『ピュア(小野美由紀/早川書房)』、感想。
男女が逆転した未来で、現代の性差別の矛盾を暴く。
けれど、それだけでは、”ただの”社会批評であって、小説足りえない。
そこには、単純な皮肉ではないものがありました。
女に生まれたことを、現実の西暦2000年の男たちより、よほど喜び愉しみながら、しかし、それでいて、その驕りは肉体の強さでしかなく、また、性行動(※つまり、”喰い殺す”、こと、喰い殺されること)を、本能を理由に正当化する点では、愚かなかつての男と同等であり、なおかつ、結局は、出産は女の社会的役割のままなのです。
そして、性行動は、衝動であるだけでなく、出産まで含めて義務化されている、という点では、昔より悪くなってしまっている。
主人公は、その縛めを振りほどこうとしてあがき、しかし、本能にはあらがえず、”母親”という望まぬ存在へ、そして、迫りくる者たちにも、その属性を見出して、話は終わります。
自分の意思をピュアに貫こうとして、結局、本能と、社会と、同じ女たちと、母親とに裏切られる。
性を操縦する意思は個人のものであっても、性を規定する肉体は、社会に、世界に囚われたまま。
そして、そのことは、きっと、(※”喰われる”だけの役割しかない!)男も同じである。
このSFは、そういう”視点”で描かれた物語だと、自分は、そう感じました。
終わり。
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