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夏、来たりて。

なんか、ゲームのタイトルにこんなのあった?
どうでもいいけど、暑すぎん?

7月が一番ピークで暑いはずなのに、もはやこの暑さ。
まだまだ暑くなる気とちゃうやろな? と、太陽を睨む。

日差しが痛い。暑いを通り越して、痛い。
これで汗をかけば、痩せるに違いないと外を歩いた。

巨大な無人島

靴のかたちどおりに、足の甲が日焼けしている。
Tシャツのかたちに、腕と首が焼けている。

昼に外に出るもんじゃない!と村の人たちに言われた。
なるほど、農家さん早起きなわけ。

農家さんたちと顔見知りになると、色々なものをいただくようになった。
夏野菜たち、もずく、フルーツ、etc。

暑さで食欲が減退し、アイスクリームと冷たいジュースで生きていた私。
それなのに体重が増えていた。
キッチンにあるいただいた野菜は、見なかったことにしていた。

夏野菜たち(いただきもの)

手作りの品もなんだかんだいただくようになった。漬物とか、お菓子とか。
どれも絶品。ここに暮らす人たちは、皆料理上手。

それを広める体験ツアーも作りたいなと思うが、
「こんなもの、恥ずかしいがね」と言われる。

ここでしか食べられない絶品たちよ。いつか私が日の目を見せてあげるぞ。

心に誓う

日々いただくものたちは、人に分けるほどの量はないのだけれど、独りで食すには膨大だった。
「どうだった?」と聞かれるので、人に全部あげる訳にもいかない。

家に戻って、ひたすら島うりを切り分け、冷凍庫へ。
ひたすら、すももジャムを作る。
ひたすら、モズクを分ける。

島うり、ジャムにしたらどうなるんかな……。

絶対に従ってはいけない心の声

そんな悪魔のささやきを振り払いつつ、もうどうしていいか分からないので、とりあえずモズクと一緒に酢で和え、残りをカツオと一緒に煮込んだ。

どうやっても処理できないモズクをパック詰めする。そして再び冷蔵庫へ。

エブリディ モズク、確定やな。

嫌いじゃないけどなと、遠くを見つめている時の心の声

格安で手に入れ、切り分けて冷凍されたカツオは、多分1週間は食べられるくらいある。
初日に新鮮な生の刺身で食べたら、美味しすぎてもう一年間食べなくてもいいかなというくらい食べて、残りがぶつ切りにされて冷凍庫にいる。
半分使ったけれど、まだまだある。

さらにくじ引きでただで手に入れた米を炊き(とにかく、くじ運は強い)
いただいた名前の分からない魚の鱗もひたすら取って、島うりと共に島味噌と島しょうがで煮込んだ。(そうしたら美味しいよと言われたので)

多分、ひと月分くらいの料理をした。
作り終えた食材で、空くはずだった冷凍庫と冷蔵庫が再び満杯になる。
でも多分、食費は千円以下。

おそるべし、ギブ&テイク(物々交換ともいう)の世界。

まだまだある島うりを何とかしようと、
冷凍されたまま何日も放置された鶏肉と一緒にバターソテーにしようか、と鳥肉を切っていたら、ハート型に包丁が欠けた。

そんなことある?

これはラッキーサインか、はたまた……と考え込んだ時の心の声

解凍してから切りなさい!という声が天から聞こえた気がした。
あいすいません。

というわけで、無料で始まった、貰ったものを食べきろうダイエット。
食べきらないといけないという切迫感のあるダイエットなのだ。

包丁なくなったし、当分料理しないもんね。

必死で食べる。
食べなければ、アイスクリームも冷たいジュースも冷蔵庫に入れられない。
お腹がはちきれそうになるまで食べるので、とうとう甘いおやつさえ食べられなくなった。

そして、冷たい飲み物もやめた。
胃が縮こまって、沢山食べられなくなるから。

汗をかきながら、お腹いっぱい食べて……数日。なんと、体重が減った。

翌日、久しぶりに休みをもらって、歯医者に出向いた。
久々の市内に心も弾む。
「今日で治療完了ですね! 頑張りましたね!」との嬉しい言葉に、思わず自分にお祝いをしてしまう。

ちょっと体重減ってきたからいいよね~。と、
禁断のハイカロリーラッシュ。

ナン、でかすぎる。でも旨い。ペロリ完食。

家に帰って、体重計は無かったことにした。
目に入れない。それが心の平安を生む。
そして、そのまま眠るという暴挙に出る。

あまりに早く眠ったせいで朝早くに目覚め、少しは反省して家中の掃除をし始めた。久しぶりの夢の連休。

一年の半分が過ぎようとしている。夏至も過ぎた。
何もしてこなかったくせに体重だけが増えていた自分を戒めるかのように、断捨離と拭き掃除を始める。(まだ体重計は無かったことになっている)

久しぶりに窓ガラスを磨き、暑い中、リネン類を洗濯しまくる。
目いっぱい汗をかいてから、体重計に乗って、自分を納得させる方式。

床掃除で汗まみれになった時、軽快な音が聞こえた。

ピンポーン♪

警察官(派出所のお巡りさん)がやってきた。

何故?

恐る恐るドアを開ける時の心の声

「不審な人物がいないか、現在確認中です。? いつこちらに引っ越して来られましたか?」

いや、めっちゃ顔見知りやねんけどね。
たしかに、こっちの顔は丸くなったけどね。
マスクしてるからね。短パンにTシャツだしね。
この前会った時は、小奇麗だったもんね。
メークも崩れてなかったし、眉毛あったもんね。

恥じらいながら、ほぼノーメークで凛々しい警察官と話している時の心の声


「あの、半年ほど前に、一度、〇〇さんと一緒にご挨拶を……」

その言葉を聞いて、怪訝な表情だった彼はようやく人物を判別し笑顔で去って行った。
「何か困ったことがあればいつでもおっしゃってください」と言いながら。

何なら、今が一番困ってるけどね。
誰や? 不審人物の通報した奴!
この集落、百五十人ほどしかおらんねんから、分かるやろ!
ベランダにリネン類を干しに出たのは、ほんの一瞬。
あの一瞬を見ていたのか。 恐るべし……。

誰に通報されたのだろうかと勘繰る心の声

色んな事を想像しながら、掃除の力をさらに込め、汗だくになった。
でもシャワーを浴びたら、あとは作り置きのおかずを冷蔵庫から出して食べるだけ。(レンジという文明の利器さえない家庭)

自分へのご褒美に、クリーニングしたてのエアコンスイッチをONした。

ああ、文明って素敵。

ベッドでひっくり返って目を閉じている時の心の声

これで、アイスがあったら最高なのに。
この暑さで外に出るのも嫌だし。
アイス買いに行くのに、わざわざ車に乗るのも嫌だし。
また誰かに見られてたら怖いし。
ああ……アイスを入れる場所が冷凍庫にない……。

ベッドでひっくり返って目を開け、窓の外の日光を見た時の心の声


ダイエットは続く。

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