#172 消齢化社会
最近知って、個人的にとても腑に落ちた「消齢化社会」という言葉をご紹介します。
これは意識や好み、価値観などについて、年代や年齢による違いが小さくなってきている社会現象のことで、生活総合研究所が作った言葉です。
この現象を顕著に表しているのが、木村拓哉氏が出演するマクドナルドのCMではないでしょうか。中堅ポジションの木村氏が自分より若い世代とも、逆に役員クラスの年上世代とも、マクドナルドでならつながることができることをアピールしています。現在一般企業の役員クラスの年配の方でもファストフードで食事をすることに抵抗を感じないのではないでしょうか。これもまさに「消齢化」です。木村氏がひと昔前の50歳のイメージとかけ離れて若く感じられるのも「消齢化」の一つの特徴と言えるかもしれません。
さらに「消齢化」の例として、テレビ番組の比較をしてみたいと思います。ジェネレーションギャップをテーマにしたテレビ番組は過去に数多くありました。その中でも、80年代後半から90年代にかけて放送されていたTV番組「クイズ年の差なんて」というクイズ番組をご存知でしょうか。
この番組、当時私もヤングチーム側として、見て楽しんでいましたが、アダルトチームとのジェネレーションギャップは確かにあったと思います。この「クイズ年の差なんて」と比較する番組として、最近放送している「ハマダ歌謡祭」を挙げてみたいと思います。この番組は、年の差ヒット曲バトルと銘打ち、ベテラン世代とルーキー世代に分かれた2チームが、それぞれの世代のヒット曲にちなんだクイズに答えて競い合う内容です。
実は「ハマダ歌謡祭」を見ると、私はベテランとルーキーの境界線に少々違和感を感じてしまいます。その理由は2つあります。1つ目は、20代後半から30代前半の芸能人もベテラン世代に区分されてしまっていること。そして、もう1つは、若者文化に全くついていけないような高齢者の出演者がいないということです。わかりやすく図にしてみました。
ちょうどこの2つのTV番組を「その昔…」と「今現在」に当てはめて比較してみてください。「消齢化」が進んでいるのがわかります。またさらに10年、20年経つと70代以上も緑色ゾーンに入り、「消齢化」が進むイメージができるのではないでしょうか。
消齢化現象が起きている理由として、まずは価値観の変化が挙げられます。年功序列が崩壊し、年相応のふるまいをしなければならないということに対する周りの圧が薄れてきました。例えとして少しおかしいかもしれませんが、若い時は「年を取ったら嗜好が変わって演歌を聴くようになるのかなぁ」と漠然と思っていましたが、おじさんになっても特に聴く音楽は変わっていません。
また、インターネットなどの技術の進化、普及により、年齢に関係なくできることが増え、個人がより自由に生きられるようになったことも理由のひとつです。現在は昔よりも世代ギャップの境目が移動したと述べましたが、この境目はインターネットを活用できる世代とそうではない世代の境目と言えるのかもしれません。
今後は、消齢化現象が加速していくことが予想されます。このような社会変化に合わせて、商品やサービスの提供方法やマーケティング戦略を見直すことが必要になってくるでしょう。消費者の「実質年齢」に合わせた提案をすることが求められています。
最近新しい農具の新商品開発に関する仕事をしていた際、今の日本の就農者の約78%が60歳以上の高齢者ではあるのですが、ターゲットとして高齢者を重要視するのは違うのではという結論に至りました。
今後の商品やサービス提供について、このような視点も必要かもしれません。