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長編連載小説『レター』第88話。

 聡美の話は、これぐらいにしておこう。死んだ人間の事を言っても、仕方ない。俺が言いたいのは、老人介護などが、相当難しいという事だ。伯母の死に方は、実際哀れだった。作家なら、分かる。伴侶を失った男の心情も……。そして、全てを投げ打った伯父の覚悟も……。俺の綴るレターは、伯母の事を書くものじゃない。伯母は亡くなっている。しかも、アルツハイマーで……。恵三の認知症と関連がある。伯母の死は、伯父にダメージを与えて、尚且つ、余りある物だった。伯父は作家じゃないし、俺みたいに、物なんかを書いているわけじゃない。物書きはいろんな事に、ベクトルが向くのだ。俺自身、寛子や望と暮らしながら、それを感じていた。具に。実際、世の中、いろんな人間がいて、回っている。裏だって、当然あるのだ。(以下次号)

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篠﨑俊樹
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