最高の喜び 33 最高の喜びとちゃう…わ
康輔こうすけも、不登校から、元の生活に戻ってからの、明るく、ゲラゲラ笑いながらの一年生生活。
時々、あんまり美味しいからと、給食を持って帰ってきてくれる。
お母ちゃん、食べてみて、僕これ大好きやねん。一口食べて！
あら！大好きやったら、康輔が全部食べてきたらええのに。
せやけど、お母ちゃんに食べて欲しいねん！
それは、サーモンの竜田揚げにナッツでコーティングされてた。
パクッと食べると
なぁー！美味しいやろ！お母ちゃん、嬉しい？
無茶苦茶美味しいやん！！
康輔の給食、最高やんか！！
めちゃくちゃ嬉しい！ありがとう康輔！
母ちゃんすんごく幸せや！
あたし、作った事ないわ！(笑)
なんて、優しい子なんやろ。
あたしがバタバタ動きまくってる毎日に
この子の優しさが身に染みるわ。
ずっと笑顔でおろ！おれるわ！
ありがとう康輔！
康輔と、あたしの母はすごく仲が良い。
あたしは宿題は見ないかわり、母が、帰ってきた康輔に、付きっきり。
で、丁丁発止で、やり合う仲(笑)見事に！
母にどんなに叱られてもへこたれへん！康輔。
今、康輔によく叱られてたよな！って、聞くと
叱られてるとは思ってなかったらしい。
言い返して、言い返されて、なんか、仲良しにかみえへんわ。
あんたら二人！
母が、急にいっつも歌い出す。手拍子と共に。
お〜とこだったぁら〜ひとつにかけるぅ〜♪
銭形平次♫
机で一生懸命宿題してたはずの康輔は、いきなり椅子の上に立って、歌舞伎の見栄を張るような踊りっちゅうか、やり出す。
一曲母が歌い終わると、康輔も、何でもなかったように、座って宿題の続き。
毎回、やってる。
もう、あたしその度に、爆笑やねんけど。
息がピッタリやわ。
面白すぎて、康輔のこの乗りが。
最高の2人やわ。
これがひょっとして、お笑いを目指す原点？
そんな頃、陰になり日向になりと
あたしを助けてくれてきた母が、突然
ゲボゲボとなって、血痰を吐いた。
びっくりして
母さん、大丈夫か？
大丈夫やで！ちょっと喉に引っかかってしもただけや。
大丈夫ではない。
色々病気を抱えてる母
毎月検診に行ってるけど、心配や。
ある日
妹から呼び出された。
家の近くに留めていた妹の車に乗り込むと、
びっくりせんといてな。あのな、母さん、癌が見つかってん。今日先生から、電話があって、詳しく調べたいから、入院お願いしますって。
なーんもゆわれへんかった。
込み上げる嗚咽、止められへん。
無理させてた…からや
目の前、真っ暗になった。
心が潰れる…
しかもかなり進んでるらしく、早くと、言われてるらしく。
でも、何のために毎月検診に行ってた？
なんでもっと早く見つけられんかったん！
そんなはずないのに、母は不死身であるはずと勝手な妄想があって、本当にあたしは愕然となった。
身体の奥の方が、絶望感でいっぱいになって、震えた。
これ聞いて家に帰れるかな？
どんな顔しよ？
母さん聡い人やからな。
たらふくそのあとビールを買った。
おふざけで、母さん飲もうや作戦しかない。
ええやん、呑もう！
ビールを飲んでいいか？
あかんに決まってる。でも、
これしか、あたしは泣いてる心、隠されへんかった。
そこから、母の病気との闘いとなっていった。
あたし、あたし、頑張るからな！！！！！！
母さん‼️
頼むから死なんといて…
頼むから…
母、62歳。