『一人になる手紙』
一人で生活をするのが、恐かった。なぜそれだけのことを、これほどに恐がっているのかは、自分自身がよく分かっていない。でも、それでも生活のうちの多くの時間を、たった一人で過ごしていると、特に、ダイニングで夕食を食べながら他愛もない話ができないことや、ベッドに横になって隣に誰もいない中で目をつむることだったり、そういうことを想像してしまっては、僕はとても不安になってしまい、そんな状況をどうにかして避けなければならないという気分がしてくるのだった。
そんな性質があったために、僕はこれまでの多くの時間を女性と二人で生活するようにしてきた。それは、お互いに好意を持ち正式にお付き合いをしている彼女であることもあったし、時には、お互いのこういった誰かと常にいることを必要とする性質に関して利害の一致した女性と短期間を過ごすというようなこともあった。
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