「僕と野球と息子の日記」⑤
ある日の練習中、監督に呼ばれた。
「長男君、皆んなとは別メニューで、ボチボチやろうか?」
監督なりの気遣いを提案してくれた。
その優しさが嬉しくて、夜、長男に話をしてみた。
「監督が、皆んなとは別メニューでやろうか?て言ってくれたよ。」
長男は少し沈黙した後に、強めの口調で答えた。
「皆んなと別メニューとか、そんなのは嫌だ!僕だって、僕だってレギュラーになりたいんだ!」
僕はずっと息子を見てきたつもりだった。
お世辞にも、運動神経がいいとは言えない。
病気もした。
こいつには無理だ、
こいつはもう、ボチボチやってくれればいい。
ましてやレギュラーなんて、到底無理だ。
僕はそう思ってた。
いや、僕がそう思ってただけだった。
息子は何1つ諦めてなかった。
僕が勝手に決めつけてただけだと知った。
「…わかった。無理はするなよ!」
息子は皆んなと競い合いたいんだ。
正々堂々と、レギュラー争いをしたいんだ。
僕は少し、自分を恥ずかしく感じた。
息子は成長してるんだと、強く感じた。
同じ頃、次男も小学3年生でスポーツ少年団に入る事になった。
こちらは、優しさの塊りの長男とは違い、
いわゆる「やんちゃ」なヤツで、先生から頻繁に電話はあるし、揉め事もしょっちゅう、その割に団体行動は苦手で、いつも1匹狼。
「協調性」を学ばせたくて、野球に入れよう、と考えた。
当然、反発するかと思いきや、あっさりと
『やるわ!野球する!」と、あっさり入部。
そしてこの数年後、恐るべき身体能力を発揮する事になる。
長男が六年生になり、次男が四年生になったある日の事。
練習試合に途中出場した長男。
仕事中の僕に、嫁から電話が鳴った。
「長男、ホ、ホームラン打ったよっっ!!」
かなり格下の相手だったとはいえ、こんな嬉しい事はなかった。
と、同時に、なんでこんな時に仕事してんだ!と、悔しくて仕方なかった。
その日はとにかくお酒が美味しかった。
そして、六年生が背番号が決まる日。
もちろん、そんなに甘く考えてはなかったけど…
続きます。