名を呉(ウー)さん
「中華風」が好きだ。それは、フィクションで安易に描かれがちな中国像と言って良いかもしれない。例えばチャイナ服、中華料理、ラーメンどんぶりの模様、「~アル」の語尾、紹興酒、三つ編み…… 枚挙にいとまがないこれらの、ともすれば「ステレオタイプを助長する!」と思いかねないようなこれらが、私はたいそう好きだ。
私服をチャイナ服で占めてみたり、手料理のレパートリーに中華を増やしてみたり、漢詩を読んでみるに飽き足らず、創作の舞台を「中華風」の国に設定したりする。手元に本がある人は【慢慢的】の章を参照されるといいかと思う。
それでも、私の皮膚の下には行き場を失った中華風愛好がくすぶり続けている。先日、遠出をしてチャイナ服だけ売るイベントに出向いて消費した愛好心がまた蓄積し、飽和しつつあるのだ。こういうとき、形あるものに還元するのといずれ限界が来るのは分かっていて、ならばどうするか。もちろん、実体のないものに注ぐのだ。そう、以下「無い話」である。
中華風のガス抜きのためにまず、中華風架空人物のひな型を作った。私のチャイナ・USBはいかにも胡散臭い容貌の、痩せた片言の男性の姿をしている。遠目からは分からないけど、近くに行くとデカくて怖い。
骨組みができるとあとは簡単で、あっという間に肉付けがなされていく。詳細が決まっていくごとに募る良くない自覚。見える。これは、架空の中の架空。自分が作った人間の夢女子になる未来。
ただこれ、非常に健康にいい。私は夜、特に眠る前に不安が募るタイプで寝る前にはラジオや音楽を聴かないと眠れないほどだ。実はここ数週は架空チャイナ・USBの容量を埋めることに微睡みを費やしており、そのまま寝落ちる日々が続いている。これが本当に健康にいい。
例えば、朝7時に起きるとする。7時間の睡眠が最も目覚めが良い私が、7時間の睡眠をとるためには、飲酒していない場合、前日夜11時には布団に入っている必要がある。寝付くまでに余裕を持って1時間は確保する必要があった。
しかし、のっぽチャイナ男性の細部を夢想しつつ寝落ちる生活ならば、どうやら30分もすれば入眠していることが分かっている。これは本当に健康にいい。あと、うまいこと行けば架空チャイナ男性の夢を見ることもできるかもしれない。
それでは、私の「中華風」概念の完成に期待してほしい。