レッドミラージュV3 スポットライト #11
ジゼル 第一幕
ただいまより、公演を開始いたします。
暗がり、しばらく音楽が流れる。
緞帳がするすると上がり、風光明媚な景色が現れる。
そこは、ぶどうの収穫の時期を迎えたドイツのとある村。
踊りが大好きな村娘ジゼルは、青年ロイスと恋をしてしまいます。
しかし実はこのロイス、貴族のアルブレヒトが村人に扮した
世を忍ぶ仮の姿だったのです。
アルブレヒトにはバチルドという婚約者がいますが、
不届きにもジゼルや村の人たちには黙っています。
そんなことは知らない可哀想なジゼルは
ルンルン♪でロイスと村の広場で踊ります。
ジゼルに片思いをしていた森番の青年ヒラリオンは2人の恋仲に嫉妬し、
日頃からロイスの立ち振る舞いに(あれ?コレ貴族的じゃね?)
と何か違和感を感じていました。
そしてロイス(アルブレヒト伯爵)のマジボロい小屋に
こっそりと忍び込み、
隠されていた剣に刻まれた紋章を見つけて
彼が村の人間ではないと確信するのでした。
この3人が第一幕に続き、第二幕まで
あーだ、こーだと大立ち回りを繰り広げるのが
ジゼルのお話なのですが、
今回のスポットライトは彼らではありません。
そう第一幕にしか登場しない貴重な存在、村人たちです。
でも、せっかくなので『ジゼル』の主役たちについてもう少し。
森番のヒラリオン。
ジゼルがアルブレヒトと仲良くが踊っているのに、
間に割り込んでジゼルを連れて行こうとするのですが、
憐れジゼルにキッパリと断られると
スカートの裾にすがるというダメ男ぶり。
でも森番なので、ジゼルのお母さんには
『いつも、ジゼルちゃんにはお世話になってま~す、これお土産です。』
と森で獲れた木の実か何かをお贈りする下心一杯の好青年です。
(海外公演では花をジゼルの家にそっと置いたりと、やはりマメ男君)
そしてアルブレヒトとジゼル。
初登場シーンから、見ちゃいられないイチャイチャぶりです。
(詳しくは、ジゼルのバレエ公演にてCheck it Up!)
実はジゼルは心臓が弱いのです。
『ジゼル、あなたは体が弱いんだから、
踊るのはほどほどにしときなさい』という
お母さんの心配を二人とも聞きやしない。
いつの時代も、”今の若い者は!”なのである。
ジゼルさん、心臓が弱いながら強靭な体幹と足腰のバネで
パンシェ、アチチュードターンと優雅にこなし、
後半のポアントでのケンケン行進、連続ターンという
常人では到底できない大技を繰り出します。
結局、踊り過ぎでは体調に支障をきたすことはなかったものの
恋人のロイスが実はアルブレヒト侯爵で
バチルダという許婚がいたと知り、激ストレスで落命。
この『心臓が弱い』のパターン!”萌える”ではなく、
”燃える”ものがあります。
そう、誰もが知っているに違いないあの名作。
『燃えろ!クロパン』
(月刊コロコロコミックスで1979年9月号より1981年3月号まで連載された
内山まもる原作の傑作野球漫画)
私が燃えるのは主人公であるクロパンこと大磯巧ではなく、
ライバル兼チームメイトの南大路 光です。
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! バレエつながり。
この『白鳥の舞』というのは、
投球一球目で光さまのアンダースローから繰り出したユルフワのボールが
バッターがどんなところにバットを構えていようとも、
ボールの方からバットに当たって行き、
必ず凡打に仕留めるというトンデモ魔球なのです。
結果、光さまは試合で完投勝利するために
一試合27球しか投球しないという、
生まれつき弱い心臓への投球による負担を最低限にするために、
血を吐くような努力(?)をして編み出した魔球だそうです。
ちなみにこの魔球を編み出す時に体を痛めつけなければ
もっと長生きしたんだろうな?
ここで、彼ら3人を
レッドミラージュV3 脚部パーツ
になぞらえると
可憐なジゼルは、清楚な天使の絵を塗りこめた膝パーツ
高貴な正体を隠したハンサムガイアルブレヒトは
一見すると美しい発色の赤一色ですが、
炎の紋様を内に秘めた大腿前面カバー
そして森番のヒラリオンは・・・、ところで森番ってなんでしょう?
中世ヨーロッパで、死刑執行人などと並んで
社会の最下層として差別される職業。(ひどいなぁ)
雇われて主人の領地内の動植物の飼育や保護をしたり、
害獣を捕えるといった森の管理人。
猟をする主人のために、普段は獲物としてキジなどを飼育したり、
狩り用具の手入れをし、また狩猟時には案内もする。だと
なかなか緻密で立派な仕事ではありませんか!
(私もヒラリオン君は見所のある青年だと思っていたんだよ!)
とすればヒラリオンは、あまり目立たないけれど、
緻密に計算された機構で開閉して
イレイザーエンジンの温度管理をするふくらはぎカバーがピッタリです。
では、この主役たちが踊りまわっているときに、
村人たち、特にジゼルと同じ年ごろの若い村娘たちは
何をしているのでしょう。
周囲にたたずんだり、あるいは座り込んだりしつつ、
にこやかにジゼルの動きを目で追ったり、
近くに来たアルブレヒト向かって優雅に手を伸ばしたり…
と主人公のサポートに徹する脇役の鑑です。
ところでこの脇役の動き、振付けが決まっているのでしょうか?
バレエをやっていたポコぞうに聞いてみました。
いや、特に振付けはないよ。
その時の雰囲気で、踊っている人に
『あら?ごきげんよう、まぁ!素敵ねぇ』
って話しかける気持ちでやっているだけ。
アドリブかぁ!それは子供だから振り付けないっていうこと?
ううん、大人も同じようなもの。
へー、英国ロイヤルバレエ団はどうかわかりませんが、
街のバレエ教室はそんなものらしい。
しかし村娘たちも主役を遠巻きに眺めるばかりではなく、
ジゼルやアルブレヒトと一緒に踊る時もありますし、
二人が舞台裏へと消えた時には、『あとは任せて!』と
ちゃんと活躍する場があるのです。
村の収穫祭での村娘の踊りとして、
”村娘のパ・ド・ドゥ”だけでa)~f)まで6つも続きます。
脚部品たちのパ・ド・ドゥ
レッドミラージュにおいて、
神工作(自賛で失礼)を施したパーツトリオに
主役の座を譲った、その他大勢の脚部パーツたち。
そんな彼らにもスポットライトを当てる場が必要。
それが今回のテーマなのです。
ちゃんとアイデアポイントもたくさんございます。
(既に他の部品で紹介済のものが多いですけど)
脚についてのアイデアポイント(その4)
29.膝ブロックの二重ボルト金属パーツ化
30.足首アーマーのレーザー砲台 透明パーツ化
31.大腿パーツ 業火ラインのシタデルコントラスト塗装
32.膝ブロック ハイパークロームAg塗装
33.踵部品 ハイパークロームAg塗装
34.足首アーマー ハイパークロームAg塗装+部分塗装
35.爪先カバー 一部ハイパークロームAg塗装
36.膝関節サイドカバー 透明ブルーメタリック塗装
37.爪先カバー 透明ブルーメタリック塗装
それぞれの部品の紹介はレッドミラージュV3スポットライトの
お作法に倣って、上から順に行っていきます。
脚部品のパ・ド・ドゥ a) 太腿パーツ
特に改造などはしていません。
塗装で一番苦労したのは、実は内面のクリアー塗装。
レッドミラージュV3スポットライト#3の有料記事にて
少し触れましたが、
奥まった箇所へのエアブラシ吹き付けで、塗装面に対して
吹き付け角度が非常に浅くなったため塗料の粒子が付着せず、
ざらざらになってしまいました。
塗膜を剥がさないように注意しながら磨いて
なんとか透明度を確保。
外面には半透明の蛍光ホワイトを塗装するので、
内面の透明度が低くても、実はそれほど目立たないのですが、
クリアー感の高いホワイトというのは存在せず、
蛍光ホワイトを塗装しただけで、透過する光を拡散させてしまいますので
少しでも発色と透明感を両立させるためには
余計なところで透明度を落としたくはないのです。
外面の塗装は特に問題はありませんが、
膝近くの側面にあるゴールドの円盤状部品は
少なくともガンダムの膝関節にあるような蝶番ではないと思いつつ、
塗装でのアクセントの一つですので
思いっきり派手なイエローゴールドで塗装します。
裏映り防止のため、まずは落ち着いたスーパーファインシルバーで
下地塗装をします。
その上にゴールドの発色を良くするために
フィニッシャーズカラーのディープイエローを乗せ、
最後はゴールドの中でも最も遠慮のない発色を発揮する
ガイアカラーのスターブライトゴールドで仕上げです。
それから“業火ライン”。
業火ラインというのは、業火で焼かれる人を彫刻したライン状の縁取り
の事なのですが、
コレ、脛だけではなく、大腿にもあったんですね。
炎のパターンを描いた大腿前面装甲の縁取りなのですが、
大腿パーツのほうに彫刻されています。
こちらは脛と違って、業火に焼かれる人の解像度を上げる彫刻はせず、
抽象的なウネウネした模様のまま
シタデルカラー・コントラストのブラックテムプラーの
筆塗りのみ行っています。
見所となるポイントは分散させずに、
”ここぞ”というところに絞って表現したほうが良い!というのは建前で、
さすがに細かい彫刻をする気力がなかったというのが事実ですが、
実際にキットの業火ラインの彫刻も、
脛に比べて大腿部のほうが明らかに抽象度が増しているので、
あながち的外れな見解ではないのだろうと思います。
業火ラインは本体部品と一体のモールドとして再現されていますが、
脛では追加で精密に彫刻したものを複製し、
ライン状に切り離して別体化していました。
大腿はそのままラインだけを塗り分けます。
ラインの縁がふにゃふにゃした輪郭ですので、マスキングテープではなく
マスキングリキッドを筆塗りしてマスキングをします。
筆塗りの場合は特に、マスキングテープの僅かに浮き上がった部分に
毛細管現象でしみ込んで、塗り分け線をはみ出してしまうという悲劇が
頻繁に発生するのですが、ハセガワのマスキングリキッドは密着性も良く
安心して使えます。
脚部品のパ・ド・ドゥ b)膝ブロック
スカート装甲で使用した、Show UpのハイパークロームAgによる
鏡面塗装です。
鏡面塗装についてはレッドミラージュV3スポットライト#6で
説明したのと同様。
というよりも全ての鏡面塗装適用パーツを同時オペで塗装しています。
記載すべきアイデアポイント(29)としては
永野先生のイラストに描かれた二重ボルトを金属パーツによって
表現したことです。
キットのままのモールドだとメインボルトは
単なる皿状のくぼみ、
回り止めボルトは小さな点状のくぼみで、
しかもその二つが重なっていないので、
なんちゃってボルト&なんちゃって回り止めなのです。
HIQ PARTSのJDリベットΦ1.0をメインボルトに、
マイナスモールドΦ0.7をメインボルトの回り止め用のボルトに
使用しました。
マイナスネジの向きは敢えて、一方向に揃えずランダムな向き
となるようにしています。
(永野先生のイラストが微妙に向きが揃っているので
どうすべきか悩むんだよな~)
ちなみにマイナスネジの向きをコントロールしているのは
オーデマピゲのロイヤルオークくらいしか知りません。
こちらは六角ボルトの頭にマイナスネジが切って有り、
六角ボルトの頂点が外径方向、マイナスネジの向きが円周方向に
揃っているのですが、雑誌に載っていたQ&Aでは
これは飾りボルトではなく、
本当にケースの締め付けに使用しているボルトで、
高精度で加工しているので、適切に締め付けると
同じ向きになるということだそうでビックリ!
(六角形の頭が六角形の穴にピッタリ収まっていることからすると
少なくともベゼルはボルトを締め付けた後で嵌め込んでいるのでは
ないかと思うのですがね)
脚部品のパ・ド・ドゥ c)膝関節サイドアーマー
表面は基本的に蛍光ホワイト一色ですが、
装甲裏面のパネルは不透明な金属塗装部と透明ブルーメタリック
で塗り分け、
さらにはメカ部にスーパーアイアン2をプラスして
細かく塗り分けしています。
取り付け位置(右)を示すマーキングをしたまま、
写真を撮ってしまったのはご愛敬。
同じ形でも真鍮線で芯線を通して、膝パーツの取付部と
現合で取り付け調整しているので、
左右を間違えるわけにはいかないのです。
こういった小さいパーツは取り付け直前まで識別表示を外すのはご法度
脚部品のパ・ド・ドゥ d)足首甲カバー
この部品も膝関節サイドアーマー以上に塗り分けに苦心しています。
まずは鏡面塗装があるだけで、
マスキングなどの取り扱いに気を遣うのですが、
表面だけで基本色の蛍光ホワイトに加えて、
スターブライトゴールド、ピュアレッドと塗る面積が小さい割に
塗り分けるのに手間のかかる差し色あり。
裏面は裏面で”くの字”に折れ曲がった装甲形状に、
立体感豊かなディティールのためマスキングが大変やりにくい。
そんなところにメタリック塗装やクリアーホワイトという
塗り分けの多さです。
組み立てれば裏側は絶対見えないし、
表面から蛍光ホワイトを通して見ると
塗り分けの差はほとんどわからないのに
どうしてこんなに塗り分け数を増やしてしまうのだろう。
それはそういう色で塗ってほしいという形をしているからなのです。
脚部品のパ・ド・ドゥ e)踵パーツ
踵自体と踵側面へ取り付けるJ形の付属部品に分かれていて
塗り分けが楽なので助かった。
といいつつJ形の部品は鏡面塗装がメインながら、
これは別部品と考えた方がリアリティーが出るかな、と思ったところは
ひらめきでシャンパンゴールドやスターブライトアイアンで
塗り分けをしています。
踵自体にも差し色のメタリックカラーを何色か入れました。
先端のゴールドはとってもハイヒールっぽいです。
脚部品のパ・ド・ドゥ f)足首アーマー
メインは鏡面塗装です。
スカート装甲よりも面積が広く、Ω形の全体形状であることが
鏡面塗装の関門であるクリアーのトップコートをさらに難しくするのです。
このトップコートは粘度が高く、薄める事のできない
Show Upの塗料の特性上、光沢を出すのに非常に苦労します。
初層からの厚塗りはトップコートの溶剤が
Agを刺激して鏡面を曇らせるので禁止
+ 粘度の高い塗料ということで
もともとドライ吹きをすると、表面がザラザラになりやすいのですが、
この足首アーマの裏面に至っては、
光沢が出ないというレベルではなく、
吹き流れが蜘蛛の巣状に付着して白化してしまいます。
かといって裏面をきれいに仕上げるために、
表面の光沢を犠牲にするのは本末転倒ですので、
あくまでも表面をきれいに仕上げることに全力を注ぎ、
裏面はトップコートを剥がさないように注意しながら磨いて
何とか鏡面に落ち着けることができました。
そしてアイデアポイント(30)
白い飾り石のような部品です。
これはよせば良いのに、このモールドをくり抜いて窪みを付けた後に、
透明プラバンから切り出した部品を取り付けています。
これって何でしょうか?近接センサー?
いいえ、設定集にはSマイン発射口と記されています。
Sマインというのは対人地雷のことで、
空中で爆発して金属の玉を周囲にばらまき敵兵を殺傷するという
凶悪きわまりない武装です。
大変に残忍に聞こえるので、ここは”どうにか”したいところ。
同じ設定集を見ていると
K.O.Gの頭部に同じような形の部品が付いており
それがレーザー砲台で、防護シールドがはめ込んであるとなっている。
レーザーなので透明ガラスでカバーしていても発射できるというわけです。
興味深いのでこの設定とディティールをいただきます。
問題は防護シールド内部のレーザー砲台を再現する方法ですが、
さすがに正攻法では小さすぎ無理。
ではどうするか?目に前にお手本があるではないですか?
レッドミラージュの半透明装甲の手法そのものをいただくというわけです。
すなわち内部メカを作り、その上に透明のカバーを被せるのではなく、
透明部品の裏面側の彫刻を表から見ると
内部に入ったメカのように見えるという疑似内部メカです。
透明プラバンを台形の形状に切りだした後に、
球状のルータでサッと半球状のくぼみをつけるのです。
レーザー砲口は極細ピンバイスで穴をあけますが、
部品の表面まで穴が貫通しないように、ごく浅くしなくては。
本当はレーザー砲口は”穴”なので、
裏からみると細い突起にならなくてはならないのですが、
そこは逆に表から見ると”砲身”のように見えてしまうものの、
穴明けとすることで我慢しよう。
あとは透明ブラバンの表面を磨いてレンズのような
緩い曲率をつければ出来上がり。
レッドミラージュの設定上、ここは無色。
というか足首カバーと同じ色ですので、透明のままでもよいのですが、
レッドミラージュの特徴である
発光する半透明乳白色のボディカラーに合わせて
クリアーホワイトで塗装してみました。
これで本日のプログラムを終了します。
みなさま気を付けてお帰りください。
本日で3日続けて、
『シュペルターと歩む15年記』
『ルミナスミラージュ製作実況中継』
『レッドミラージュV3スポットライト』と
各タイトルでの、記事公開をすることができましたが、
それは、インターネットが未だ繋がっていない単身赴任先で
WordとExcelで書き溜めていた下書きをもとに
記事を仕上げることが出来たためです。
これで貯金はすっかりなくなってしまいましたので、
また以前のゆっくりペースで公開を続けていきます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?