宗教2世の私が3世を生んだ理由 続き 1
「母の信仰、娘の選択──愛と信仰に揺れる家族の未来とは?」
母から受け継いだ重い信仰と、その中で自分自身の道を見つけようとする光子。彼女は家族の絆を守りながら、新しい未来を切り開けるのか。揺れる心と向き合いながら、一歩を踏み出した先に待つものは──?
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光子は幼い頃から、教会と共に成長してきた。両親は熱心な信者で、彼女の人生は常に信仰に寄り添っていた。教会での教義を学び、勉学にも励む日々は、光子にとって唯一の安らぎだった。
辰彦兄が高校受験期に入ると、家庭の空気は緊張感に包まれた。母は辰彦の合格を願い、日夜神に祈り続けていたが、結果は無情にも失敗だった。
「辰彦がどうか…第一志望の高校に受かりますように…」
祈る母の姿を見て、光子は幼心に不安を覚えた。神に頼る母の姿が、彼女にとっては慰めではなく、どこか冷たいものに感じられた。
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辰彦が大学受験に挑むと、家の緊張はさらに増した。父は苛立ちを募らせ、辰彦に厳しく接するようになった。
「なぜできないんだ!お前はもっと努力しろ!」
怒号が響き渡る中、光子は静かに兄を見守るしかなかった。辰彦もまた、家族に対するプレッシャーと失望の中で、次第に疲弊していった。
ある日、光子が家政科の裁縫の成績で学年1位を取ったと報告すると、母はかすかな微笑みを見せた。
「よかったね、光子。でも…」
その声はどこか空虚で、家族全体に広がる沈んだ雰囲気を消し去ることはできなかった。
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辰彦が再び大学に落ちたその日、家に戻った光子は異変を感じた。庭を見下ろすと、兄がそこにいないことに気づく。
「辰彦お兄ちゃん…?」
急いで部屋に向かうと、目に飛び込んできたのは、首を吊った辰彦の姿だった。足元には、受験番号に大きくバツがつけられた紙が転がっていた。彼の苦しみが、この最後の瞬間まで積み重なっていたことを光子は痛感した。
「兄ちゃん…なんで…生きてさえいればよかったのに…!」
母は泣き崩れ、父は沈黙したまま、家族の崩壊がゆっくりと始まっていった。
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辰彦の死をきっかけに、母はさらに宗教活動に没頭するようになった。光子は、母のその姿に恐怖を感じながらも、自分もまた宗教に縛られる道を歩み続けることを避けられなかった。
「光子、あなたも奉仕活動に行くのよ。神様のおかげで、私たちは生かされているんだから。」
母の言葉は、祈りに見せかけた無言の命令だった。
「…わかった。」
光子は心の中で静かに反発していたが、兄の死後、家族との絆を繋ぎ止める手段はそれしかないように思えた。家庭内の空気は日に日に冷たくなり、父は浮気を重ね、家に帰ることも少なくなった。
母はそのたびに感情を爆発させ、光子の存在は家族の中で次第に薄れていった。
家庭に暗い影が、落ちていた…