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レッドミラージュV3 スポットライト #8

店主がシンガードに丁寧に天使の絵を描いた


どうも、レッドミラージュ・ワークショップ店主トトムです。
今回から脚部品に入っていきます。
脚は見所が多いので3回~4回分割してお届けします。

なぜ急にワークショップを開いて店主拝命したかというと、
今回のタイトル
坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いた』風の早口言葉にしたかったから。
ただそれだけ。
特に“天使”に対する“店主”のところですね。

ふむ、本題に入る前に一つ原典手合わせしてみるか!

原典を構成する要素は
ボウズビョウブジョウズボウズ ですが、あまり揃っていませんね、
何より“坊主、坊主の絵を描く”と同じ単語を遣っているところに
洒落としての工夫がありません。

それだったらいっそのこと、
坊主坊主ボウス坊主の絵を描いた』
でもいいじゃないか!ということになってしまう由々しき事態です。

正確には”禿げた坊主がフサフサ坊主にボウズの坊主の絵を描いた”である。
どうやら毛髪の量をめぐるイジメのようである。

一方で我らが店主陣営
テンシュシンガードテイネイテンシということで、
テンで始まる言葉が揃う中、
シンガード』がなんとも惜しいですね。
ちなみにシンガードというのはサッカーなどで使う”脛当て”のことです。
昔から野球のキャッチャーが付けているのはレガースと呼んでました。

さてこの二つの雌雄をどのように決すれば良いのか!
(シンガードとレガースの雌雄ではなく、早口言葉対決です)

それは… 早口言葉ポーカー🎉

ではルールを説明しよう
① 4つの単語をさらに分解して1文字もしくは2文字のカードを作り、
持ち札にします。
分け方は任意ですが3文字以上は無効カードとなります。

ポーカー役の強さを参考にして、
 カードの組合せに対する点数を決めます。
1文字カードワンペア1点スリーカード3点フルハウス5点フォーカード7点
2文字カードの場合はその3倍の点というように、
1文字に細かく分けて持ち札を多くするか
一つで高得点が得られる2文字の持ち札をつくるか、
いろいろな選択肢がありますね。

③ ちなみに同じ単語のカードは1枚は没シュートです。
トランプでも同じカードはありませんので。

それでは早速対戦です。
はい組合せができました。コール!

史上初の対決

店主陣営の勝利!

おっと!原典陣営から審判への抗議が!
同じ単語だからといってボウズカードが1枚使えないのは不利すぎる。
こっちはもともとこういう早口言葉なのだ!と

ディ・マリア退場への抗議は覆らないが、坊主はOK!

審判が抗議を受け付けたようです。
では改めまして2回戦
うっ!さすがに坊主×2は卑怯なり!
しかしこちらもカードの組合せを変えて引き分けに持ち込みます。

これだけ無理な展開に持ち込んでおいて、
引き分けというオチを付けるわけにもいくまい。

こちらも”さすがに無理がある”封印していた作戦を
取らせていただきます。

脛=シンガードとしたのですが、まぁ脚の一部ですし、でもよかろう!
モーターヘッドの脚の特徴はなんといっても尖がり爪先
ハイヒールというよりも、まるで纏足てんそく)ですね。
現代の公序良俗に反する纏足。

左がDNAに従った脚の骨格、右が纏足


使いたくはなかったが、ひっそりと使い最終決戦に挑ませていただきます。

苦しい戦いであった!

美の価値観時代とともに変わっていきますが、
極端なハイヒール外反母趾の原因といいますし、
美しさのためとは言え、世の女子も、また男子も
あまり無理な事はなさらぬようにと願うばかり。

トトムとしては”ピアス”というものも痛そうで、賛成しかねるのです。
美しさ”としても片側1つずつ、ならまだしも、
幾つも付いているのはちょっとどうかと。

耳たぶとしても、ただ音を良く聞き取りたくて、
あのピロっとした形状に進化したのに、
『ちょうどいいものあったわ!』と
キラキラしたものをぶら下げられたり、を開けられたり。
あまつさえ普段から眼鏡のつるを引っかけられたりと
理不尽な使われ方の連続です。



またしても前置きが長くなりましたが、
爪先でもでもなく、脛の話でした。
そう!今回は脛のみです。

脚についてのアイデアポイント(その1)

23. 天使の絵画レジン封入
24.膝周り一次装甲別パーツ化
25.業火に焼かれる人の彫刻

L.E.Dの脛何がある? 言わずと知れた天使です。


L.E.Dミラージュの作例ではV3設定画2000年)に忠実に、
オレンジ色の天使シルエットが描かれているものがほとんどです。
ボークスのプラモデルIMSだとデカールまで付属しています。

右の作例写真は左右の足が逆になっている。

脛部分が赤だけでも、それはそれで端正なカッコよさがありますが、
の同系色のオレンジが加わって、アメ車ファイヤーパターンのような
突き抜けたカッコよさがありますね。

カッコ良いが乗りたくはない。



だがしか~し、こういう設定もがあるのです。
何と1989年の古い画稿
(ファイブスター物語の連載開始が1986年ですのでごく初期のもの)
装甲チップモザイクで絵画がはめ込まれている”とある。

初期の神懸った画稿

ファイブスターストーリーズはこういう隠れ設定があるので、
モデラーも公式設定通りにするか、隠れ設定を再現するかで悩むのです。

モザイクによる大型絵画といえばこれですね。
東京ディズニーランド シンデレラ城モザイク画

こういうモザイク画がたくさんあって豪華絢爛

目を見張るクオリティーですが、
これを1/100スケールモーターヘッドので再現するのは無理だな

他に何か方法はないのか?

普通にパーツの表面に天使を描くのであれば、
(絵心があれば)細密画の手法で筆により描いてみたり、
パソコンとプリンタを使ってデジタルデータから
自作デカールを作ることも可能です(やったことはありませが)。

エナメルによる細密画 ミニチュア―ルという技法。これはこれで習得したい

しかし設定の肝である、
膝装甲の表面塗料で天使の絵を描いているのではなく、
装甲材質そのもので天使を形作っている”という所を
モザイク以外の手法で表せないだろうか?

絵を描いていても”描いている”ように見えなければよいのですね。
You Tube
でこんな動画を見つけました。(アイデアポイント23

これならいける!?
モザイク画ではないが、グラスの底があっても良いように、
半透明装甲の厚みの中天使が閉じ込められていても良いじゃないか。

実際に見ると岡本太郎先生の偉業には圧倒されます

ただし、You Tubeの技能を応用するためには
クリアしなければならないハードルがあります。

1つ目は絵を描く面が平面ではないこと。
脛当ての絵を描く部分を一旦削り込んで
そこに何層かに分けて絵を描きながらレジンを盛り上げていくとして、
そこが曲面なので、動画のように透明レジンを流し込んで
固めるというわけにはいかない。
UVレジンの筆塗りなら可能だろうか?

ただしもとの部品のウレタン樹脂よりUVレジンの硬度が低かったり、
ウレタン樹脂との接着性が悪いかもしれないという可能性を考えると、
表面側から削り込むのはちょっと危険
表から削り込んで深層から表層に書くのではなく
裏から削り込んで表層から深層へ書いていくという特殊な行程
必要になります。これが2つ目のハードル

昔ながらのアニメセル立体版のようなものです。
立体といってもそれほど厚みが取れるわけではないので、
平面ガエルのぴょん吉様より少し立体感が出るくらいです。

昔男子は必ず一人一着はド根性ガエルTシャツを持っていた?
ただしぴょん吉の下に『ド根性ガエル』というタイトルまで書かれていたことに不満あり

おおよその戦略がきまったら、UVレジン絵具の選定
UVレジンは”黄変しにくいもの”を選んでネット注文
忘れずに専用のUVライトも購入します。
(UVレジンは製品により硬化反応を起こす紫外線の波長が異なるので
ちゃんと適した波長のUVライトを購入しましょう)

お値打ち価格です。

透明プラバンで試してみると粘度はちょうど良く、
平筆にたっぷりと付けて3回塗りすると、
レジン層の厚みが0.2㎜程度になり
多少傾けても垂れたりすることもありませんでした。

絵具はYou Tubeではアクリル絵の具を使っていたので、
高級アクリル絵具であるリキテックスで試してみたのですが、
なめらかなUVレジンの表面で、はじいてうまく描けない。

水性塗料プラモデル用でもファレホカラーシタデルカラーなど、
高性能な塗料が出ていますが、
あまり使ったことのないものに手を出すよりも
使い慣れたエナメル塗料を使うとしよう。

あとは天使のデザインですね。
これは永野先生の画稿にはこだわりません。
左右の脚で違ったデザインなのですが、画稿は片方(おそらく左脚
しかありませんし、その画稿の天使は若干地味なので、
せっかくなら自由に書きたい

”自由に書きたい”と言った舌の根も乾かぬうちに言うのも憚られるのですが
自分でデザインするほどの絵心はないので、ネットでお手本を探します。

天使の配置はV3の設定画に準じて
右脚比較的大きく、脛の中央に、
左脚膝の外側少し小さめにします。

この配置にしっくり納まりそうな天使を物色。

写実的なのや、今時なのでアニメ風天使がずらっと並ぶが、
重厚感のあるフレスコ画風のほうが合うと思い
宗教画”、”天使”で検索。

ポーズ顔の向きの他に
羽根を大きく広げたものや少しすぼめたものなどいろいろあって
全部の要素がイメージ通り、というのはなかなか少ない。

色々ある中からこれに決めました。
左が左脚に描く天使、右が右脚に描く天使(これも早口言葉っぽいな)

ミス・アンヘルのおふたかた。


デザインが決まったら、あとは以下の手順で準備を進めます。
①原画をもとに立体を意識し、
CTの断層写真のような層状スライスした各層の輪郭を考えます。

実寸の1.5倍のサイズの脛の額縁の中にイラストを描きます。
実寸になったときでも描けるくらい、思い切った形の単純化が必要です。

トレーシングペーパー方眼紙に書いたイラストに重ねて、
 各層分解した絵を描きます。これが立体画設計図になります。
④脛の内側から絵を描くので、トレーシングペーパーの裏側から
輪郭をトレースして鏡絵を作ります。
(下の図は裏側にひっくり返しているので右から1層目の順になっている。)

⑤これを縮小コピーして実寸の型紙にします。

十円玉とのサイズ比較

⑥一方で1.5倍サイズの原画を更に拡大コピーして彩色見本を作成。

左脚の天使は、別の絵画の聖母マリア様の衣服(右)を見本に
サーモンピンクに変更。

右脚の天使は原画通り白衣で良いのですが、
眼下で燃え盛る業火に照らされ、衣服は下面赤く輝き
上面暗い陰が出来ているようにしたい。

その色見本の写真(左)は、そう夕陽に照らされたティッシュです。
『なんで左脚の娘の見本がマリア様で、私のがティッシュなの‼』
あっ、右脚の天使から抗議の声が上がりました。
(今日はよく抗議の声が上がる日だ)

大丈夫!
同じように晴れた日の夕方でも、空気まで真っ赤に染め上げるような
光に包まれるような夕焼けはめったになく、
結局”これだ!”と思うような理想的な参考写真が撮れたのは
脛部品の製作が終わった半年も後でした。
したがってティッシュは”参考に出来なかった見本写真”なのです。

上面の影は暗いトーンとすべく濃い灰色にしたのですが、
参考写真によると少し紫の色相を加えるとより実感が出るみたい。

次の機会があれば、その時参考にしよう。
元データがすぐ見つかるように撮影日時ファイル名をメモ
(2021/01/17 17:17  DSC03107)


⑤で作成した実寸の型紙を脛の表面側から内向きに
マスキングテープで固定し、裏面側から型紙の輪郭を参考に、
面相筆絵画を描きます。

上手に絵が描けるか?
まずは平面ですが、透明プラバン実験。 
無理です!(あきらめ早!)

理由は二つ
・描くべき絵が小さすぎて、一筆のタッチですらオーバースケール
そして
・裏からセル画のように描くことで、失敗したのを次のタッチで
修正することができない
という困難の二重奏。

通常、絵画を描くには、透明水彩水墨画でない限り
一筆一筆のタッチ繰り返し重ねることで輪郭色のトーン
だんだんイメージに近づけることができるのですが、
たった一筆のタッチですでに意図した大きさ(小ささ)を
はみ出してしまい、そして重ね塗りでの修正出来ないという
のでは絵を描く事など全くおぼつかないのである。

平面で苦労するのにましてや曲面では!ギブアップするしかない…

やはりエナメルミニチュア―ルという技法を磨いておけばよかったと
思うが、今からスイスまで行って職人に弟子入りしている暇はない。

まっ、描いて見せます。モデラーの尻尾の戦いぶり、ご覧ください。

モデラーならば”絵を描く”のではなく、塗装をしようではないか。
そうマスキング技法を使って!

透明プラバンの下に実寸型紙を敷き、その上にマスキングテープを貼って
うっすら透けて見える線を頼りに
絵を描く部分をカッターフリーハンドで切り抜きます。
これを使ってマスキングをするのです。

モデラーの尻尾の戦いぶり

これなら、輪郭からはみ出すことを気にせず、
服の皺のハイライトなどを極細く一筋描くことに集中できます。
最初の一太刀にすべてを書ける捨て身の剣法
1回だけならば出来るのです。

最も表層側になる繊細な部位の描写さえうまくできれば、
その上から周囲に色を塗り重ねても表から見ると
最初に描いた線は消えないので、
あとはマスキングによる塗り分けで十分 ”様になる”のである。

まさにセル画塗り難しさを逆手に取った技。


では準備はここまで脛部品をつかって実製作に入ります。

裏から脛当て部を削り込むのが最初の試練。
できるだけ立体的に絵を描くには、
UVレジンの層厚くする事が必要ですが、
そのためにレジンを裏面側に盛り上げてしまうと内部メカと干渉して、
フレームに脛部品を取り付けることができなくなります。

したがって、裏面側を出来るだけ薄くまで削り込むことが必要です。
しかし貫通してしまっては”裏から描く”という離れ業を
やろうと決めた意味がない。

安全に削るには、正確な厚み計測が必要なのですが、
この部分の厚みを測る道具がないのです。

定規。…当然無理です。

ノギス。この形状のものは測れません。
改造するか?いや寸法が精密に測れるような改造は難しい。

マイクロメーター。通常のマイクロメーターでも13000円はする!
正確に局部の厚みを測るには測定子尖った
ポイントマイクロメーターが必要ですが、
これだと38500円高額すぎる。
精密といっても、1/10㎜で十分で、
1/100㎜の精度で計測したいわけではないのです。

ここで一思案、世の中には外パスというものがあります。
正確には計測器ではなく測定用補助工具です。

本来は被測物から外して定規やノギスで計測するという測り方なのですが、
今回は被測物から外さずに測る必要があり。
適当な位置に目盛をポンチングします。

これで測ってみると、脛部品の脛当て部のもともとの厚み
上部が1.5㎜、下部が2.2㎜でした。
出来れば0.5㎜くらいの厚さまで削り、
1㎜以上のUVレジン層厚みを確保したいのですが、
それこそ穴が開いては元も子もないので0.6㎜を目標とします。
(たったの0.1㎜ですが、されど0.1㎜のマージンです)

当然脛前面全体を薄く削ると、
いくら後からUVレジンを盛り付けるといっても
部品の強度が落ちますので、絵を描く部分のみ削ります。


また左脚は膝の近くに絵を描くのですが、
この部分は裏側に膝ブロック周り一次装甲モールドされいます。

絵を描くためにこのモールドを削り落とす必要がありますので
この一次装甲は後で作り直します

絵を描いた後にまた膝周り裏面を元の一次装甲の形に整形するのではなく
脛部品の複製品から削り出した別部品にします。(アイデアポイント24)

もちろん左右の脚を揃えるため、
天使の絵を描くためには削り取る必要のない右脚膝周り一次装甲
同じように削り取って平滑にします。

ギリギリまで薄く削ることができたら、
内面側平滑に磨いてから絵を描き始めます。

まずは天使から。
右脚は2層目以降は各層毎に写真をとりましたが、
都度写真を取るのは大変だったので、左脚は途中写真は撮れてません。


写真で見ると、順調に行程が進んでいるように見えますが、
ハプニングも普通に起こる。

内側側面のメカモールドなどにUVレジンが付かないように
マスキングしていたのですが、マスキング剥がしのときに、
UVレジンの端ピキッ剥離して、少し白くなってしまった。
やはりUVレジンウレタン樹脂の接着性はそれほど高くはないようだ、
出来た隙間にメタルプライマーを流し込み、これ以上剥離しないよう
応急手当をしたが、以後マスキング剥がしは注意しないと。

また事前に行ったフレームとの組立調整が不十分だったのか、
はたまた薄々になるまで削ってからUVレジンを盛り上げ
UVライトを当てたことで歪んで左右の幅が狭くなったのか、
フレームに取り付けられない。

なるべく天使の絵を描いた部分は熱湯につけないように注意しながら
加熱して下端部歪み修正。 
左脚も、絵を描き始める前にもう一度チェックし、
こちらは上端部の歪を修正

以降は念のため、歪防止つっぱり棒を取り付けてから
UVレジン硬化させることとする。

裏面側に盛り上げたUVレジンがフレームのメカ干渉
あまりUVレジンを削ると天使の絵まで消えてしまうので、
フレーム側のメカモールドを目立たない範囲で、削らせてもらいました。

次はの部分です。
は出来るだけ、炎らしく描きたいのですが、
炎が炎らしく見えるポイント透明感発光感


電飾フレーム側に仕込んで、脛装甲の裏側(内側)から
発光
させてみたいものですが、もうフレームは出来上がっており
電飾の技術もないので、ここは塗料の発色でなんとかします。

エナメル系塗料ではなくラッカー系のMr.カラー蛍光イエローは
不透明
で、その分発色が強い。
これにクリアーホワイトを加えて、黄色味を抑えるとともに
少し透明感を出す
また部分的にオレンジを加えて炎の色変化を付けました。

炎も脛裏面を削ってから5層に分割して描いていきますが、
最初に削る時に炎の形に合わせて、うねうねの面として、
炎のうねりを表現してみました。
ただし、UVレジンを盛り付けて、裏面を平坦に整えると
炎のうねりはほとんどわかりません。

右脚絵画描きおよびUVレジンの工程を一通りやり終え、
だいぶ慣れたので、左脚各層毎天使同時に描いて、
一度にUVレジンを盛り付けます。

こうするとUVライトを当てる回数(=時間)も最小限になるので
右脚で発生が疑われた紫外線による変形
透明レジンの本質的な弱点である変色を最小にすることが出来ます。

と言つつも、同様の作業を繰り返すと、
2度目はついついグレードアップしてしまうのが人の常、
左脚の天使は、作業途中の判断で計画図にない部分的な層分割を追加
結局全部で11層になってしまいました。
(天使と炎を同時に描いたために、UVライトを当てた回数は、
右脚とほぼ同程度で納まりました。)

左脚の天使ひいき疑惑が消えない!

やったー!完成‼
ではありません。

背景の赤い色を塗らなくては。

背景の赤は内部メカが少し見えるようにクリアーレッドで塗装します。
一口にクリアーレッドといっても、
塗料メーカーによって発色がかなり違います。

クレオスMr.カラーのクリアーレッドは紅色っぽいのでイメージではない。
同じMr.カラーでGXクリアーシリーズディープクリアーレッド
という色があるので試してみましたが、
深いというか、ちょっと茶色味があり、今回は出番なし。

最終的にフィニッシャーズカラークリアーレッドを選びました。

フィニッシャーズカラーはソリッドレッド
色の深さ微妙な違いがある複数の色のラインナップがありますが、
イタリア車の赤”のイメージにピッタリでお勧めです。

ちなみに今持っているフィニッシャーズカラーの赤系は次の5色
Pure Red
Silk Red
Deep Red
フォーミュラーレッド
インペリアルレッド

背景のクリアーレッド塗装のポイントは2つ。
1つ目のポイントは、表、裏どちらの面に塗装するか。

言うまでもなく表面から塗っては、せっかく描いた絵が
赤に染まってしまうので原則裏面から塗装します。

しかし上部の膝周りは、塗り分け線も入り組み、
裏側には膝側面カバー取り付け部もあって、厚みが結構分厚いのです。

判定は? 裏面からの塗り分けすることは無理

そこで上部は表面から塗装して、
裏から塗った部分と、上手くラップさせることで、
塗装している面が違っているという事実を
目立たせないようにしなくてはなりません。

ラップ部分は表裏両面にクリアーレッドが塗装されるわけですから、
濃くならないように、最初は薄目に塗装する注意が必要です。

2つ目のポイントは背景が単調にならないこと
脛の絵画は天使が主役ですが、
背景もクリアーレッド一色の単調なものではなく
微妙な色調の変化をつけて絵画的な表現としたい。

また天使を引き立たせる効果も与えられればなお良し。

色調の変化としては、表面は完全に平滑に磨き込んだ光沢仕上げ
しつつも油絵のタッチのようなものが出せないかと工夫してみました。

表から背景部を部分的に#800耐水ペーパーで磨いて
細かい磨き傷をつける。
その上にクリアーレッドレッドオレンジソリッドカラー
加えた色を筆塗り

筆塗り下部分を#6000#8000、#10000と研磨して、
最初につけた#800の磨き傷に塗料が残る程度まで塗膜を除去します。

最初に磨き傷を付けておかないと、部分的に塗った塗料は
ペーパーで磨くと、日焼けした肌皮がめくれるように
端っこからはがれていき、一様な仕上がりになりません。

裏面側も#1200で磨いた磨き傷を背景部に付け、同様に色付け

ランダムに透明度の低い部分塗装を追加することで
単調なクリアーレッドではなく、
内部に不透明の介在物が入っている天然石のように見えるでしょうか?

なお、この部分的な塗装は、クリアーレッドに上部はレッド
下部はオレンジを加えた色としています。

単にクリアーレッド一色単調さを解消するだけではなく、
業火の周りにが立ち上り、炎の近くは煙が明るく照らされ、
上部ほど暗く立ち込めている様子を表現したつもりです。

それ以外の効果として、炎の明るさを引き立たせるために
炎の周りには裏面からクリアーブラックをエアブラシ吹き付け

炎の部分は舞い上がる火の粉を表現するため、
表から炎に重なるようにシャインパールゴールドトパーズゴールド
混色をエアブラシ
粒子感が散る程度のわずかな量にとどめます。

また天使には後光が差しているかのようにMGパール
背景に軽くエアブラシしています。

かなり変化を付けることができたと思うのですが。

これでやっと完成
ではありません。まだです!まだその時ではありません。

赤い脛当て両側の黒いライン
これは業火に焼かれる人集まりでラインになっている
というのが公式設定なのですが、
キットでもなんとなくそれっぽい形状で表現されています。
(私は勝手に”業火ライン”と呼んでいますが
天使が業火で人々を焼いているのではなく、
業火に焼かれる人救済しようとしている天使なのだとか)

脛の絵画部のアップの画稿には天使の絵以外に、
モデラーの仕事を増やすなんとも余計なものが描かれています。

業火に焼かれる人の彫刻がものすごい存在感を持って描かれている。
しかも”人!” ”女性” ”修道女?”とはわかるが、
それを立体で再現しようとすると
細かい部分はちょっと形が曖昧という絶妙さで。

これはもう、ジュエルペット・ハッピネスモブレベルよりも
人としての解像度を上げてやらなければなりません。
(やりたくないけど、やっちゃうアイデアポイント25

キットの業火ラインは、モブレベルなのです。

まずは画稿をもとに、立体化をイメージしたスケッチ起こし

見える!私にも見えるぞ!

元の業火ラインのモールドがなんとなく人に見えるところは、
その形を生かして、さらに細かく彫刻しますが、
もとの形がジェリービーンズか、はたまたバーバパパにしか
見えないときには、まずは心の目人の形らしきものを見出し
その形に近づくように瞬間接着パテを盛り上げたり、削ったりします。

良く見えるように複製品にグレーサフェイサを吹いたサンプル
これでやっと身長5㎜の女性が見えるようになる。



片側の脛で2ライン。それだけでもう限界
両足分の彫刻をする気力はないので、複製することにします。

しかし、それはそれで、
複製のための粘度埋め、シリコン流し、バインド、レジン注入
複製品から、折れないように細心の注意を払って業火ラインを削り取り
オリジナル部品の業火ラインは削り取って、複製品が嵌る溝彫り
という、かなりハードな作業工程が必要であり
もしかしたら両足とも彫刻すればよかったかな?という面倒くささ

ただ業火ラインは独立した部品になっているので、
塗り分けが不要なのは助かります。

業火ラインの塗装はスターブライトアイアン下地に、
シタデルカラーコントラストブラックテムプラーを塗って
黒曜石のような仕上がりとしてみました。

いや、黒曜石というよりも、”業火で焼かれた”というだけあって、
皆さん、こんがり焦げています。
小麦色のマーメイドどころではありません。

業火ラインの接着は、金属パーツを接着するときに使用する
布用ボンド(透明:水性)をつかっています。

やっぱり最後はミス右脚で締めくくりましょう。グッバイ!

とうとう完成です。


最後に、製作メモから脛の絵画部および縁(業火ライン)
掛かった日数を数えましたので、記録として残しておきます。

下絵描き、彩色設計、テスト等 実働16日(カレンダー38日)
天使および炎の絵       実働26日(カレンダー29日)
背景             実働5日(カレンダー8日)
業火ライン          実働20日(カレンダー53日)
合計             実働67日(カレンダー128日)

実働といっても1日24時間 作業し続けたわけではありません。
またカレンダーというのは、
その工程の製作開始日付終了日付間の日数です。

日数から見ると、天使および炎の絵は主要な工程だけあって
実働日数も多いですが、カレンダー日数はそれと大差なく、
一気にやり遂げたことがわかります。

下書、色彩設計、テストや業火ラインは
実働日数に比べて、カレンダー日数はその2倍程度になっており、
下書などは、いろいろと思案しながら進めた事、
業火ラインはおそらく細かすぎる作業でモチベーションが下がり
気合が入るまで時間がかかったのだと思います。

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