アナログおじさんのデジ活日誌『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史』
開発費用は4000億円台半ば。
スカイツリーにすると、建設費7本分。
動員した人員は、35万人月。
2011年6月から2019年7月という長期間にわたった、みずほ銀行のシステム統合の内幕が描かれています。
アマゾンでは、おそらくエンジニアの方たちだと思いますが、「もっとドロドロした暴露本と思っていたが期待外れだった」というレビューが目立ちましたが、アナログおじさんにとっては十分ドッロドロな濃い内容でありました。
全体は3部構成となっており、
1部 2019年に完成した新システムの概要と開発までの経緯
2部 2011年震災直後のシステム障害
3部 2002年経営統合直後のシステム障害
と時間を遡る中で、問題点を明かにしていきます。
システム用語も多く、多少??となったところもありますが、次々とピンチが訪れるプロジェクトX(古いか)的な展開なので、読み物としても面白いです。
これだけの長期化、そして費用が膨らんだ原因もたくさん挙げられていますが、私が気になったのは以下の3点。
①プロジェクトマネージャーが不在だったこと
②合併する3行+各コンピューターメーカーがそれぞれの利権、主張で動いたこと
③経営陣のシステムへの理解不足
①エンジニアではないですが、私もシステム更改に関わったことがありますので、プロジェクトマネージャーの重要性は理解できます。
ただ、指摘するのは簡単ですが、その役割を担える人材、つまりシステムに精通し、かつ現場業務も理解している人材が、日本企業にどれくらいいるんでしょうかね。
おそらく、数えるほどではないでしょうか?
②については、「戦略なき統合」が原因と書かれています。
1行が吸収するかたちではなく、(戦略がないがゆえに)互いにイニシアチブを競うような状態だったため、混乱は必然だったと思われます。
これも、みずほに限ったことではなく、部門ごとにシステムやメーカーを最適化してしまうのは、よくあることだと感じます。
そして、③経営陣のシステムへの理解不足。
「システムは正常に動作して当たり前」
「何かなければ4000億円の投資の決断はできない」などと指摘されています。
確かに、システム投資については、「これでいくら売上が上がるんだ」と聞かれることが多いです。
しかし、この銀行勘定系システムように、効果が見えにくい、しかし超重要なシステム投資は経営陣でなくても理解が難しいと思います。
私もウェブを担当するまではそうでした。
この根っこには、そもそも日本企業がシステムを「投資」ではなく「コスト」と考えているからではないでしょうか。
ここをあらためない限り、海外との差は開く一方ではないか。
そんなことを考えさせられた一冊でした。