トンビにカメパンぬすまれた
YouTubeのおすすめ機能は好きだ。
基本的には再生した動画に基づいて興味がありそうな動画を表示するが、時々何の脈絡もなく、意外な動画を進めてくるサプライズがあるからだ。
深夜にYouTubeを開くと、大体「3分でミルクを甘くて歯ごたえのあるおやつにする方法」を執拗に勧めてくる。
しかし私は菓子を手作りするような人間ではない。そして、深夜にこの動画はお腹が空いてしまうのでやめて欲しい。
本題に入る。
今から1年ぐらい前だろうか。ある日偶然にも、「トンビにカメパンぬすまれた」がおすすめされた。
そっかぁ、ぬすまれちゃったかぁ。
シンプルなタイトルだ。
だが「取られた」でも「奪われた」でもない。「ぬすまれた」というワードのチョイスが良い。
このサムネとタイトルを見た以上、再生しない訳にはいかない。
動画は海辺から始まる。
男の子が亀の形をしたパン、カメパンを食べようとしている。
カメパンを頬張る男の子。
しかしトンビの襲来により、パンが奪われてしまう!
泣き出す男の子。
思わず笑いながらも男の子を抱き寄せるママ。
買ってきてあげると声を掛ける優しいパパ。
ただ、それだけだ。それだけなのに、カメパンをぬすまれた男の子の切なさに、家族の温かさがじんわりと沁みて、こみ上げてくる感情がある。結末は初めから分かっているのに、最初から最後まで目が離せない。
「幸福」という言葉を使わずに、幸福とは何か表現するならこんな動画になるだろう。そのぐらいこの動画は幸福に満ちている。
再生回数はこの記事を書いている現在でおよそ962万回。男の子がカメパンをぬすまれる光景が962万回も見られている。また、TwitterもといXで、「トンビにカメパンぬすまれた」で検索すると、11年前の動画にも関わらず、現在もこの動画のことを楽しんでいる人たちがいることが分かる。それだけこの動画には、多くの人を惹きつける不思議な魅力がある。
この動画に出会って以来、辛いこと、悲しいことがあると、この動画を開いた。どんなに悲しくても、この動画を見ると、なんだかおかしくて自然と笑顔になってしまう。
何度も見ていると、序盤に沢山の鳥が映し出されることや「カモメが来ちゃう、鳥が」とお母さんが言っているなど、ぬすまれるフラグが立っていることに気づき、より面白い。
疲れた日は、効果音や字幕がでかでかと入っていたり、チャンネル登録を促されるようなYouTubeらしい動画は、かえって疲れてしまうのであまり見ることが出来ない。
そういう訳で、私は今日もトンビにカメパンをぬすまれようと思う。
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