たきssの下書き
今日もSSっぽいものを書きました。
この前のやつの続きです。
海鈴が祥子や睦とバンドを組んでいる。
それを知った次の日の学校は、なぜかほんの少し身体が重かった。
「おはようございます。今日はお早いですね。」
時間ギリギリに教室に入ってきた海鈴に声をかけられた。
「いつもこれくらいでしょ。そっちが遅かっただけじゃない?」
「そうかも知れませんね。」
そんなやりとりをしていたら先生が来て、朝礼が始まった。
今日は放課後バンド練だ。練習する曲、なんだったっけ。
…
「立希さん」
「なに?」
「いえ、なんでもないです」
「はぁ...?」
お昼休み、今日合わせる曲を確認していたら海鈴に声を掛けられた。
と思ったら、海鈴は後ろに向き直って自分の席に帰ろうとしていた。会話のテンポが掴みづらい。真面目に受け答えしようとした私が馬鹿なのか?
「というのは嘘です。」
なんなんだこいつ...。
結局私の机のところまで来て、続けて口を開く。
「また新しいバンドに加入しました。」
「...へぇ。これで何バンド目?」
「そうですね…。えっと。」
正直びっくりした。このタイミングでその話題を向こうから振ってくるなんて。昨日から私の心のどこかで、言葉にできない引っかかりとなったまま今まで過ごしているからだ。
燈の居場所だったCRYCHIC。それを壊していった祥子のことは、もう私たちには関係ないとはいえ今でも許せているとは言えない。
海鈴はCRYCHICのこと...私が祥子や睦と過去にバンドを組んでいたことを知っているのだろうか。
こいつが学校のことをバンド内で話すとは思えないし、三角さんも...わざわざ私の名前を出すとは思えない。祥子や睦も、過去のことを話したがりはしないだろうけど。
「それってさ、三角さんと組んでるやつ?」
目だけ海鈴の方に向けて軽く突いてみると、目を開いて驚いた表情の後に、少し嬉しそうな受け答えが返ってきた。
「おっと、ご存知でしたか。」
「うちのバンドのSNS担当大臣が三角さんのファンでさ、そいつから送られてきた記事を見てたら海鈴に似てる人がいたから。正直ちょっとびっくりした。」
「へぇ、立希さんも驚いたりするんですね」
「驚かない人間なんていないでしょ...。三角さんに誘われたの?そのバンド。」
「...。まあ、そんなところ、ですかね。」
言葉に少し詰まったような、海鈴にしては歯切れの悪い回答だった。何を詰まるところがあるんだろうか。
「だから最近三角さんと仲良くなってたんだ。」
「...そういうことです。でも三角さんのものになったというわけじゃありませんから。ヤキモチはほどほどに。」
「意味わかんないんだけど。」
少し複雑そうな表情を一瞬見せた後に、いつものよくわからないボケ(?)を口にして今度こそ戻っていった。今度機会があれば、三角さんに活動の時の海鈴の様子を聞いてみてもいいかも。三角さんと話せれば、だけど。
そんなことを考えていたら予鈴が鳴って、次の授業の準備で教室が慌ただしくなる。
準備をしながら、いつも通りに見える海鈴にどこか安心して、少しだけ身体が軽くなった気がした。
…
放課後、すぐにRiNGに向かった。
練習まで少し空きがあるし、スタジオが空いていたら個人練を入れたかった。
「あれ、立希ちゃん。」
まだ暗くなりきる前、私がRiNGについたすぐ後にそよの姿が見えた。
「そよ。おはよ、だいぶ早いけど、どうしたの。」
「そういう立希ちゃんこそ。」
「私はバンド練の前に個人練入ろうと思って。」
「そう..。ねえ、私も一緒に入っていい?」
「別にいいけど。」
何があったかは知らないけれど、練習することは悪いことじゃない。そよなら邪魔されることもないだろうし、2人で個人練に入ることにした。
受付でスタジオに空きがあることを確認して早速部屋に入る。そよと2人、準備をしているとそよが口を開いた。
「見たよね。昨日の愛音ちゃんの。」
「見たよ。祥子と睦のことでしょ?仮面しててもバレバレ。」
「燈ちゃんも見たのかな。」
「見てる、と思う。さすがに燈も気づくと思うけど…。」
「そうだよね。大丈夫かな、燈ちゃん。」
「だめでも、私が支えるから。それに、もうMyGO!!!!!があるから。きっと、大丈夫。」
燈はAve Mujicaのことを知ってどう思っているんだろうか。
どう思っていたとしても、私がすることは変わらない。
忘れられなくても過去は過去。一生バンドやるって、決めたから。
そう、と言うように視線をすっと下げるそよが続ける。
「でも、いきなりあんな規模でライブだなんて、すごいよね。」
「うん。やっぱり三角さんがいるからなのかな。会場の規模も演出も、プロと遜色なかったっていうか、なんていうか。」
「三角さん...?立希ちゃん、三角初華と面識があるの?」
そよがベースをチューニングする音が響く。
そっか、三角さんって言わないほうがいいか...。
「あ、えーと...。まあ、実は。三角さん、高校花咲川で、同じクラスなんだよね。」
「そうなんだ、へぇ...。知らなかった。」
「誰にも言わないでよ。特に愛音。これ知ったらあいつ絶対うるさくなる。」
「わかってる。サインもらってきてよー!とか、言いそうだしね。」
愛音にバレたら面倒なことになるのが目に見える。そよもそれには同意してくれたらしい。ちょっと呆れたような表情で、愛音の真似をしながら返事をしてくれた。
「そういうこと。じゃ、始めるから。」
イヤホンをして、バスドラをリズムに合わせて踏んで身体を慣らしていく。
いつか肩を並べられる日が、来るのかもしれない。でも今は燈のために、切り替えてがんばらなきゃ。
書いた後のめも
・どのくらい初華の個人情報は割れているのだろうか。場合によっては愛音も、初華が通ってる学校くらいは知ってるかも。
・海鈴はどれくらいCRYCHICのことを知っているのだろうか。多分その辺りを祥子から全部知らされた上でave mujicaに入っている気がするんだよな。
・会話を書くのは楽しいけど、心情を考えるのは無理。燈の気持ちとか全然考えられない…。
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