カクヨム攻略4~評価頻度・前編~
『作者は書き始めた作品を完結させるべきか?』
この話題は定期的に議題として提起される。
個人的な意見を言えば、完結は作者の力になると思っている。
物語を上手く畳めれば、読者に強烈な印象を与える事が可能だ。
私も道中はサッパリ忘れているのに「あのラストマジで良かったよな…」みたいな作品は結構ある。
素晴らしいラストを書けば、作品のファンが生まれる。
これは長い目で見れば、素晴らしいメリットだ。
また、ラストがキッチリ締まっている作品のメリットとして「文字付きレビューが貰いやすい」という点もある。
これもジワジワと数字に反映されるので、作品に取っては大きなメリットだろう。
ただ「ランキングバトル」を大きく左右するか?
と問われれば、話は変わる。
ここで「完結ブースト」の話になる。
よく言われるのは「小説家になろうには完結ブーストがあるが、カクヨムには無い」という話だ。
実際私もそう思っていた。
だが今回調べてみると、カクヨムにも完結ブーストはあった。
あるのだが⋯⋯『ポイント獲得にはほとんど寄与しない』という事もわかった。
なんのこっちゃと思われるかも知れない。
なのでこれから解説します。
小説家になろうでは、完結ブーストによってランキングを駆け上がる作品がある。
わかりにくいかも知れないが、昨今のなろうランキング上位は、完結ブーストでひしめき合っていると言ってもいい。
それは短編の盛り上がりだ。
短編は一話で完結し、ポイントを稼ぐわけだから、これらは全て完結ブーストと言える。
小説家になろうにおいて完結ブーストをするパターンを紹介しよう。
・作品を完結させる。
・トップページの「完結済みの連載作品」に表示される。短編なら、「新着の短編小説」に表示される。
・トップページにあるうちに読者のアクセスを稼ぎ、評価してもらう。
・評価ポイントがそれなりに稼げればランキングに載り、トップページから消えても評価される。
・ランキング上位へ
これが完結ブーストの仕組みだ。
この「トップページにあるうちに一定の評価をしてもらう」がなければ、その作品は沈んでいく。
ちなみにカクヨムアプリだと、なんとこの「完結した小説」の表示がない。
ブラウザ版のトップページ、そのかなり下の方に四作品ほどチョロッと紹介されているだけだ。
小説家になろうの完結、短編がトップページにそれぞれ20作品紹介されているのに比べると、無いも同然の扱いである。
この違いこそが、小説家になろうには完結ブーストがあり、カクヨムには無い一番の理由だ⋯⋯と、思っていた。
いや、これ自体は大きな要因だと今も思っている。
ただ、カクヨムで完結ブーストが起こらない大きな要因、そしてこれは連載中の作品にも関わってくる要素。
それはカクヨムの「評価頻度40%の壁」だ。
さて、ではこの「評価頻度」とは何か。
それは『ブックマークに対して、どの程度評価して貰ったか?』だ。
もちろん『評価だけしてブックマークしない』というケースもあるだろうが、可視化できないのでざっくりした計算だ。
出し方は
評価人数÷ブックマークで出た数字に100を掛ければ、そのまま%となる。
ブックマーク5000で評価人数が1000人なら
1000÷5000×100=20(%)という事になる。
小説家になろうとカクヨムの違いとして、『ひとりが入れられるポイントが違う』というものがある。
小説家になろうは5点(ポイント的には10点)、カクヨムでは3点が満点だ。
このなろうのポイント的には10点というのは、以前は文章を5点、内容を5点でそれぞれ評価していた名残だ。
ただブックマークが2点、評価が最大10点なので、カクヨム式に見ればフォロー1に対して★5入れられる、という感じになる。
このため小説家になろうでは、『できるだけ評価を入れて貰う』というのが相対的に強くなる。
そのため評価頻度を上げれば上げるほど、強い作品となりやすい。
例えばブックマーク500の作品A、Bが二つ、評価の平均はそれぞれ4.5だとする。
ただ片方は評価頻度が25%、もう一方が40%だった場合のポイントの差はこうなる。
Aブックマーク500
評価頻度25%なので、評価する人は125人で平均4.5pt
これをなろうのポイントで表示すると
500×2+125×9(4.5は10点満点に直すと9)=2125
Aのポイントはなろうだと2125ptとなる。
Bは評価頻度40%なので、評価するのは200人
500×2+200×9=2800
なんとポイント差は675。
同じくらいブックマークされて、同じくらい『面白い』と感じてもらえる平均点でも、大きく順位は離れてしまうだろう。
では、この計算をそのままカクヨムで考えてみる。
カクヨムは最大★3なので、なろうの4.5は2.7(満点の九掛け)になる。
A
500+125×2.7=837.5
B
500+200×2.7=1040
差は202.5。
もちろんこれ自体は大きな差だが、なろうほど評価偏重ではない、といえる。
そしてここまで解説した評価頻度を上げる方法として強力なのが、「作品を完結させる」という事なのだ。
「完結を機に評価してください!」
とお願いしたり、またお願いしなくても素晴らしいラストであれば読者は評価してくれやすい。
これが完結ブーストを構成する一要因なのだ。
そして、ここからが小説家になろうとカクヨムの違いが出る面白いポイントになってくる。
では、まず小説家になろうの「完結ブースト」を実際に見てみよう。
ここから提示するデータは
「なろうファンDB」さんから引用しています。
なろうファンDBさんはこちら↓
上記は拙作『【簡易版】俺は何度でもお前を追放する以下略』のデータだ。
評価頻度は驚きの84.7%。
とはいえ完結してから時間も経っているので、もしかしたら多少ブックマークが剥がれているかも知れない。
こちらは今いちばん売れているラノベ、駄犬先生の『誰が勇者を殺したか』のなろう版データだ。
完結時のブックマークは2だったと言われている、完結ブーストによっていちばん出世した作品と言えるだろう。
評価頻度は62.96%と、こちらも高い。
こちらは俺追の完全版。
こちらも59.66%と高い。
こちらは名作サイレント・ウィッチのデータだ。
実はサイレント・ウィッチもまた、完結を機にランキングを駆け上がった作品だ。
ただ、評価頻度はそれほど高くない。
そしてこれまで上げた作品は、文字数順に並んでいる。
評価依頼、いわゆる「クレクレ」の影響もあるだろうが、作品が長くなればなるほど途中でブックマークする人が多くなる=結果として評価頻度が相対的に下がる、と言えそうだ。
簡単に言えば、一気読みされやすいほど評価頻度が上がりやすい、となる。
ちなみに、本日ハイファンタジー上位陣の評価頻度は19%-33%の間だった。
ではここで、いよいよ短編の評価頻度を見てみよう。
本日日間総合1位『転生悪女は推しのため一肌脱ぐことにした。(まえばる蒔乃先生)』のデータがこちら。
評価頻度は驚きの214%。
高過ぎワロタなのだ。
つまり、小説家になろうの
「ひとりあたりの評価が強力に作用する」
「文字数が少ないほど評価頻度が上がる」
この二つが、小説家になろうから長編を駆逐しつつある状況を生み出している、と言える。
世はまさに完結ブースト時代、という感じなのだ。
ではこれを踏まえ、次回はカクヨムの話をしていこう。
続く。
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