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民間企業40社のアクセシビリティ方針を調査してみた
こんにちは。YUIDEAでアートディレクターをしているTottiです。
前回、ウェブアクセシビリティの基礎知識についてまとめてみました。
今回は、ウェブアクセシビリティに取り組むにあたって必要なアクセシビリティ方針について、民間40社を調査してみたのでご紹介したいと思います。
アクセシビリティ方針とは
ウェブアクセシビリティ基盤委員会では、ウェブアクセシビリティを高めるプロセスとして、以下の流れでPDCAを回し、継続的に取り組んでいくことを推奨しています。
![図:ウェブアクセシビリティを高めるためのPDCAサイクル](https://assets.st-note.com/img/1712210318201-hKjxjX2l5a.jpg?width=1200)
ウェブアクセシビリティ方針の策定と公開
アクセシブルなウェブコンテンツの制作
試験の実施と結果の公開
で、この方針を策定するにあたって記載すべき事項については次のように推奨されています。
1.対象範囲
ウェブサイト全体なのか、一部なのか、などドメインを明示して対象とする範囲を具体的に示す。全体を対応することが困難な場合は、当面の目標を併記する。
例)対象範囲:株式会社○○○のウェブサイト(http://www.example.co.jp/)。
ただし、2016年度は△△コーナー(http://www.example.co.jp/example/以下)のみを対象とし、それ以外のコンテンツは2017年度以降の対応とします。
2.(目標とする)適合レベル及び対応度
三つの適合レベル(レベルA、レベルAA、レベルAAA)のうち、どの適合レベルを目標とするかを定めて明記する。適合の表明が困難な場合は、「ウェブコンテンツの JIS X 8341-3:2016 対応度表記ガイドライン」で定められている対応度(準拠、一部準拠、配慮)を記載する。
例)JIS X 8341-3:2016 の適合レベルAAに準拠
3.その他、明記するとよい事項
目標を達成する期限、例外事項(対象外となるコンテンツがある場合にその範囲が特定できるように明記するなど)、追加する達成基準、担当部署名、現時点で把握している問題点及びその対応に関する考え方、試験を実施した後であれば、試験結果を表示しているページへのリンクなど。
という感じで、いつまでに、どこを、どれくらい対応させるのか、という目標と、今の課題はどこか、試験結果はどうだったのか、といった具体的な結果の記載が推奨されています。
民間企業40社を調査してみました
という、方針に記載が推奨されている事項をふまえて民間企業40社のアクセシビリティ方針がどのように記載されているのかまとめてみました。(2024年3月末現在)
1.対象範囲と対象外の範囲
![対象範囲のグラフ:ウェブサイト全体を対象としている10社、対象外ページの記載がある29社 、記載なし:1社](https://assets.st-note.com/img/1712130932103-qIA44790Su.jpg?width=1200)
ここは各企業非常にさまざまな記載方法でしたが、70%を超える企業が対象外のページの記載があり、その記載として一番多かったのは、Youtubeやgoogleマップといった外部サービスを利用しているページ、PDFファイルなど修正が難しいコンテンツ、SNSなどの埋め込みでした。
逆に対象外の記載がなかった企業はこういった外部サービスを利用していないのかしら、、というのが気になるところです。
2.目標とする適合レベル及び対応度
![目標とするレベル及び対応度のグラフ:「WCAG2.0」 または 「JIS X 8341-3:2016」のレベルAAに準拠:25社、「WCAG2.0」 または 「JIS X 8341-3:2016」のレベルAに準拠:9社、 「JIS X 8341-3:2010」のレベルAAに準拠:1社、「WCAG2.1」のレベルAAに準拠:1社 、その他:4社](https://assets.st-note.com/img/1712130985088-dsIW62ncQB.jpg?width=1200)
一番多かったのが、「WCAG2.0」 または 「JIS X 8341-3:2016」のレベルAAに準拠、でした。ただ、これはあくまで目標であって、その達成に向けた具体的な対応予定や試験結果をすべての企業が公開しているわけではなく、とりあえず目標を掲げている状態の企業もありました。それが次の項目です。
3.試験結果と対応度の表記
![試験結果の公開のグラフ:試験結果の公開している25社、試験結果の公開なし11社](https://assets.st-note.com/img/1712132287656-sOZApsFunR.jpg?width=1200)
目標とするレベル及び対応度を記載している36社中、試験結果を公開しているのは25社でした。そして、試験結果を公開していない11社の中で達成に向けた具体的な対応予定(2024年度中にどのページについてレベルAAの準拠をめざす、など)を記載しているのは1社のみでした。
つまり、40社のなかで1/4は目標とするレベルや対応度は掲げているものの、具体的取り組み予定や試験結果の公開まではまだできていない状態ということです。
まとめ
アクセシビリティ方針や試験結果の記載については、法的に決まりがあるわけでもなくあくまで推奨されているものなので、記載の仕方については各企業でさまざまでした。
中には、達成度をレベルAAに準拠していると明記しながらも試験結果の公開をしていない企業もあったりで、、、民間企業はまだまだ過渡期といった印象です。
その中でも目を引いたのが花王さん。
独自のウェブアクセシビリティガイドラインを策定しており、その中でこの取り組みで何を目指すのかといった考え方から対象範囲やレベル、現在の状況や達成度、目標達成までのスケジュールなど非常に分かりやすく具体的に記載しています。
ページの更新頻度も高く、真摯にこの取り組みを行っていることが伝わってきました。
また、今回ウェブアクセシビリティ方針を調査する際、「アクセシビリティ方針」「アクセシビリティポリシー」などでググってみましたが、やはり出てくるのは行政機関のサイトがほとんどで民間企業は思ったよりヒットしませんでした。(2024年3月末)
4月の改正法に合わせてこれからサイトで公開する企業がもっと増えてくるかもしれません。また定期的に調査してみたいと思います。
(参考)
ウェブアクセシビリティ基盤委員会