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銃撃RunでBoo ー第1話ー
心のスイッチが切り替わった。銃撃音とともに。右臀部のホルスターに手をしのばせる。青空とエンジン音。唸り声と銃声。壁に隠れ、獲物を待つ。空を無軌道にかきむしるは敵軍の虫型ジェット機。
「弾はあと6発。しくじれないやな。」
円少尉は呟いた。彼は36時間飲まず食わずでこの戦いに突入していた。18時間を越えたあたりから体は軽くなり、空腹は遠のいた。無線機に呼びかける。
「こちら、円少尉。第8通りのブラック・ビルディングの影に潜伏中。援護できる者はいるか?」
「こちら、螺旋准尉。目下、ブラック・ビルディングの通りの真向かい雑居ビルに潜伏中。」
「でかした。虫機がこの辺りに6機ほど徘徊してる。1機ずつ沈めよう。お前は近づいてきた虫機を撃ち落とせ。オレは援護に向かってきた奴をしとめる。」
「ラジャー、少尉。」
「お前、弾はあと何発だ?」
「…6発です。」
「オーケー。オレもあと6発。空気銃で目ぇくらますしかねぇな。」
「ラジャー、少尉。では体制にはいります。」
そのやりとりから20秒後、ブラック・ビルの半径100メートル上空に1機、入り込んだ。螺旋は空気銃を鳴り響かせた。虫機は僅かながらよろめいた。その一瞬を螺旋は見逃さなかった。
「ボッ!」
胸部を斜めから撃ち抜いた。上空7、80メートルから地面に叩きつけられ、虫機は小爆発を起こした。
すると残りの5機が一斉にブラック・ビルめがけて押し寄せてきた。
「よりによって全員来ることねぇのになぁ。螺旋、残り我々で11発。敵は5機。それも一斉にだ。どうすればいいかわかるか?」
「わかりません!」
「こういう時は散るんだ。方針は変わらない。1機ずつ静かに沈めるぞ!散れ!」
「はいっ!」
ブラック・ビルディングを後にし、3区画先へ身を隠した。ここにきて円の利き手の指先は痙攣が止まらなくなっていた。
「畜生…。右手は無理か。左手でいくしかない。」
円は心もとなく視線を世界に切り替えた。
「奴らはどこへ行った?」
「ボッ!」
円の肩を銃弾がかすめた。
「地上…!上等!」
円は一目散にビルの影に陣取り、痙攣中の右手で空気銃を連射した。空気銃を見分ける訓練はどこの軍も腐るほど行なっていたが、体に出る寸分の反応は幾多の訓練、実践をくぐり抜けても拭い去ることは難しかった。敵はほんの少し前傾姿勢を強めた。
「ボッ!」
「フーッフーッフーッ。あと4機。」
円の心身に極限が一気に押し寄せた。午後3時。青空は笑った。
<続く>
プリーズ・リリース・ミー!