Web小説理想の一話とは?

※最初に言いますが、もちろん主観タップリです。

 小説は冒頭が大事だと言われる。
 冒頭で読者の心を掴めば、その後も読んで貰える可能性は高い。

 ただ今回、理想なんて偉そうな単語を使用したが、もちろん正解なんてない。
 ハッキリ言えば、万人が納得する出だしなんてありえない。
 だからこれは、Web小説の冒頭を書く際に気をつけた方が良いかもね? 程度の話だ。

 さて。

 理想があれば、その逆もある。
 冒頭として相応しくないもの、だ。

 『Web小説の冒頭、そのダメな例』として頻繁に上げられるのが「プロローグスタート」だろう。
 設定を長々と語り、読者を置いてけぼりにする、みたいな奴。
 理由は割愛。
 もちろん、書きたい人は書いてもいい。
 
「知らない登場人物同士の掛け合い」も個人的にはあまり好きな出だしではない。

 例えばこんな感じ。
 ↓↓↓

 長い旅を経て、カムイたちは遂に魔王城へと乗り込んだ。
 今彼らの眼前にいる敵は、魔王軍最強と評判の暗黒騎士だ。

「いやー、ここまでついに来ちゃいましたねー!」

 転生者のカムイは、暗黒騎士を前にしても平然としていた。

「ちょ、ちょっとカムイ! 緩い緩い! 相手は最強の騎士なんだよ!?」 
「えーでもさぁミーナ。アイツ黒いから強そうに見えるだけじゃない?」
「色で相手の強さ測るなぁ! もっとこう、雰囲気とか含めて色々あるでしょうが!」
「わ、剣まで黒いよ。でも逆に切れ味悪そう」
「人の話聞いてた!?」

~~~~~
ここまで


 かなり雑に書いたが、こういうスタートは意外と多い。
 作者の頭の中では、キャラ毎の設定が出来ているのですっと入ってくるのかも知れないが、私はちょっと苦手だ。

 あと、小説の書き方などを解説するサイトなどで推奨される「死体を転がす」、いわゆる「ホットスタート」。

 個人的には、これも「Web小説の冒頭としては不適切」だと思っている。


 これは実例を見て貰った方がいいと思うので、私自身の全然伸びなかった作品から引用。

魔力ゼロのポンコツ騎士、実は相反する力の天才 ~その力は違法~の一話より引用

https://ncode.syosetu.com/n3209fd/1/

↓↓↓

 王家専用の狩場は、春を迎えたばかりだ。
 小高い丘に広がる草原。
 そこにいくつか小さな森や、岩場が点在している。
 獲物となる動物の隠れ場としてはもちろんのこと、美しくも単純な風景にならないようにと、彩りを添えるかのようだ。

 長い冬に耐え、新しい生命の芽生えを感じさせるその場所で、三人の騎士が死んでいる。
 体を上下に二分するように、上半身が焦げている。
 身に付けている金属製の鎧は、高温で熱されたためか未だに赤みを帯び、すでに焦げた三人をいたぶるかのように、耳障りな音を立てて焦がし続ける。

 フォーテとマチルダは、肉の焼ける臭いのする三つの死体を間に挟んで、黒装束に身を包んだ男と対峙していた。


~~~
ここまで。

 これは小説を書き始めて半年後くらいの作品なので、今見返すと「あー! 改稿してえ!」って感じだが、まあそれはともかく。

 これはもうブラバされて当然だ。
 だが、こういうスタートってのは書きがちなのだ(未だによくやる)。

 読者は(もちろん全員に当てはまったりしないよ?)こんな冒頭を読んだところで
「何故騎士は死んでいるんだ!」
「何で騎士たちの上半身は焦げてるんだ!」
「二人はどんな人で、黒装束の男の正体は何なんだ!」

 とはならないのだ。

 まず我々が覚悟しなければならないのは
「Web小説の冒頭なんて、読者はほとんど読み飛ばす」
 という事実だ。

 十中八九、流し読みされると見て間違いないと思う。
 なので流し読みでもサラッと理解できる

「お前を追放する!」
とか
「お前との婚約を解消する!」

 みたいなスタートが強力なのだ。
 だからこそ、冒頭は
『流し読みされても意味が解る文章』
 を心掛けるべきなのだ。

 では書いた事はないが、今流行りの悪役転生の冒頭をサラッと書いてみよう。
 ちゃんと読んだ事ないけどな!

↓↓↓↓↓↓

 一日の自由時間は五時間。
 それがブラック企業勤めだった俺、柴田勇気の日常だった。
 なんとこの五時間には、睡眠に充てる三時間も含まている。
 じゃあゲーム好きの俺が、プレイ時間を捻出するには?

 そうだね! 睡眠時間を削る事だね!

 そんな日々を過ごしていたら、ゲームの電源を入れたタイミングで、俺自身の電源が切れたみたいだ。
 気がついたら、全く違う姿になっていた。
 そう、鏡に映るこの姿は──。

「よ、よりによって、れ、レビン=ウォルデンじゃねぇか!」

 俺がハマってたゲーム『バルサ戦記』で、『序盤にやられる、限界レベル5の雑魚中の雑魚』。

 悪役貴族レビンになってしまっていた。

 

~~~~
ここまで。


 この冒頭は「読み飛ばされる事が前提」で書かれている。
 どうせ悪役転生好きが読みに来てるだろうし、そういう人ならここだけ抑えといて、みたいな情報しか書いてない。
 この冒頭で読者に理解して欲しい部分は
「ゲーム好きの不遇な現代人が、雑魚に転生した」だけだ。

 それだけ。
 なので単語を拾えば、それだけは理解できる(と思う)。

 電源を入れたら電源が切れた、みたいな感じの文章も入れたが、別に読まなくていい。
 なんか軽い主人公、みたいな雰囲気さえ感じ取って貰えれば充分だ。

 こんな軽い感じで、頭をそんなに使わなくても(たぶん)スルスルと読める文章で構成された冒頭。

 これがWeb小説においては大事なんじゃないかな?
 と思います。

 繰り返しますが、個人の感想って奴です。

 その理由付けは色々できますが、今回は割愛。
 大事なのは「せっかく頑張って色々書いたって読者は読み飛ばすので、読み飛ばされても大丈夫な文章を書こう!」という心構えと、それを実践する事。
 私はこれを「情報の置き方」と呼んでいます。

 情報の置き方が適切なら、スルスルと読者は読み進め、いつの間にかのめり込む。
 逆に言えば「読み飛ばせない、しっかり読まないと理解できない小説はダルい」です。

 あまりいい表現ではないですが、ホストの初回低料金とか、ソシャゲのサービスパックとか。
 最初の課金に対するハードルを下げて、徐々にのめり込ませていく、みたいな感覚というか。

 そんな冒頭が書ければ、たぶん読まれると思います。

 

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