ズレてしまったら、その時は
お久しぶりです。
更新が途絶えてすみません。
残業や休日出勤が増え、まとまった時間が取れなくなったというのも一つの理由ですが、包み隠さず申し上げますと、言葉の持つ重みに耐えきれなくなった、というのが正直な理由です。それが自分が発する言葉であれ、周りが発する言葉であれ、私は言葉の力を甘く見ていたのだと思いました。意図していたことと違った受け取られ方をしてしまったり、自分の言葉で誰かを傷つけてしまったり、はたまた誰かの言葉を深読みして必要以上に傷ついてしまったり。それでもなお、インターネットで言葉を発する意味について考えていました。
100人中100人が納得する文章なんて、誰にも書けやしないのに、自分の文章について、こんな文章誰が読みたいんだとか、この言い回しは変かも知れないとか、これだとオチがないとか、嫌味や自慢に聞こえたらどうしようとか、好きなものの影響を受けすぎていてオリジナリティがないとか……色々なことを考えだしたらきりがなくて、そうなるともう何も書けなくなってしまいました。ついにはnoteのアプリを開くこと自体がノイローゼになってしまい、少し距離を取っていました。誰のせいとかではなく、単純に私一人の問題です。もっと肩の力を抜いたほうがいいんでしょうけど、もうそういう性分なのです。申し訳ありません。
前置きが長くなりましたが、今回はズレることへの恐怖をテーマに書こうと思います。
少し前にXで次の漫画が話題になっていました。
内容をあまり私の口から説明するのも野暮ですので、まずは是非本編をお読みください。
この主人公はとにかく「ズレて」います。
周りからの扱いがぞんざいなのは自分の服装が間違っているからであるという強く思い込む主人公。
しかし問題点はそこではありません。仕事をしていないにもかかわらず、ラフな服装で婚活パーティーへ行く誤った行動力、好きになった人を勝手に理想化し、一人で妄想を膨らませる一方通行で不健全な人間関係、自分の容姿は悪くないと言っている一方で、腋毛の処理すらしていない身だしなみに対する意識の甘さ、TPOが分からず職場に華美なワンピースを着て行ってしまう空気の読めなさ、「服はかわいい」の嫌味に気づけない鈍感さ、何の罪もないかきあげさんを自分の都合に巻き込み利用する身勝手さ……など。
彼女の服装が間違っているというのは、表面的な問題でしかなく、本当の問題はもっと深いところ、彼女の人間性そのものにあります。
彼女は人から見たら異常とも見られる行動を次々にやってのけます。けれど彼女にとっては、それら全てが正当な理由のある行動なのです。
そのようなメタ認知の欠如とも言える、社会と自分の間のズレを抱えたまま、自分がズレていることにも気づかず、28歳になってしまった可哀想な大人が主人公なのです。
物語のラストは、彼女が自分の間違いに気が付いたとも受け取れます。しかし、私はこの物語が終わってもなお、この主人公は変わることが出来ずに、きっとまたズレていってしまうのだろうな、と思います。
なぜなら私はこの漫画の主人公を見て、まるで自分を見ているようだ、と思い、いたたまれなくなったからです。
この主人公のように、空気が読めないくせに無駄に行動力だけはあるため、一人で暴走して、空回りして、周りから冷ややかな目で見られて……という経験が数えきれないほどあります。また、アイドルなどの他者に過度に入れ込み、妄想ばかり膨らませ、理想化している覚えもあります。そんな一方的に抱いているだけの好意は、健全な人間関係とは程遠いものです。そして現実の人間関係が上手くいかないのは容姿に問題があるせいだと思い込み、容姿にばかり執着し、その割にはどこか垢抜けずいつまでもダサいままですし、そして本当の問題点は見た目ではなく、会話のキャッチボールが出来ないコミュニケーション能力の低さだとか、人生経験が浅く年の割に幼稚な考え方とか、自分の事ばかりに気を取られて周りに気が遣えないところとか、そういうところがズレているんだろうな、という、うっすらとした自覚があります。
そんな自分が嫌いで、何度もそのズレを修正しようと、どうにか自分を変えようとしているのですが、気が付くと同じ過ちを繰り返してしまうのです。
ある程度そういった自覚がある分、この主人公よりは幾分か弁えていると思いたいのですが、この漫画を読んでこのズレた行動ばかり繰り返す主人公の思考回路を分かってしまう自分がいたのです。
ところが、この漫画の感想について調べると、「主人公の行動が何一つ理解できなかった」「本当にこんな人いるの?」「怖い」「気持ち悪い」という意見が多く見受けられたのです。
その日の夜はあまり眠ることができませんでした。
自分の言動が周りから見て、異常で、おかしいのではないのかと、不安でどうしようもなくなってしまったのです。周りから見た自分ってこんな感じなのかな、と。
それと同時にここまで人の感情を揺さぶり、読後に後味の悪さを残すこの漫画の表現力は、素晴らしいと思いました。
出来ることなら、まっとうな人間でありたいです。正しい服装をしていて、正しい受け答えが出来て、正しい行動が取れる人間でありたい。そういった正しさと言うのは他者との信頼関係を築く上で重要です。そしてそのどれもが間違っている、ズレた人というのは、現実世界でもSNSでも、どこか浮いた存在で、煙たがられ、周りからうっすら避けられるのが現実です。
ズレた人に優しくして、下手に好意を持たれても、何をされるか分かったものではないのですから、優しくするメリットもありません。逆にズレていることを指摘したところで逆上するかもしれませんから、そうなると結局のところ、最初から関わらないのが正解になってしまします。
人間は、やはり本能では群れを作る動物なのだと思います。
そして本能で群れの脅威になる存在は排除するのだと。
群れからあぶれたところで、人間は自分で餌を取ってくることが出来ますから、死にはしません。しかし常識とされる物事から遠のき、周りの目を気にしなくなり、自分だけの世界に入り込むことで、ますます社会とズレていく。そうなると、気が付いたときにはもう群れに戻ることは、二度と出来なくなるのでしょう。
どうにか辛うじて社会人をやれています。けれど、私はとっくにズレてしまっているのだと思います。
他人から冷ややかな目線を向けられた時、「ああ、今私は何か間違ったことをしてしまったな」ということには気付けるのですが、何が間違っているのか、問題の本質には気付くとこが出来ません。そして、もう大人ですから、どこが間違っているとか、こうしたらいいと解決策をわざわざ教えてくれるような人もいません。
結局のところ、自分の頭で考えるしかないのです。
どうか、これ以上ズレてしまわないように。
道に迷ったら、一度立ち止まってよく考えたいと思う日々です。
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