鍵のない部屋(27歳貧乏絵描きの住処)閑話休題 この世に貧しい芸術家はいない
一尾60円の秋刀魚を買う。
アパートの廊下で、心を込めて七輪で焼く。
白い煙が真っ青な秋空に吸い込まれてゆく。
こんがりと焼き上がった秋刀魚を大きな白い皿に載せる。
バザーで買った100円の大判の皿。
30センチある秋刀魚を載せても、はみ出ることはない。
そろそろカセットコンロで焚いていた飯盒のご飯も出来上がるころだ。
飯盒の蓋をしゃもじで叩く。
コッコッ・・・ いい音だ。
ご飯が立って巣が出来ているのが目に見えるようだ。
火を止め、逆さまにする。
蓋との隙間からいい薫