映画『法廷遊戯』 | 思わず止めに入った杉咲花の狂気
全然興味なかったのですが、たまたまこちらの記事を拝見して
面白そうだなと思って見てみました。
(勝手にご紹介して申し訳ありません!)
物語は大学時代から始まり、大学卒業後の現在と、高校時代、小学校時代と様々な回想を挟みつつ、事件の真相が明らかになっていくミステリーです。
あらすじはこちら↓
いつも通り前情報なしで見たので、北村匠海が早々に死んでしまった時はめちゃくちゃびっくりしました。
え!もう死んじゃうの?!北村くん?!!
死者・結城(北村匠海)が仕掛けた最後のゲームだった。
とか、
〈弁護士〉〈被告人〉〈死者〉になった3人の究極の決断
とか、あらすじやポスターにでかでか書いてありましたけどね。
そこまで書いててもわかってない奴がいるんです。ちゃんと見てないんですよ。怖いですよね。
冒頭、ロースクールの学生たちが大学の構内にある洞窟で実施されているが「無辜(むこ)ゲーム」と呼ばれる模擬裁判をしているんですけど、これがとんでもなく雰囲気のある洞窟で、しかも蝋燭灯してやってます。
「無辜(むこ)ゲーム」は、被害を受けた者が告訴者となって、犯人を指定。証言や証拠をもとに、審判者が有罪だと判断すれば犯人が、立証不十分で無罪と判断すれば告訴者が罰を受けるというもの。
有罪と判断された学生が半狂乱になっていて「なになに、このゲームで負けるとそんなやばいの?」とドン引き。ゲームの存在を知っても問題なしと判断した教授にもドン引き。
そもそも、大学の構内に洞窟あるか?
あったとして立ち入り禁止じゃないか?
蝋燭持ってくか?普通、懐中電灯じゃない?
息白い、寒そう、何でこんなとこで?
とか思っちゃダメです。
雰囲気ありすぎて逆に入り込めない感じはありましたけど、後半は本物の裁判が続くので、そことの対比を出すためだと思って乗り切るところです。
その後、児童養護施設の施設長を刺したという永瀬廉の過去を暴くビラが自習室にばら撒かれます。
で、何でかこの時、学生たちが「ドンドンチャ!」と机を叩いてリズムを取るのです。
……何で?
We Will We Will Rock You !!のリズム。
We Will We Will Rock You !!と夫と声が揃いました。
何で突然「We Will Rock You 」だったのかは知りません。意味があるとは思いますが、突然だったのでただただ驚きました。
杉咲花が住んでる場所の治安が悪すぎなのと建物があまりにひどいことにもびっくりしますが、この辺まで乗り越えられたら大丈夫!
「んんん……???」という演出はここまでです。
※ネタバレになってしまう部分もあると思いますので、まだご覧になってない方は是非ご覧いただいた後の合流でお願いします!
何を考えているのかよくわからない3人(永瀬廉くん、杉咲花ちゃん、北村匠海くん)ですが、過去が明らかになっていくにつれてどんな境遇だったのか、どんな気持ちでここまで過ごしてきたのか、北村匠海の事件の真相と併せて少しずつ明らかになっていきます。
で、何がすごいかって、接見中の杉咲花ですよ。
北村匠海の事件の真相とその目的を永瀬廉が杉咲花に話した時の雰囲気が1人桁違い。
「やり直せるって言った!」
「何もかも奪ったのは大人たちなのに!」
「やり直せないところまで追いつめたくせに!」
これまで静かにそこにいた杉咲花の突然のギアチェンジにビビりまくりの私。
取り乱す杉咲花が怖すぎて、
花ちゃん!花ちゃん!
落ち着いてーーーーーーーー!!!!!!
と思わずテレビに向かって叫びました。(マジです)
重い過去を持ちながらもクールさを崩さなかった彼女の、突然の感情爆発。
痛みに麻痺していたわけではなく、永瀬廉が近くにいてくれていることでなんとか自分を保っていられたんだと理解できました。
好きとか愛してるとかではなく、永瀬廉が「生きる理由」だったという彼女。
永瀬廉を助けるためなら人を殺すことも厭わないほどの彼女。
その彼女の狂気を、杉咲花がスレスレのところで演じていました。
たぶん、あと少しでも過剰になったら浮きすぎてしまうというギリギリのライン。
ただの「怪演」ではなく、いかに背負わされた過去を恨んでいるのか、永瀬廉を必要としているのか、永瀬廉以外のことをどうでもいいと考えているのかが伝わってくる絶妙なラインだったと思います。
永瀬廉はとっくに前を向いていたけれど、彼女は永瀬廉の近くにいたくて、前を向いているフリをしていただけだったのかもしれません。
北村匠海もね、すごいですよね。全てを知りながら、永瀬廉と仲良くしてたわけじゃないですか。
いったい、どんな気持ちで彼のそばにいたんだろうと思います。
ただひたすらに憎しみを抱えていたと考えるのが普通ですが、それだけじゃないように見えました。
永瀬廉の真面目さ、穏やかさ、ある種の純情さのようなものに触れ、北村匠海も彼のことを信頼していた。
だからこそ、永瀬廉に日記を渡すことが「保険」になると自信を持って杉咲花に言えたんだと思います。
自分が殺されてしまう最悪の場合も、永瀬廉が自身の罪を認めてくれるとわかっていた。
北村匠海の父親も北村匠海も既に死んでしまい、被害者はもうこの世にいない。それでも全てを知った永瀬廉は罪を償うとわかっていた。確信していた。
それって相手を信頼してないと絶対できないことです。
あの、階段を笑いながらのぼっていった2人の時間に嘘はなく、あの瞬間2人は確かに友人だったと信じたい。
いつか永瀬廉が罪を償ったら、すぐにじゃなくていい、ずっとずっと先でも、いつか、友人として墓参りをすることを北村匠海が許してくれるといいなと思ったラストシーンでした。
おしまい。
永瀬廉くんのことを我が家では今だに「りょーちん」(『おかえりモネ』での役名)と呼んでます。