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まりこ26歳、研修医やってるかも

大学病院の研修医まりこは煌びやかな生活を送る直美(直美で美容外科医)の生活を目の当たりにして自分のキャリアに疑問を感じる。
そんな彼女のストーリー。

第1章: 灰色の午前、白衣のポケット


真理子は救急病院の廊下を歩いていた。蛍光灯の白い光が、無機質な天井を淡々と照らしている。時間は朝の9時を少し回ったところ。けれど、午前というよりも、灰色に染まったどこかぼんやりとした時間帯のように感じられる。足元では擦り減ったスニーカーが静かに床をこする音を立て、白衣のポケットにはペンやメモ帳、そして携帯電話がぎっしり詰め込まれていた。それらの重みが、彼女の肩越しに小さな圧力をかけているようだった。

「先生、次の患者さんの準備が整いました」
看護師の声が背後から飛んできた。真理子は振り返り、小さくうなずく。声に感情を込める余裕はない。今週はもう4回目の当直で、夜もほとんど眠れていない。それでも彼女は救急医としての責務を果たさなければならないと自分に言い聞かせる。彼女の高校時代からの夢は、「誰かの命を救う医者になること」だった。それを叶えるために、多くの時間と労力を費やしてきたのだ。

だがその夢は、大学病院という現実の中で次第に形を失っていった。診療の合間にちらりと見た給与明細には、細かい文字で刻まれた手取り額が記されている。その数字は、これまでの努力や犠牲と釣り合うものとは思えなかった。深夜まで働き詰めで、それでも患者が次から次へと押し寄せる。理想はどこに行ったのか。彼女の心には薄い膜のような空虚さが漂っていた。

昼休み、真理子は医局のコーヒーマシンでカップを満たした。薄っぺらい味のコーヒーをすすりながら、スマホをぼんやりといじる。インスタグラムを開くと、美容外科医の道を選んだ高校時代の先輩、直美の投稿が目に飛び込んできた。輝くような高級バッグと鮮やかな街並み、そして満面の笑みを浮かべる彼女の写真。真理子は画面をスクロールする手を止めた。

「真理子ちゃん?」
ふいに声がして顔を上げると、そこには直美が立っていた。きらびやかなパンツスーツを身にまとい、光沢のあるハイヒールが彼女の足元を飾っている。高校時代と変わらないその美しい顔立ちは、時間を巻き戻されたかのようだった。

「直美先輩……」
真理子は呆然と立ち尽くした。直美は微笑みながらコーヒーのカップを手に取り、軽くそれを掲げる仕草をした。

「久しぶりね。こんなところで会うなんて思わなかったわ。あなた、ここで研修医してるの?」
「はい、まあ……救急科で」
「救急科? 大変じゃない?」直美は眉をひそめ、驚いたように言った。「でもまあ、あなたらしい選択ね。でも、こういう働き方って本当に大変でしょう?」
真理子は何と答えればいいのかわからず、曖昧に笑みを浮かべることしかできなかった。

その後、二人は近くのカフェで話すことになった。直美の話す美容外科の世界は、真理子がこれまで知っていた医療とはまるで別世界のようだった。患者の容態に振り回されることもなく、長時間勤務の疲労もない。自由な時間と、予想以上の収入。その話を聞きながら、真理子は胸の奥に奇妙な感覚を覚えた。それは嫉妬や羨望とも言えない何か、ただ静かに自分の中でざわめきを立てる存在だった。

カフェを出るとき、直美は小さな紙片を渡してきた。
「もし今後、何か迷ったらここに相談してみて。私もそうだったけど、選択肢は広い方がいいからね」
紙には転職エージェントの連絡先が記されていた。

真理子はそれをポケットにしまい、微かに頭を下げた。「ありがとうございます。でも、今はまだ……」
「無理しなくていいわ。ちょっとしたきっかけが必要なときもあるからね」
そう言って直美は微笑み、再び真理子の前から姿を消した。

真理子は深く息を吐いた。ポケットの中で、紙片がわずかに指先を刺激した。それは軽い紙切れに過ぎないはずなのに、彼女にとっては想像以上に重い意味を持ち始めていた。


第2章: エスプレッソと理想の値段


真理子は直美と銀座のイタリアンレストランに向かって歩いていた。石畳の道をハイヒールの音が小気味よく響くたびに、直美の背筋の伸びた堂々たる姿勢が目に焼き付いた。ランチタイムで賑わう街の喧騒がどこか非現実的に思えた。白衣に包まれて病院を駆け回る自分とは正反対の、鮮やかで洗練された世界。

「ここよ。ランチが美味しいの」
直美はにっこり笑いながら、ガラス張りの店のドアを押し開けた。店内は静かで、テーブルには色とりどりの料理が並んでいる。真理子は久しぶりに感じる上質な空間に、少し戸惑いながらも席に着いた。

「それで、救急医はどう?」直美が軽くワインを揺らしながら尋ねた。
「忙しいですけど、やりがいはあります」
真理子はそう答えながらも、心の奥で自分の言葉に少し違和感を覚えた。「やりがい」という言葉が、本当に自分の胸から湧き出たものなのか、それとも単なる建前なのかがわからなかった。

直美は少し眉を上げて興味深そうに彼女を見つめた。「やりがいね……まあ、それも大事だけど、私は別のものを選んだのよ。私にとって一番大事だったのは、自分の人生をどう使うかってことだったわ。」

その後、直美は美容外科医としての生活について語り始めた。高収入、自由な時間、そしてクリニック経営の可能性。患者と向き合う時間は短くても、その分効率的に成果を上げられるという話に、真理子は思わず耳を傾けていた。

「例えば、昨日は朝に手術3件して、その後は早めに終わらせて友達とショッピング。夜はちょっとした会食。週の半分は自由時間よ。」
直美の話は、真理子が想像していた「医師」という職業の枠をはるかに超えていた。仕事だけに追われることのない生活が、まるで遠い国の話のように思えた。

「でも、患者さんの命を直接救うわけじゃないですよね?」
真理子は少し意地の悪い質問を投げかけた。心の中では、自分の選択を正当化したい気持ちが湧き上がっていたのだろう。

「もちろんそうね。でも、患者が求めているのは必ずしも命を救うことだけじゃないのよ。美しくなりたい、若々しくなりたいっていうのも、その人の人生にとっては重要なこと。私はその手助けをしているだけ。それに……」
直美はそこで一瞬言葉を切り、真理子をじっと見つめた。「真理子ちゃんも、自分がどれだけ犠牲を払っているか考えたこと、あるんじゃない?」

真理子はその言葉に返すことができなかった。直美の笑顔は優雅で、少し挑発的でもあった。

ランチを終えた後、直美と別れた真理子は、近くのコーヒーショップに立ち寄った。エスプレッソを一口飲み、カップをテーブルに置く。熱いはずのコーヒーの味は、どこか遠く感じられた。

彼女の心には、直美との会話が何度も反響していた。「自分がどれだけ犠牲を払っているか」。その言葉が彼女の心を強く揺さぶった。救急医療の現場に身を置き続ける限り、彼女が直美のような生活を送ることは決してないだろう。けれど、直美の選択が本当に正しいとも言い切れない。それは、自分の信念を曲げることではないのか――そうも思えた。

カフェの窓の外では、人々が慌ただしく行き交っていた。その中には、白衣に身を包んだ医師らしい姿も見えた。真理子はその人影に自分を重ね合わせながら、自問自答を続けた。

ポケットの中で、直美からもらった紙片がわずかに触れた。それは転職エージェントの連絡先だった。彼女はその感触を確認するように指でなぞりながら、自分の心の中で何かが変わり始めているのを感じた。

彼女はもう一口、冷めかけたエスプレッソを飲み込んだ。そしてカップを置くと、小さなため息をついた。答えはまだ出ない。だが、何かを変えなければならないという思いだけは確実に胸の中で芽生えていた。

次の瞬間、スマホが震えた。それは救急病院からの呼び出しだった。真理子は立ち上がり、バッグを肩にかける。答えの出ないまま、彼女はまた日常の中へと戻っていった。

その背中には、小さな揺らぎがしっかりと刻み込まれていた。


第3章: 夜の救急室、止まらない時計


夜の救急室は戦場だった。モニターのアラームが鳴り響き、酸素ボンベの音が重たく空気を押し分ける。患者を乗せたストレッチャーが次々と運び込まれ、医師と看護師たちがまるで機械のように動き回る。時間は深夜2時を回っていたが、真理子にはそれすらも実感がなかった。時計を見ている暇などどこにもなかったのだ。

「次の患者は、交通事故。意識レベルはJCS100、外傷部位は複数。」
救急隊員の声が無機質に響き渡る。真理子は患者の顔を見た瞬間、冷たい現実を突きつけられた。20代後半の男性で、顔には血が滲み、目はうっすらと開いている。かつては輝いていたであろうその瞳には、もう光がほとんど残っていなかった。

「血圧低下。輸血準備して!」
彼女は声を張り上げながら、モニターの数値を確認する。体が自動的に動いている感覚だった。救急医としての技術と知識が、ここで冷静さを保つ唯一の武器だった。だが、頭の片隅では、ふと一つの疑問が浮かんでいた。

自分はこの患者にとって何をしているのだろうか?
真理子は患者の生命維持を最優先に考えながらも、その問いが心の中に根を張り始めているのを感じていた。

数時間後、患者はICUに転送された。彼の容態は安定したものの、完全な回復が見込めるかは不明だった。真理子は疲れ切った体を休めるため、医局の椅子に身を沈めた。湿った髪の毛が額に貼りつき、冷たい水を一口飲み込む。喉を通るその感触が、今の彼女にとって唯一の救いだった。

そのとき、看護師がドアをノックし、ある患者の家族が話をしたがっていると告げた。
「先生、少し時間をいただけますか?」
真理子は疲労感を抱えたまま立ち上がり、面会室に向かった。そこには70代くらいの女性が座っていた。真理子が深夜に診たばかりの患者の母親だという。

「息子を助けてくださって、本当にありがとうございました。」
その言葉に、真理子は一瞬息を呑んだ。彼女は「当然のことをしたまでです」と答えようとしたが、言葉がうまく出てこなかった。

「私たちは息子を失うかと思いました。でも先生のおかげで、また一緒に朝を迎えられるかもしれない。」
その母親は深々と頭を下げ、涙をぬぐった。真理子はただその光景を見つめていた。感謝の言葉が自分に向けられるたび、心の奥底にかすかな違和感が広がった。

患者を救うためにすべてを捧げること。それが本当に自分の「幸せ」なのだろうか? 真理子はこの問いに正面から向き合わざるを得なかった。救急医療の現場は、彼女が夢見た理想とは大きく異なっていた。命を救うことの価値は疑いようがない。しかし、その過程で彼女が犠牲にしているもの――時間、体力、そして感情――は果たして報われるものなのだろうか。

医局に戻り、真理子はポケットから直美にもらった転職エージェントの連絡先を取り出した。それをしばらく見つめた後、彼女は机の引き出しにしまい込んだ。その瞬間、真理子ははっきりと気づいた。答えはまだ出ていない。ただ、何かを変えたいという思いが日に日に強くなっていることだけは確かだった。

深夜4時。真理子は再び呼び出しを受け、立ち上がった。廊下の時計の針は変わらず進み続けている。その動きに合わせるように、彼女もまた歩き始めた。目の前の現実に追われながらも、心の中では新たな選択肢への思いが静かに膨らんでいった。

次に訪れる朝は、これまでと同じではないかもしれない。そう思いながら、真理子は重たい扉を開け、また新しい患者が待つ部屋へと足を踏み入れた。


第4章: 直美の部屋、海の音


土曜日の午後、真理子は直美の招待を受けて、彼女の住む高級マンションを訪れた。エントランスには大理石の床が輝き、受付のコンシェルジュが丁寧に挨拶をしてくれる。その洗練された空間に足を踏み入れただけで、真理子は少し場違いな気持ちを覚えた。自分の白衣とスニーカーの生活とはまるで別世界のようだった。

直美が住むのは、30階建てのマンションの最上階近く。エレベーターのドアが開くと、広々とした玄関が真理子を迎えた。白い壁と柔らかなベージュの床、そしてシンプルながら高級感のある家具が目に飛び込んでくる。窓の外には、晴れた日の東京湾が一望できた。

「どうぞ、座って。今日は少し時間があるから、ゆっくり話しましょう。」
直美はリビングのソファを指さしながら言った。その声には自信と余裕が滲んでいた。真理子が腰を下ろすと、直美は手早く淹れたコーヒーを運んできた。その香りは、真理子が病院の医局で飲む薄いインスタントコーヒーとは比べ物にならないほど豊かだった。

「ここから見る景色、いいでしょ?朝起きてカーテンを開けると、この眺めが広がるの。」
直美はベランダに向かって歩き、ガラス戸を開けた。潮風が部屋の中に心地よく入り込み、遠くで船が行き交うのが見える。真理子はその美しい光景に目を奪われた。

「でもね、こういう生活を手に入れるためには、選択が必要だったの。」
直美はガラスの手すりに手を置きながら言った。「救急医とか、大学病院のキャリアを追い求めるのも立派だと思う。でも、それを続けた先に何が待っているか、想像したことある?」

真理子は言葉に詰まり、ただうなずくだけだった。直美は続ける。
「私は、自由に生きることを選んだ。働く時間も自分でコントロールできるし、収入だって自分次第。もちろん、その分責任もあるけど、それが私には合っていたの。自分がどこに価値を置くかで、人生は変わると思う。」

真理子はカップを手に取りながら、ふと自分の生活を振り返った。救急医療という現場でのやりがいは確かに感じていた。しかし、そのために犠牲にしている時間や健康、そして自由。直美の言葉が彼女の中に静かに問いを投げかけた。

「真理子ちゃんは、今の生活で本当に満足してる?」
その質問に、真理子はすぐに答えられなかった。

部屋の隅には、直美が最近旅行で買ったという高級なスーツケースが置かれていた。その横には、次の旅行の計画を書き込んだメモがちらりと見える。直美の生活は、未来への期待感に満ちているように思えた。それに比べ、自分の毎日は目の前の患者を救うために過ぎていくだけのものだったのではないかと考え始めた。

「でも、救急医って尊い仕事だと思うわ。」
直美は少し柔らかい声で続けた。「命を救うって、簡単なことじゃない。でもね、自分の幸せを犠牲にしてまでするべきことなのか、そこはよく考えたほうがいい。自分がどう生きたいかが、一番大事だから。」

真理子は静かにカップを置き、窓の外を見た。海の音がどこからか聞こえてくる気がした。それは彼女の心に、小さな波紋を広げるようだった。

帰り際、直美はエレベーターまで見送ってくれた。
「またいつでも遊びに来てね。悩んだら、話を聞くから。」
真理子は礼を言いながら、再びマンションの豪華なロビーを通り抜けた。

エレベーターの中で、ポケットに手を入れると、例の紙片の感触が指先に伝わってきた。それを取り出して眺めると、転職エージェントの連絡先が記されている。真理子はその文字をじっと見つめながら、これまで抱えてきた葛藤と、直美の言葉を心の中で反芻していた。

「自由に生きる」――その言葉が、彼女の心に静かに、しかし確かに響いていた。

マンションを出たとき、空には満月が浮かんでいた。次の朝、彼女は何を選ぶのだろうか。それはまだ誰にもわからなかったが、彼女の中で確実に何かが動き出しているのを感じた。

次の行動が、すべてを変えるかもしれない。その思いを胸に、真理子は駅に向かう足を少しだけ速めた。


第5章: エージェントの椅子


真理子は、転職エージェントのオフィスビルの前で立ち止まった。大きなガラスの自動ドアが彼女を映し出している。リュックを背負った自分の姿が、都会の洗練された街並みの中で妙に場違いに見えた。手の中には直美からもらった紙片がしっかりと握られている。それを見下ろしながら、真理子はため息をついた。

「ここに来るのが正解なのだろうか?」
そう自問しながらも、足を踏み入れずにはいられなかった。建物の中は、洗練されたデザインと柔らかい光に包まれていた。受付で名前を告げると、女性スタッフがにっこりと笑顔を向けた。「こちらへどうぞ」と促され、エレベーターで10階のエージェントオフィスへと向かった。

オフィスの扉を開けると、木目調の家具と観葉植物が心を落ち着かせる空間が広がっていた。真理子は案内された椅子に腰を下ろし、目の前のガラスのテーブル越しに見える景色に目をやった。大きな窓からは都会のビル群が見渡せた。どこか直美の部屋を思い出させるその眺めが、真理子の胸を静かにざわつかせた。

「お待たせしました、真理子さんですね。」
そう声をかけてきたのは、30代半ばくらいのスーツ姿の男性だった。落ち着いた声と温和な笑顔が彼の印象を和らげている。名刺を渡され、軽く自己紹介をされたが、真理子の頭はそれを十分に理解する余裕がなかった。ただ「相談をしている」という現実が、やけに浮き彫りになっているだけだった。

「今日はどのようなことでお悩みですか?」
エージェントの質問に、真理子は少し間を置いてから答えた。
「救急医として働いています。でも……このまま続けるべきかどうか、わからなくなってしまって……。」

自分の口から「わからない」と言葉が出た瞬間、真理子はその言葉が意外なほど自分にしっくりくることに気づいた。それは、自分の迷いを素直に認めた瞬間だった。

「なるほど、救急医というと、非常にやりがいがある一方で、体力的にも精神的にも大変ですよね。これまでのお仕事で、どんなことを感じてこられましたか?」
男性の声は静かだったが、真理子の中に眠る感情を引き出す何かがあった。彼女は少しずつ、自分が感じてきたことを言葉にしていった。

「患者さんの命を救うことは、もちろん嬉しいです。でも、その一方で、自分の生活がほとんど犠牲になっている気がして……。最近では、自分が何のためにこの仕事をしているのか、わからなくなることがあります。」

「では、真理子さんが一番大切にしたいものは何だと思いますか?」
その質問に、真理子は少し黙り込んだ。一番大切にしたいもの――それは何なのだろうか。

「自由かもしれません。」
そう答えるとき、彼女の声はほんの少し震えていた。初めて口にするその言葉が、彼女の中にどんな重みを持つのか、自分でもまだ掴みきれていなかった。

エージェントは穏やかにうなずいた。「自由は、とても大切ですよね。ただ、それを実現するために何が必要かは人それぞれです。救急医としてのキャリアを続ける選択もありますし、美容外科や別の分野で新たな道を模索することもできます。どの選択が真理子さんにとって幸せに繋がるのか、一緒に考えていきましょう。」

その言葉に、真理子は小さくうなずいた。彼女の心の中には、まだはっきりとした答えは見つからなかった。それでも、今日ここに来たことが、新しい一歩であることだけは確かだった。

面談が終わり、オフィスを後にした真理子は、青い空を見上げた。どこかで鳥の声が聞こえる。それは、自分に向けられた小さなエールのようにも感じられた。

まだ道は決まっていない。でも、進むべき方向はきっと見つかる。
そんな微かな確信を胸に抱きながら、真理子は次の一歩を踏み出した。


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