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イエスの痛み
気が付くと、僕は磔(はりつけ)にされていた。
手と足が痛い。
見ると、広げた両手の手の平に鉄の杭が打ち込まれ、木の十字架にとめられていた。
心臓が鼓動するたびに痛みが走り、杭が穿(うが)たれた穴からは血がドクドクと流れていた。
しかし、それよりも痛いのは、足だ。
重ねられた足の甲にも杭が穿たれていたのだ。
そこに全体重がかかって死ぬほど痛い。
体重を分散させようと腕に力を入れるが、手に打ち込まれた杭が痛くて・・・!
ああ、痛い・・・こんなことはやめてくれ・・・どうしてこんな残忍なことを・・・!?!
僕は声に出さずに叫んでいた。
槍を持った兵士が、下から見上げ笑っている。
そして、一瞬、怖い目をしたかと思うと、その槍を突き上げた。
その剣先は僕のわき腹に刺さり、ろっ骨をかすめて肺に到達した。
グハッ・・・グハッ・・・
食道を血が駆け上がり、口から飛び出した。
痛みが消えた。
僕は、槍を持った兵士を見て嗤った。
高らかに嗤ったのだが、実際は、泡が血に混じってブクブクと口から出ただけだ。
死にたくない!
僕は痛切に思いながら眠りに就いた・・・・・・・。
そして目が覚めた時、僕は泣いていた。
声を出して泣いた。
キリストの痛みを想って泣いた・・・・・・。
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数年後、僕は仲の良かった牧師さんに告白した。
牧師さんは涙を流して聞いてくれた。
あなたは幸運な方です。夢でもイエス様になれたのだから。
あなたが羨ましい・・・牧師さんは言った。
私もイエス様の痛みを分かち合いたい・・・そう言って泣いた。
結婚式は教会で上げたけど、聖書も一回読んだ切り。
一応、クリスチャンとは名乗ってはいるものの、仏教徒でもある。
神道も否定していないし、道教も師事している。
そんな僕が、何故唐突に、何の脈絡もなくこんな夢を見たのだろう。
何か意味があるのだろうか。
それは未だに謎のまま・・・。
実話です。