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英雄達の見る景色

英雄たちの見る景色
英雄たちの放つ輝き
千差万別どこまでも

あるところに、人々を魅了するスーパースターの奏という男がおったそうな。彼は爽やかな闘志に溢れ、人々を楽しませることにこの上ない喜びを感じる性分だった。そのための努力は惜しまないまさにスーパースターの代名詞のような存在だった。

はたまた同じ地にもう1人のスーパースターの宗がおったそうな。彼はストイックかつ背中で闘志を見せるその圧倒的なプロフェッショナリズムで人々を魅了した。自分を追求することが何よりの至福で誰よりも正直な男だった。

両者タイプは違えど国民はこの二人の英雄をどこまでも愛していた。勿論、万人受けするのは奏であったが、宗もその孤高のカリスマ性と仕事に対する真の情熱と飾らない人柄で人々の憧れの的だった。

ある日、そんな二人が金星公園の噴水前でバッタリと出会った。奏と宗はなんとも美しい笑顔を互いに向けた。彼らは噴水前のベンチに腰掛けた。

宗は奏に尋ねた。
「どうしてあなたはそんなに人々を喜ばせることにこだわるんでしょうか?」

「どうしてだろうね。でもね、とにかく私も色々と言われることは多いよ。心からやってんのか?とかね。私の行い全てが真実とは言えないと思う。当然、愛想笑いや我慢もするからね。けど自分の表現によって観客が湧き上がる瞬間に私は最大のエクスタシィを感じるんだ。それは間違いない。そんな時に私は空を飛んでるような気持ちになる。本当に飛んでると錯覚するくらいの気持ちになるんだよ。じゃあオレの方からも質問していいかな?君はどうしてそこまで自分を追い詰めて人々を圧倒するんだろう?そこにエクスタシィはあるのかい?」

「それがですね、そこのエクスタシィが物凄いんですよ。ボクだってプレッシャーに弱いし好き好んで自分を追い詰めてるわけじゃないんです。ただそこを越えると、越えるとですね、あなたと同じ状態になるんです。自分がすべてのものから解き放たれる。そんな気持ちになるんです。この気持ちは他の何かで得られたことはないんです。まじなんです。」

「素晴らしいね。私と同じだ。スタイルや表現は違えど求めてることは我々同じだね。ところで私が人々を魅了出来た時にはすごく懐かしい気分にもなってね。突飛な話をしよう。このイメージが幼い時からずっとあるんだ。私は大きな雲の一部なんだ。だけど自分が何者なのかその時はわかっていない。それでも天にも昇るような気持ちっていうか、その雲の一部であることは素晴らしいものがあるんだ。しかしある時、私はそんな山も谷もない幸福だけの一辺倒な日々に飽き飽きしてね。その雲から離脱したんだ。勢いよくボンッ!って地面に叩きつけられた。そして水に映った自分の姿をそこで初めて見たんだ。私は金閣寺のような絶世の黄金をまとった雲だった。そのあと周りにいた雲たちも私を真似して雲の塊から飛び出してさ。お前は救世主だ!ファンタスティックだ!って子供のような目で言うんだよ。」

宗は静かに口を開いた。

「私もほぼ同じイメージを持ってます。ただ一つ違うことがあって、私の場合、その雲の一部であることは素晴らしいどころかうっとうしくて不快でしょうがなかったんです。それでも雲の塊からは抜け出したくてもなかなか抜け出せなかった。けど、ずっと諦めなかったんです。そしてある日雲から抜け出すことに成功したんです。私のエクスタシィはその時の解放感にそっくりなんです。」

「素晴らしい。我々、最初からこの話をすればよかったな!」

「最初からは無理ですよ(笑)」

2人は子供のように笑った。






プリーズ・リリース・ミー!