさておき、どんな所でも人がいれば摩擦はあるようで。
それで心痛める人もいる。でも幸いなことに、ここには神様がいて。
不思議にいろいろなことを片付けてくれると信じている。
もしも、思うように進めない時は、そっちじゃないよというサイン。
もしも、何かに気づけたら、それは変化のチャンス。
もしも、誰かの痛みに気づけたら、それは、自分を振り返る時。
そんなことを思いつつ、真夏の気温の中、車の窓を開け半袖Tでドライブ。
(《通勤》の間違い)
懐かしいイージュー(E10)ライダーの曲が、少し硬くなりかけていた心を溶かしてくれる。戻って3日でようやく大阪スイッチがオフになった。
もうG10ライダーだ……。いや、その上が近いか……。
ルリカケスが飛び、サシバが車に並走して飛んで消える山道。
珍しく晴れが続いた日、真っ白な梅次郎櫻を観に連れて行ってもらった。
ガイドのプロの先輩がいなければ、きっと見落としてしまうものばかり。
たどり着くのも大変だ。
沢山のガイドさんが観光客を案内できる日が、早く来たらいいなと思う。
山も海も眺めるだけでも綺麗だけれど、ガイドさんの話を聞きながら、普段歩けない場所へ行って欲しいと思わずにはいられない。
櫻の香りに誘われやって来ている蜂の羽音に身構えながら、
何種類もの鳥のさえずりを聞くのんびりとした時間。
(これは勤務です。念のため)
人が歩きやすいようにと、ハブが潜みそうな、覆いつくすほどの丈の草を
刈ってくれているのも役場の人たちだ。(気づいたら綺麗になっていた)
やっぱここ、好きやわぁ。
最近の日課は、もうすぐ完成する予定の観光拠点施設に立ち寄ること。
目にする度、徐々に出来上がってくるその姿にワクワクしている。
きっと、私にできることは、あまりないかもしれないけれど。
観光客も村民も、自分も、変わらず笑顔でいられますように。
新しい風が吹くことで、傷つく人や怖がる人がいませんように。
そう願わずにはいられない。
独り旅が好きな人にも快適な場所だけれど、
(誰にも会えないStay home期間を満喫しまくっていた人)
人が好きな人には、もちろん人が寄って来てくれる場所。
人と人が出会う場所を作りたい。
知らない人と話をする。そのちょっぴり高いハードルを越えた時、この場所で見える景色を感じて欲しい。
その人が、あなたの忘れられない友人になるかもしれない。
いつかここへ来て、早朝の海辺の空気を味わってほしい。
綺麗な(プランクトンの少ない)海のせいで、ここではいわゆる海の香りが殆どしないことに驚くはず。
生き苦しさや、悲しさや、身体と肺にまとわりついたホコリの匂いを落としに。是非。
そうして、私を見つけたら、遠慮なく声を掛けてみてください。
どんなに野菜に埋もれて髪を振り乱していても、きっとあなたに、とびきりの笑顔をマスク越しにお返しします。
目尻にいっぱいの皺をお見せしながらね。
え? いらんて?
(『バス旅の回』へと続く)