ポンコツ脳みそコンピューター
人間の脳はよく出来ている。けれど案外ポンコツだ。
さっきも冷蔵庫を開けたのに、何を取り出そうとしたのか忘れた。
多忙な一週間を過ごした。
自分が全力で出せるパフォーマンスが100%だとして、やらなきゃいけないことが120%ぐらいあって。そうなると、脳みそのメモリが不足して、CPU使用率が上昇し、フリーズを起こす。フリーズした以上強制終了するしかなくなってしまう。
そうやってベッドに倒れ込み、気づいたら朝になる。
ハードディスクの容量もパンパンだ。新しいことは覚えられないのに、忘れた方がいい過去の嫌な記憶のデータが容量を圧迫している。思い出しても自己嫌悪で辛くなるだけなのにその記憶が今の私を構成しているから消すに消せない。
それでもやるしかないので100%取り組んできた。ところが周りの優秀な人は私の200%ぐらいの事を易々とやってのける。生きている世界が違う……私の努力とは一体……。そういう訳で、この時代遅れのポンコツコンピューターは、最新機種のスペックの高さを目の前にして愕然とした訳である。
昨日ようやく全てから解放されたので、帰りにスタバでフラペチーノを飲み、洋菓子店でマカロンを買った。そのぐらいは許されるだろう。さすがに疲れた。
周りとの明らかな「差」を感じると、どうも憂鬱になる。
優秀な人はなんでそんな簡単な事も出来ないの?とけろっとした顔で言う。嫌味のつもりでなく、心から純粋にそう思っているのだ。しかし愚かな私も、愚かなりに頑張っているわけで。なんで出来ないんだろうと苦しくなる。
世の中、結果至上主義である。時間や製作費を掛けて、沢山のスタッフが関わった映画が「駄作だ」と簡単に切り捨てられてしまう。メダリストばかり注目されて、敗北した多数の人には目もくれない。
切り捨てられても、誰からも認められなくても、それでもやるしかないのである。生きるって辛いね。
何を取り出すか忘れていた冷蔵庫からは、昨日帰りに買ったマカロンが出てきた。どこまでも理不尽な世界にも、たまにはいいこともある。人生そんなに悪くない。
よし、やるか!
すぐフリーズするし、最新ソフトは対応していないし、ファイルを開くのにさえ時間が掛かるけれど。ポンコツ脳みそコンピューターは、今日もブーンと音を立てて起動した。
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