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ヨハネスブルクで強盗に遭った話

学生時代、あるボランティア団体に所属していた。
その国際会議に参加するためにジンバブエへ。
南アフリカのヨハネスブルグで乗り換えた。
ヨハネスブルグの街の中の教会へ行った。
道中、ダウンタウンを歩くことになり、商店のウインドウがいかつい鉄格子で覆われているのが印象的だった。

人数は、8人程度だったように思う。
前方に日本人の女性たち、私は最後尾を歩いていた。
私のすぐ前を、初老の男性Kさんが歩いていた。

私の右を、長身の黒人男性が追い抜いた。
すぐ前を歩くKさんの肩にかかったショルダーバッグの紐に手をかけ、ナイフらしきものでそれを切った。
そして引っ張った。
驚いて、とっさに紐をつかんだKさん。
ナイフをかざす男性。
手を離すKさん。
バッグを持って逃げる男性。

一瞬の間の出来事だった。

その後、警察へ行き、調書のようなものを書いた。
「男性の特徴は?」にみんな「黒かった」しか言えなくて、バッグは戻ってこないだろうと思われた。
バッグにはカメラが入っていたそうで、財布やパスポートなどの貴重品はウエストポーチに入れていたので無事だったのが不幸中の幸い。
そのことよりも、警官が身につけていたライフルの方が怖かった。
本物の銃器を身近で見たのは、それが初めてだったと思う。

強奪が起きた時には、状況が理解できず、後から恐怖が湧いてきた。

私が最後尾だったのだから、一番狙いやすかったのは私だったはず。

なのに、飛ばされたのはなぜか。
理由は明快。

一つは、明らかに金持ってなさそうで、その前のKさんの方が金目のものを持っていそうな雰囲気があったこと。

もう一つは、私のショルダーバッグが奪って走って逃げるには重すぎると思われたからではないか、というのが私の推測。

なぜそんなに重かったのか。

水の入った一リットル入りのペットボトルを日本も詰め込んでいたから。
それだけで二キロ。
当時、アフリカは干ばつがひどいという情報があり、実際に、世界三大瀑布のヴィクトリア・フォールズも、ちょろちょろとしか水が流れてなかった。
水不足で困るかも、と水道水をペットボトルに詰めていった。まだ水を買う、というのが一般的でなかった時代のセコさと浅知恵による選択。
実際には飲むこともなく、途中で捨てることになり、無駄に運んだだけとなった。

でも、その浅知恵が、結果的に強盗のターゲットから外してくれたのかもしれない。

もし、Kさんが抵抗していたら。
もし、私がペットボトルを詰めていなかったら。

今、無事でいられることをありがたく思う。

ヨハネスブルグの思い出。


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