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ヒルクライマーがマラソンにハマった話(後編、レースレポート)


第18回湘南国際マラソン(もう11ヶ月も前の話…)

概要

湘南国際マラソンは、大磯ロングビーチをメイン会場として海沿いの国道を走るメジャーな大会だ。
コースはほぼ平坦で折り返しも少なく、タイム狙いの人にも人気の大会・・・だった
コロナ禍を機に給水所に紙コップを用意しない「マイボトルマラソン」という取り組みを始めたことでガチ勢には敬遠されがちな大会である。
参加者は各々ボトルやカップを用意して走ることになるが、代わりに給水所の間隔が極めて短いため好きなタイミングで給水可能である(後述)。
ここに至るまでの過程は前編をどうぞ。

当日、スタートまで

自宅の最寄からは二宮駅まで電車で移動。車内はマラソン参加者だらけである。すでに会場の匂いがする。ホットクリームを塗るのは後にしてくれませんかね・・・

夜明けの相模湾


駅に着くと、正月の初詣でも見たことがないような大混雑に気圧される。2万人規模の大会というのは初めてだが、こんなにも人が多いものか。

どれがバス待ちの列なのかすら分からない

シャトルバスを待っていてはいつになるか分からないので、大磯ロングビーチまではアップを兼ねて歩いていく。
会場に着いたらトイレ列に並んで用を足し、着替えたらもうスタート整列時間になっていた。時間に余裕を持っていたつもりだが、結構バタバタしてしまった。

思ったよりも気温が高いので、ウェアはノースリーブのランシャツにポケット付きハーフタイツ。給水用に水を半分入れた500mlのソフトフラスクをタイツのウェストポケットに装備した。アームカバーやグローブなど防寒具はすべて外して出走となった。
スタートブロックは一番前。スタート地点までの移動の間にじわじわと前に入れてもらい、西湘バイパス上のスタートラインではたぶん100番目ぐらいには並べていたと思う。

目標は最低限サブスリー、現実的なラインで2時間50分、理想は2時間45分
理想を狙ってキロ3分50秒で走り、後半潰れても現実的なラインに留めたいという想定。

スタート〜10km

さあ、号砲を受けていよいよスタート!
号砲から実際にスタートラインを抜けるまでは10秒も掛からなかった。ネットタイム計測とはいえ、速い人が作る集団に乗り遅れるのは損なのでこれは幸運。
ウォーミングアップもほとんどしていないので、とりあえず最初は突っ込まずキロ4分ぐらいを目安に入る。
が、意外と集団がバラけるのが早く1km過ぎには周囲から人がいなくなってきた。
もちろん先頭集団は既に遥か彼方、その後ろにいくつか小集団が見えそこからはバラバラに選手が続く。

少ししたら前を行く小集団に追いついた。先頭の選手のゼッケンを見ると2時間50分ペーサー、つまりこの集団は4分/kmなのでここに入ってしまうのはダメ。じわりと追い抜いて、そこからはしばらく一人旅になる。

もっと大きな集団ができるかと思っていたが、実際には単独走に近い状態になった。するとどうなるか。
沿道の声援を一身に受けられる
のである。
これは嬉しい誤算。単なるアマチュアなのに、沿道には箱根駅伝と見まがうような応援の人々が並び、ガンガン声援を送ってくれる。
なんだか嬉しくなってきながら5㎞通過、19分18秒。ほぼ想定通りのペースで、特に無理している感覚もない。このまま行こう。

7㎞手前で湘南大橋を渡るためにしばらく登り区間。ここは無理せず・・・と思ったら前方に小集団が見える。2時間45分ペーサーが率いる集団のようだ。
単独走は楽しいが、集団に入っていた方が体力も精神力も温存できるのは間違いない。あの集団に入れてもらって、そしたら休もう・・・と思いつつしばらくペースを維持する。湘南大橋の下りで無事に集団に追いついた。

ここで最初の補給、ACTIVIKEのスピードジェル。一個で100kcalとカフェイン25mgが摂取できるのでこれを7㎞ごとに摂取する作戦だ。もともとはサイクリスト向けの補給食だけど、ランニングでも粘度低めで飲みやすいのでお勧め。(PR案件ではない)

是非使ってみてほしい

集団に入ったら狙った通りかなり楽になった。しばらくは集団に引っ付いて、一旦集中力も切って沿道でも見ながら走ることにする。

10km〜中間点

10㎞通過は38分40秒でほぼイーブンペース(ペーサーのおかげ)。
ちょうどアップも終わって心肺もよく回り、気分がいい。無駄な動きをしないように注意しながら走る。
防砂林に囲まれた国道134号をひたすら東へ向かうこのパート、単調で飽きないか心配していたが沿道の応援が全然途切れないので全く飽きることはなかった。仮装している人とかもいる。
給水所が200mに一回ぐらいある(常に視界に給水所があるレベル)ので、時々集団から外れてソフトフラスクに水を入れる。気温が意外と高いので水分摂取は重要だ。集団のみんなはあんまり飲んでないけど大丈夫かな・・・

14㎞でスピードジェルを一個飲み、水を補給していたら15㎞通過。この5㎞も19分16秒でいいペースを維持している。脚も全然きつくないしむしろ余裕である。
防砂林を抜けると陽キャ感溢れる鵠沼海岸に出る。折り返しがだんだん近づいてきたころで先頭とすれ違った。多分今の時点で10分差ぐらいだろうか?やっぱり先頭はすごいなぁ速いなぁと他人事のように考えながら19㎞手前の折り返し地点を抜ける。
この辺りはひと際声援が多い。中央分離帯にいるボランティア大学生たちもテンション高く手を振ってくれる。こちらも振り返す。マラソンってこんなに楽しかったのか。

19㎞過ぎの関門には補給食コーナーがあり、MEDALISTのエナジージェルが置いてあったのでありがたく頂く。味は甘すぎず食べやすいが、ゼリーに近い硬めの食感は好みが分かれそう。キロ3分50秒ペースで走りながら食べるのはちょっとやりづらかった。ゆっくり長く走るときにはいいかもしれないなぁ(マラソン走りながらレビューするな)。
15㎞から20㎞は19分18秒で相変わらずイーブンペース。

中間点〜30km

中間点を過ぎたところで、少しずつペースが落ちてきているのが気になりだした。それまでのキロ3分50秒~53秒から、段々とキロ4分に寄ってきている。
給水のタイミングで(それまでは後ろに抜けていたのを)前に抜けてみて誰か同調しないか様子を見るが、特に誰も上げたくはなさそう。
反対車線には途切れることなくランナーが続く。手を振ったり声を掛けたりしながら進む。

25㎞までの5㎞は19分42秒とだいぶペースが落ちてきた。心拍数も155くらいだったのが150を割るようになって、正直かなり余裕がある。
ここで一つの迷いが生じた。このまま温存するか、飛び出すかだ。
マラソンは30㎞からだとよく言われる。今飛び出したらラストで潰れるのではないか・・・しかし余裕を残したままフィニッシュするのも勿体ないし・・・

・・・これで潰れてもいい笑い話になるじゃないか。行けるところまで行こう!
27㎞過ぎ、スピードジェルを口に放り込み、下りの勢いを利用して集団から抜け出す。あと15㎞だし行けるでしょ!というロードバイクで距離感を破壊された思考回路がそう判断したのだ。15㎞は長いだろ、冷静に考えて。
27㎞から28㎞は3分42秒、28㎞から29㎞は3分39秒。一気に呼吸が荒れるが、脚はまだ持ちそうだ。これは行けるかもしれない。
そう思った瞬間、前方から猛烈な風が吹きつけてきた。

30km〜フィニッシュ

復路の湘南大橋、上りに差し掛かったところでちょうど強烈な向かい風となった。天気予報から後半の向かい風もある程度は予想していた。だが、こんな爆風だとは。
29㎞から30㎞の1㎞は3分49秒、この5㎞は19分06秒と悪くないが、主観強度は爆上がり。心拍数が165を超えて危険域に突入した。
34kmあたりの給食ポイントには美味しそうな和菓子が置いてあった。食えるかそんなの(和菓子に罪はない)。

その後はまた防砂林に多少守られるが、西湘バイパスに上がると遮るものもなくひたすら風に煽られる拷問タイム。
10㎞部門の最後尾に追いついたので、声を掛けて盛り上げることで自分自身も鼓舞する。35㎞地点、この5㎞は19分15秒と風に苦しみながらも何とか維持してる。もちろん体力は犠牲になっている。
ポケットに残る最後のジェルを摂取して進むが、折り返し地点が遥かに遠い、辛い・・・

会場の前をいったん通過する38㎞から最後の折り返しとなる40㎞手前当たりでは、キロ4分を超えるペースにまで落ちる。体感ではトボトボとジョグしているぐらいに進んでいないような気持ちだが、それでもサブスリーペースではある。40㎞までの5㎞は20分07秒
折り返したら当然爆風の追い風でまた一気にペースが上がる。もう脚は全然動かないが、シューズの反発を信じて、リズムだけは崩さないようにラスト8分を耐える。
ラスト1㎞を切ってもう一度会場の前を通り過ぎ、裏手に回ってからフィニッシュ地点へ向かう。ここに激坂があるのはちょっと残酷すぎませんかね・・・

さあ、いよいよ終わる。
声援に囲まれながら、両手を広げてフィニッシュゲートに飛び込んだ。

スマホ動画からの切り抜きなので画質は許して…
カメラマンに向かってアピール!

人生二度目のマラソンは、自己ベストを30分更新する2時間43分33秒で終わった。

フィニッシュ後

フィニッシュするとすぐに完走メダルがもらえる。
預けた荷物を引き取りに行くが、そこまでは結構急な階段を20段ぐらい上らないといけない。
レースに集中している間は何ともなかったが、フィニッシュしてみるとこれが全然歩けないのだ。
何とか手すりに摑まって階段を上り、荷物を受け取ったら来た時の倍ぐらい時間をかけて階段を下りる。どこが痛いとかよく分からない。多分全部。

屋台で食べ物を買ったりしてしばらくうろうろしていたらだんだん動けるようになってきた。広い会場はクールダウンにうってつけということか。

安堵と解放感が溢れる会場

Runtripの大森さんを見かけたので「いつも見てます!」と声を掛けたらライブ配信中だったようでいきなりインタビューに突入してちょっと喋った。脳に酸素が回っていない状態なのでちゃんと喋れていたかは怪しい。普段からか。


その後は友人(奥様が出場していた)にピックアップしてもらい一緒に回転寿司を食べて解散した。

ご褒美!

駅まで延々歩く羽目にならずに本当に助かった。ありがとうございました。

筋肉痛や謎の関節痛は1週間ぐらい続いて、気づけば消えた。
後日出た正式リザルトでは総合23位だった。30~40位ぐらいだと思っていたので、表彰に絡む訳でなくても素直に嬉しい。

単なるイーブンペースに見えるが、裏側にはドラマがある


これを書いている今は脚を痛めていて満足な練習はできていないが、いつかこのベストをまた更新できるよう地道に頑張りたい。

またまたこんな長文を読んでいただき、本当にありがとうございました。
マラソン楽しいよ。


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