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掌編小説 ショートショート

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スケッチのような朴訥さとスローモーショニズムによる幻想体験の文学群
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#文学

Midnight Accidentally    【掌編小説】

Midnight Accidentally 【掌編小説】

星座も描けぬ深更にがっかりしたという人があった 
田舎都会うんぬんでもなく また雲が星を蔽してしまったとかそういうのではなく 冥がりがすっかりとという風にして 一箇見えるのもあったが かすかに輝いているだけのことであって しばらくして飛行機が旋ってく界に見比べてみれば 本統にかすかであった 臍のように深くなっていた 飛行機のライトは四つ五つあって 兎に角それでも墜落してしまいそうに たったひとつだ

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鳶は旋りて 【掌編小説】

鳶は旋りて 【掌編小説】

しかしながら、戦場を走り抜ける兵士たちを横切る弾幕の嵐は土くれにあたり、塹壕の手前で堰き止められ鈍い音をさせながら、あるいは金属の甲高い音の所為で負傷者の疵口に障る。血が垂れると自分の肌から滴っていく感覚が分かる。やがてぽたぽたと地面に落ちてったとき、すでに溜まりができていて水面にふれると正確無比な王冠状を模型して、幾らか王冠の先が自分に還りたがっている。疵口は熱をもち、まるで炎が燃えているみたい

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