氷と火の国の祭儀。シガー・ロス 来日公演 「A EVENING WITH Sigur Rós」
※「ハニカムブログ 」2017年8月2日記事より転載
あまりの蒸し暑さに辟易とし、涼を求めて心の中にアイスランドの氷河を思い浮かべていた今日この頃。
うむ、アイスランドは涼しそうだ。
と、妄想で暑さをしのぎながらSNSを眺めていたら、光に溢れた画像がいくつも...。
アイスランドを代表するアーティスト「シガー・ロス」が来日している!
ということで、湿度も最高潮の中、急遽当日券で行ってきました。
「アイスランド」「シガー・ロス」と、言葉を思い浮かべるだけでも、すでにひんやりした空気が漂う。
初めて生で観るシガーロスのライブは、壮大な太古の、あるいは未来における地球の祭儀のようだった。
年始に訪れた真冬のアイスランドは、まさに地球創生、あるいは宇宙創生を思わせる土地で。
氷河やブラックサンドビーチなどの青白さとモノクロームな風景と、その地下にフツフツとたぎるマグマのエネルギー。
キラキラと宙を舞う氷。
冷たい風が駆け抜ける様。
乳白色の湖や海の静けさ、そして対極をなす滝が飛沫をあげてゴウゴウと唸る音。
そうしたアンビバレンツな陰陽のエネルギーが、静けさの中に混在している。
私が訪れた1月のアイスランドは日の出が遅く、日の入りが早い「極夜」。
朝8時に出発し、10時くらいにやっと日が昇る。
そこから15時くらいまでの間に効率よく秘境を巡って、割と早い時間にホテルに戻ってくることになる。
アイスランドに「冬」に訪れてよかったと思うのは、寒い時期ならではの風や、空気の冷たさ、光の希少さ、そして夜に有り余る時間を体感できたこと。
どこまでも続く火山質の真っ黒な平原をバスでひた走りながら、1年の半分がこうした時間の流れ方をしている土地での暮らしに想いを馳せる。
火山の激しさと、氷の静謐さを思わせる振れ幅のある楽曲構成。
そして、そこに乗ってくる「声」は、歌というよりは「周波数」。
画家が、その風景や空気感を一生懸命絵に描こうとするならば、音楽家はこのアイスランドの大地の周波数を感じ取って、音や声に変換していく。
シガー・ロスだけでなくビョークももちろんそうだけど、ひょっとしたら、彼らはアイスランドの精霊が顕在化した存在なのかもしれない。
ヒーリングの一つの手法に「トーニングというのがあるけど、そんな感じ。
息を吐くタイミングで声を乗せていく、つまり「発声」を使って、心や身体、エネルギーを整えて行く。
例えばヨガで「OM(オーム)」のマントラを身体に響かせるけれど、あんな感じでもっと自分の身体が喜ぶ音階や音を探しながら発声していく。
声の周波数は自らの身体の内側に響き、そしてそれを聴いた人の身体の中の水も震わせ、何らかのヒーリングや変容を起こしているのだと思う。
音は、単なる音にあらず。
音はすべての始まりであり、癒しである。
いや、癒しというより生命力と言ったほうが良いかも。
そうした、すべての生命体への賛歌。
音楽であって、音楽にあらず。
宇宙に流れるなんらかのエネルギーそのもの。
そんなアイスランドの精霊たちによるライブ(という言葉が適切ではない気がするもの。やっぱり祭儀。)でした。
■ 小松ゆり子 official web site
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