そうだ、奄美大島へ行こう(その3:絶滅危惧種たち)
あっという間の1週間だった。
津波警報の後の興奮状態覚めぬまま、毎日悪戦苦闘している。
(絶対にのんびりしているようにしか見えないだろうけど)
移住を決めて半年、観光に関わる仕事を続けたかった私にとっては、
何を見ても聞いても、感謝と感動しかない毎日。
そんな私のここでの仕事上での肩書は、『地域おこし協力隊』という。
諦めずに続けていれば、ある日突然、何かに導かれるように道が開けることもあるものだと思った。
私の場合は、何故かそういう日が、9年から12年おきにやって来る。
縁あって導かれたここで、何ができて、何を求められているのかを考える日々。けれど感染症は少しも収まる気配が無く、集落の人達との触れ合いもままならない。
少しでも、の気持ちで毎日違う場所でお買い物したり、お弁当を買ったり。(『いや、単に料理が面倒なだけだろ?』とは言わないで)
そんな中で、いろいろと気遣いをしてくれる職場の方や移住の先輩たち。
私には、先輩が沢山いて本当にラッキーだなと思う。
(といっても、私よりも皆ずいぶん若い先輩たちなのだけれど)
日々収穫される、甘夏や金柑、結構長いこと生きてるけど生まれてはじめて見た『赤みかん』。
どれもみずみずしく、絶品。そして信じられないくらいの有難いお値段。
お値段以上どころではない。
この柑橘類たちのおかげか、この時期イガイガするはずの喉も絶好調。
来月のタンカンが今から楽しみで仕方ない。
職場の周りには、自然がいっぱい。
マウンテンバイクに乗り、観光ルートになりそうな所を案内してもらった。
山に入るのに、塩持ってくるの忘れた……。
山も海も、神様だらけの場所。
独りで来るのは怖いし、間違ったことをしそうで怖い。
怯えつつ写真を撮ってもらった。
この壮大な滝、写真で伝えるのは難しい。
この感染騒ぎが収まったら、是非、宇検村へ見に来て欲しい。
ハブさんもいるらしいので、来られる時には是非ガイドさんと共に。
オオタニワタリがあちこちに着生していて、なかなかの亜熱帯な景色。
(アランガチの滝ではないので、念のため)
ここ、絶対何かおるよな……。なんか感じるよね。(心で呟く関西弁)
ママチャリ(これって日本全国共通語だろうか)しか乗ったことのない私。
この後、電動アシスト付きマウンテンバイクで、でこぼこオフロード(?)を飛び跳ねて、ころんだ。
地面がアスファルトでなくて良かった……。
ご案内する際の注意事項を早速メモする超初心者。
海と山に囲まれた宇検村。移動手段が無いとどこにも行けない。
観光地化されていない自然が魅力なのだけれど、
それらは集落の人達や役場関係者が、実は手をかけて守り続けている。
移動手段があれば訪れる人も増えるだろうけれど、自然を守りながら地域に還元できる持続可能な観光、という課題はとても大きくて重い。
この電動アシスト付きマウンテンバイク、運転に慣れた人ならかなりの距離を楽しめそうだ。これからどうやって広げていくのか楽しみになった。
きっと有事の際、交通渋滞があった時などにも役立つはず。
これと別に電動アシスト付きの《ママチャリ》も、欲しいなぁ……。
ていうか、いい加減スニーカーを買いに行かなあかんな。
別の日、祖母の故郷近い集落にある小中学校へ、珍しいものがあると連れて行ってもらった。
そこには、子供達が大切に見守っているリュウキュウアユがいた。
産卵後の寿命が短くなった養殖のリュウキュウアユ。
リュウキュウという名前が付いてはいるが、沖縄ではすでに絶滅している。
奄美大島自然保護協議会ヤジ分会のリュウキュウアユ普及啓発活動の一環で提供されたらしい。 ここだけにしかない大切なもの。
寿命が近いという事は、これから子供たちはこのアユのお世話をしながら、
命を全うしていく姿を見届けるという事になるのだろう。
元気に動き回るリュウキュウアユたち、実は10匹以上いるのだけど……。
どうやら私のことが見えているらしい。
近づくと、逃げる。(単に、写真を撮るのが下手なだけ)
何食べるのかな? の私の問いに、
石に生える苔とかだよ。と、笑顔で教えてくれる子供たち。
(お世話するためにはエサをあげるらしいけど)
これを見られることが、どれほどすごいことか。
このおばさんは、めっちゃ感激してんねんで~。
おいとまして付近を見学。そこにも名所が沢山。覚えきれない植物の種類。
冬らしい雲が広がっていた。
そうして迎えた、移住してから三回目の週末。
そろそろ、いろんなものが無くなってくる。
食べ物も、飲むものも。 何より大切なトイレットペーパーも。
そして、スニーカーが欲しい。 けれど、それをどこで買ってよいものか。
やっぱり、ネット通販しかないか……。
市内に出るべきか悩んでいたら、奄美大島の各地で活躍し早十年以上という移住の大先輩が「一緒に行く? 私も買う物あるし、運転するよ」と、声を掛けてくれた。
ありがたや~。
そんなこんなで、出かけた週末。
まさかのガイドとしても活躍していた先輩のガイディング付きで、
珍しいものをたくさん見た。
その中で、一番印象に残ったもの。 それは、アマミトゲネズミ。
奄美大島固有種で、絶滅危惧種でもある。
正確に言うと、その死骸。
(写真については、掲載自粛)
一見してまだ生きているかと思う程の、もふもふした毛皮だった。
先輩はすぐさまどこかへ電話。あとで聞けば、保護センターとのこと。
亡骸になったその子を丁重に抱え、可愛い花柄バックに入れ、車で移動する移住の大先輩。
見つけた場に因んで、ふな太郎(場所はご想像ください)と名付けた私。
ふなたろう、ごめんな。
買物終わったらすぐセンターに届けてもらうからな。
市内で必要な品を買い揃え、急ぎ保護センターへと向かう。
思いがけず遠回りをしてもらえた。
そうして、また行きたい場所が増えていった。
やるべきことを終えて、すっかり日が暮れた夜の山道。
『運転は時速10Kmが、山の夜道の基本』と教わった。
どんな動物が出てきても、すぐに止まれそうな速度。
それにしても、真っ暗。
明るい音楽が車内に響いていなかったら、泣きそうなくらい怖い。
車のライト消してみる? と笑いながら言う大先輩。
やめてください。
自宅まで送っていただいて、楽しかった盛りだくさんの一日が終わり、
まったりしながら今日買ってきたものを広げた。
ああ、これで当分は安心ね!と思っていたのだが……。
スニーカー買うの忘れた。
(つづく)