レッドミラージュV3 スポットライト #1
レッドミラージュはファイブスターストーリーズに登場するモーターヘッドの中でも最強の騎体であり、漫画本編ではバッシュ・ザ・ブラックナイトともに一番最初に登場する(正確には一番最初に登場するのはレッドミラージュの盾だけ)、最初期のモーターヘッドにして、永野デザインの最高峰の一つであると思っています。
レッドミラージュとはなんだろうか?
≪レッドミラージュの名称≫
レッドミラージュの名称はREDミラージュではなくL.E.D.ミラージュ!
アルファロメオのように赤くはありません。
ミラージュは主人公であるアマテラスの私設軍隊ミラージュナイト(幻像騎士団)の保有する一連のモーターヘッドに付けられています。
永野氏のインタビューによるとLEDはLEAD(導く)の過去分詞ですがLEADING(先導する、一流の)のスラング的表現とのことです。
『天国への階段』のレッドツェッペリンのLEDと綴りと発音が同じですが、こちらのLEDはLEAD(鉛)を発音通りに表記したものでレッドミラージュのLEDとは意味は異なります。
ただLEAD→LEDと変化させたところは、音楽に精通している永野氏のネーミングセンスが反映されていると思います。
モーターヘッドもパイロットであるヘッドライナーも音楽用語から取っているものらしいです。
≪V3とは≫
そしてV3!これは仮面ライダーV3ではありませんで、
Version3ということなのです。
もともと1984年の設定では踵が低く、騎体色がパールホワイトであったオリジナルデザインを、ヒールアップするとともに各部形状をリファインし、かつ装甲は白色半透明でエンジンの出力によって発光するという設定となったのがV3です。
ちなみに一体V2があるのかどうかは不明。
≪ボークスのガレージキット≫
V3のデザインが発表されたのが1999年~2000年にかけてであり、
ボークスから満を持してSAV(Solid Art Version)のキットが発売になったのが2002年後半。
レッドミラージュV3でも最初に発売されたのが漫画本編に登場した式典バージョン、それに続いて設定画集に掲載されたフル装備バージョンと2種類の商品ラインナップでした。
式典バージョンというのは天照家創興4400年を祝う壮栄祭でレッドミラージュが初めて公開された際の通常とは異なる装備を持つバージョンで、特別デザインの盾を両腕に装備し、長大な槍を構えた凛々しい姿、頭部のカウンターウエイトもウルトラセブンのアイスラッガーのようです。
設定画集掲載版のほうはインフェルノナパームというこれまた長大な火炎放射器を構え、背中にはでっかいタンクをしょっています。
いずれも完全受注限定生産なので、すぐさま注文したのですが、私が購入したのは式典バージョン。
だってタンクしょってるのは騎士にふさわしくありませんもの。
このキットの肝はなんといっても半透明装甲の表現。
内部メカたるフレームに透明レジンの外装をかぶせるような構造ですが、透過性のある塗料で塗装した外装を通しての内部メカの見え方が光線の具合で変わるドラマチックな効果たるや、2作目のパトラクシェミラージュで実感済。
レッドミラージュでも頑張って玄妙なる塗装表現を実現したいものですが、そのためには装甲の表面だけでなく裏面や内部のフレームまで表面仕上げや塗装をする必要があり、磨きに費やす労力は通常モデルの3倍どころではなく6倍くらい(当社比)。
がんばっていきまっしょい!
このシリーズでは苦労話はそこそこに、いかにレッドミラージュがカッコいいかを塗装やちょっとした改造箇所にスポットライトを当ててお伝えしたいと思います。
舌の根も乾かぬうちにこのキット製作のポイントというか苦労話を
久しぶりにキットの箱を開けたのが、2019年初め。
インターネットの “黒室SPEED”さんの1/32LEDミラージュ胸像製作記事にて、透明レジンの経年変化による黄変の問題に関することを読みました。
”そういえば前に買ったレッドミラージュはご健在?”と心配になり、
『待たせたな!次はお前を作ってやる。傷は浅いぞ!』
とシュペルターが完成する前に確認をした訳です。
(そもそもこれっていつ買ったものだったっけ?)
と思いながらふたを開けた瞬間、うん、黄色いな!
買った時はサクマ式ドロップスのハッカのような清々しい白だったのに。
気のせいではない!明らかに黄ばんでいる。
買ったばかりでもわずかに黄変したものが混じっていることがあるらしく黒室さんも見つけたらボークスに連絡して交換しているとのこと。
でも買って17年も経っていれば、仕方のない事だろう。
それにしても買ったばかりの時に、透明レジンなのに”白”というのは、
”半透明”装甲を最初から再現しているわけではありません。
内部に気泡が入らないようにレジンを真空で注型することによる影響なのかどうかわかりませんが、透明レジンで成型されたボークスのキットはやたらと表面がザラザラとなっておりそのままでは透明感ゼロ。
これをダイヤモンドの原石を磨くように、磨いて磨いて磨いて磨いて透明にするのですが、これが大変です。
サンドペーパーの#400(粗目)から始まり、
#600→#800→#1200→#1500→#2000(仕上げ)
→神ヤス#4000→神ヤス#6000→神ヤス#8000→神ヤス#10000(鏡面仕上)→ハセガワセラミックコンパウンド
とペーパーだけで10段階、順を追って磨いていきますので、磨いて×4くらいでは足りないくらい。
おまけにコシコシコシコシ、キコキコキコキコと磨く、単純な往復動作を延々とやっていると催眠術のようにひたすら眠気が押し寄せてきます。
いったい何段階でどこまで磨けば良いのか?
一般的に2倍の数字の番手で磨いていけば良い(すなわち#400で磨いた後は#800)といわれるのですが、目を細かくしすぎるとその前段階の粗い磨き傷がいつまでたっても消えないので私は1.5倍目安でやってます。
またどこまで細かい目のペーパーで磨くのが良いかと言えば、実は最終的に塗装をして半透明にするので、そこまで透明になっていなくても仕上がりに影響しなくなります。
そもそも塗装の前段階で下地としてメタルプライマーを塗ると、プライマーの膜が細かい傷を覆い格段に透明度が上がる。
テストピースで検証した結果では#6000くらいまで磨いておけば十分だったのですが、我が子には最高の境遇を与えたい親の心同様、出来ることは手を尽くしたいモデラーの心理で、ついつい”限りなく透明に近い透明”になるまで磨いてしまいます。
これに対して不透明のレジンなら#400、#600まで磨いて、サフェーサ掛けの後 #800か#1200で軽く仕上げればOK。
磨きはだいたい4段階程度。
理系のサガで定量的な計算をすると(勢いで書いた事の辻褄合わせともいう)、表の面だけで、約2.5倍(=10段階/4段階)の労力、透明の場合は表と裏の面とも磨くので、2.5×2で5倍、フレームは不透明レジンと同じなのであと1回分足して、合計で6倍という訳です。
頑張れば、いつかはゴールが見える”磨き”のことにかまけて、現実逃避していましたが、透明レジンの黄変については、透明感のある白色を表現するうえで、どうにかしなければならない大問題。
同じく透明レジンのパトラクシェミラージュは塗装は金色(金色というのは意外と隠蔽力が低く下地側から反射がある場合には普通に塗装しても透けて見えるため薄く塗ると半透明に見える。)なので黄ばみは全く気にならない。
また別のモーターヘッド、マイティβ 雷丸(まだ作ってません)は”限りなく透明に近いブルー”ではなく”限りなく濃紺に近い透明”なので十分レジンの黄変は隠すことができそう。
このレッドミラージュが透明レジンキット攻略の天王山というか本能寺の変なのです。
レッドミラージュの半透明装甲を考える
白色半透明!果たして実現できるのでしょうか?
”半透明”をどう解釈するかですが、色は白く着色していても、装甲を通して内部のメカはできるだけぼやけずにハッキリ見せたい。
そんなイメージです。
ステンドグラスで赤や青、緑の色が付いていても透明感のあるガラスを通して光が差し込みます。
そしてどんなに濃いサングラスをかけても、透明度は高く景色がぼやけることはありませんね。
しかし透明な白色というのは実はありません。白というのはすべての波長の光を拡散させた結果ですので、どうしても不透明というか透過した光はぼんやりした拡散光になるわけです。
実はレッドミラージュと一緒にボークスの専用塗料 蛍光ホワイトパウダー(クリアー塗料に加える粉末顔料)を購入していたのですが、これをテストすると、なかなか白色の発色がしない、白色に見えるくらい厚く塗った頃には透明度はほぼゼロに!ということで蛍光(紫外線を当てると発光する)というのは良いのですが、半透明というところは今一つ。
おまけにクリアー感のあるホワイトで塗った作例はどうもカブトムシの幼虫を思い起こさせ、メカというよりも生物的でゾゾゾッとしてしまう。
色出しの難しさに加えて黄変の対応も必要であり、メカとしての硬質感、透明感、発色という要素をバランスさせた理想的な塗装は果たして出来るのかだろうか?
とりあえず蛍光ホワイトパウダーのみで白の発色をさせるのは無理なので、偏光性(見る角度によって発色状態が変わる)のあるパール系と併用するのが第一歩。
パール塗料としては粒子が細かく、金属光沢に近いシャキッとした反射が得られるMGパールを使用することに。
あとは黄色味が抑えられるように黄色の補色であるブルーパールも効果があるかも。
更に色彩には関係ないが、機能性塗料として、これ以上レジンの黄変が進むのを防ぐようにUVカットのクリアー、発色が良くなる蛍光クリアーも使ってみよう。
そして最後は定番のスーパークリアーⅢで表面の保護と艶出し。
使用するのは以下の銘柄
シャインパール(ブルー)パウダー ボークス造形村
蛍光ホワイトパウダー ボークス造形村
MGパール パウダー 雲母堂本舗
UVカットクリアー GSIクレオス
スーパークリアーⅢ GSIクレオス
蛍光クリアー ガイアノーツ
あとはそれぞれの塗料を混合するのか、層状に塗り重ねるのか?
塗り重ねるとすれば順番は?
これは実際にテストピースを作って比較しなければわかりません。
テストピースに用いた透明プラ板は黄変していないので、実際の部品に塗装した時のブルーパールの効果は推測する必要がありますが、
結局上の段の右から2番目のテストピースの上半分を採用!
写真ではしっかり白の発色をしていますが、
角度を変えると透けても見え、テストピースとしては満足いくものが出来ました!
その門外不出のレシピは?というと(出しちゃった!)
表面(外側の面)
第1層 メタルプライマー(これは塗料が剥がれないようにするため)
第2層 UVカットクリアー(透明レジンの紫外線による黄変防止)
第3層 MGパール(反射による硬質感は深層にして奥ゆかしく)
第4層 蛍光クリアー(蛍光で発色を鮮やかにするとともに、第3層と第5層が混ざらないように隔離するため顔料を含まないクリアーを間にはさむ)
第5層 シャインパールブルー(黄変への対策はできるだけ効果がはっきりするように表層近くにする)
第6層 蛍光ホワイト(白色の色味付けを最終的にする)
第7層 スーパークリアーⅢ (保護と磨き込みによる艶出し)
裏面(内側の面)
第1層 メタルプライマー(これは塗料が剥がれないようにするため)
第2層 UVカットクリアー(透明レジンの紫外線による黄変防止)
第3層 シャインパールブルー(裏面にも気持ちだけでも黄変対策を)
第4層 スーパークリアーⅢ (保護と磨き込みによる艶出し)
表裏合計でなんと11層の塗装です!
(パトラクシェはメタルプライマーの後、金色の合計2層だけだったので、塗装の手間も5倍以上です。)
これを実際の部品に塗って金属色塗装したフレームに被せたらどうなるだろう?
ワクワク‼
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