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04 文系脳と理系脳? 本当にそんなのあるんですか!?ついでに「放射性同位元素とは何か」

[忙しい方への要約]
文系脳、理系脳などというものは存在しない。
科学的に言えば、文系的な知識や考え方に馴染んでいる人とか理系的なものに馴染んでいる人とかいうことはあるし、論理性優先かイメージ性優先かといった意味で、左脳と右脳の優先性には、人それぞれの違いがあるけれども。
「自分は文系だから」とか「理系だから」とか言った思い込みを捨てると、視野が拡がって人生楽しくなりますよ!

・『眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー』とムラサキさんのこと

先日ムラサキさんの企画『眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー』
https://note.com/murasaki_kairo/n/n46d0aeafcea6
に参加させていただきました。

お題がラジオだったので「蒸気ラジオのささやかな航跡」
https://note.com/tosibuu/n/nd779f5e5ad1e
という散文詩を書いたのだけど、ラジオと聞いて初めに思いついたのは、ラジオアイソトープという言葉でした。

日本語では放射性同位元素とか放射性同位体といいますが、これをもじって登場人物の一人の名を「放射性同意元素」としたのです。

そしたら、ムラサキさんはとても几帳面な方なので、ぼくがいろいろと使った科学系の言葉をきちんと理解しようと努力をしてくださって、けれど「自分のような文系脳には難しかった」との感想をくださったのでした。

ところが意外なことに、ムラサキさんの過去作「パープル」
https://note.com/murasaki_kairo/n/n500e3db35211
を読んだところ、次のような一節を見つけたのです。

❝❝
人体の塩分濃度は約0.7%。対して海水の塩分濃度は3%である。
海水を飲むと血中の塩分濃度が上がり、浸透圧を保つために細胞中の水分が血中に排出されてしまう。その結果、細胞が脱水を起こし、原形質が破壊される。
人体の各所に酸素を運ぶのは赤血球であるが、海水を飲むと赤血球も破壊されるので、人体は酸素を運ぶことができなくなる。だから呼吸困難を起こして死ぬ。
❞❞

実に科学的な説明ではありませんか。

これを読んでぼくは思いました。ムラサキさんは文章を書くことや映画・演劇など、文系的素養は豊富に持ってるけれど、理系的素養はそれほど持たない方のようですから、ネットでさっと検索したくらいでは放射性同位元素の意味がよく分からなかったので、自分のことを文系脳といって謙遜なさっていたのだなと。

確かに科学的な話題に馴染みがあるかどうかで、ない場合は文系みたいな大雑把なくくりというのは、便利なものではありましょう。

けれども脳の働きまで文系と理系で違うのかというと、それはやっぱり違うよなと思ったのでした。

・文系脳と理系脳?

右脳はイメージ性、左脳は論理性を扱うといった脳の中での役割分担はありますし、どちらが優位性を持って働いているかということは人それぞれに違いがありますから、イメージ性優位の人もいれば、論理性優位の人もいます。

けれどもこれは必ずしも文系・理系とは直結せず、文系でも論理性を得意とする人もいれば、理系でもイメージ性を得意とする人もいるわけです。

興味の対象が文系的か理系的かという違いこそあれ、脳の働き方がそれを決めているわけではないということです。

……などと理屈をこねるようなことを書いていると、「なるほどきみはやっぱり理系脳だね」と言われそうな気もしますが、まあそれはそれでいいとしましょう。

それよりも大切に思うのは、そもそも文系や理系という区別にどれほどの意味があるのか、という話です。

欧米では、文学か経済学か、物理学か生命化学かといった分野ごとの区別はあっても、文系と理系というようなくくり方はしないとも聞きます。

多分この辺りは、日本の学校制度の歴史と関係があるのでしょう。

そんなような文脈で考えると、ムラサキさんは自分のことを文系脳と言いながらも、「海水を飲むとなぜ人は死ぬか」ということをきちんと科学的に説明できる方なので、文系とか理系とかいう言葉にとらわれずに、自由に知識の領野を散策する風雅な方だなと感じます。

ぼくなどは、文系の分野にも興味はありますが、他者に対する共感能力や関心が低めなもので、どうかすると「理系的」な論理優先の非人間性が全面に出たりしがちなところがあるので、反省することしきりです。

それで、これを読んでくださっている皆さんの中には、科学や数学は苦手だなと思う方もいらっしゃるでしょうが、そういう方は不幸にも学校で、よい先生に出会えなかったということもあると思うんですね。

科学的なことをおもしろく分かりやすく説明できる人は、決して多くはありませんから。

ですから、本を読むのが好きな方なら科学分野の本を読んでみたり、動画を見るのが好みならyoutubeでもtedでも、いろいろなメディアを使って知識の幅を広げていくことは、人生をさらに楽しくしてくれるに違いありません。

大学ではコンピュータのソフト関係を学んだぼくは、若い頃はsf小説ばかり読んでいましたが、還暦も近くなってみると、日本の古い小説もおもしろくなってきて、青空文庫を使って「大菩薩峠」を読んだり、芥川や太宰などを読んだりして、晩年に差し掛かりつつある人生を楽しんでおります。

・元素って何?

最後に放射性同位元素について、少し説明をしますので、興味のない方は飛ばしてください。

とはいえ、原子力という技術を考えるときには重要な意味を持つ概念ですので、少しでも多くの方が正しく理解してくたさると、大変ありがたいのですが……。

さて、世の中のすべての物質は「元素」と呼ばれる「純粋な物質」から成り立っています。

水素とか酸素とか、鉄とか金、ウランやプルトニウムとかいうのが、元素ですね。

で、水素という元素は、これを元素記号でHと表しますが、この元素の最小単位が原子と呼ばれます。水素が1グラムあると、そこには水素の原子が6.02x(10の23乗)個あることになるんですね。

10の23乗なんてイメージできるかよと、文系の方はこの辺で頭が痛くなってくるかもしれませんが「原子1個はすんごく小さいんだな」くらいに思って、適当に飛ばし読みしてください。

でこの水素の原子というのは、普通1個の陽子というものの周りを1個の電子が取り巻いております。

この陽子の数が元素番号というやつで、水素の元素番号は1、この宇宙で1番単純な元素ということになります。

酸素は元素記号Oで元素番号は8、鉄はFeで26、金はAuで79、原子炉の燃料になるウランはUで92、原子炉の副産物であり長崎型原爆の材料になるプルトニウムはPuで94となります。

以上が、元素についての予備知識です。

・同位元素とは

ここから、ようやく同位元素の話になりますが、水素は原子番号1で、水素の原子には陽子が1つあると書きました。

同位元素の同位というのは「原子番号が一緒」という意味です。

同位うことかというと、いや失礼、どう言うことかというと、原子番号が一緒の、同じ水素という元素でも、重さの違う3種類の水素があるのです。

このそれぞれの水素を、水素の同位元素とか同位体とか呼ぶわけです。

で、普通の水素のほかに、二重水素と三重水素(これをトリチウムとも呼びます)というのがあって、同じ体積の重さを測ると、重水素は2倍、三重水素は3倍の重さがあるんですね。

どうしてそうなるかというと、水素原子は陽子1つ電子1つでできてますが、重水素は陽子1つに中性子が1つおまけでつき、三重水素には中性子2つがおまけでつきます。

電子の重さはほぼゼロで、陽子と中性子はだいたい一緒の重さなので、重水素、三重水素は、水素と比べると2倍と3倍の重さになるのです。

これで同位元素(アイソトープ)の説明は済みました。

・放射性同位元素とは

最後にラジオ・アイソトープ、放射性同位元素の説明です。

放射能は英語でラジオアクティビティといい、元素がもつ放射線を出す能力のことです。

水素という元素には、普通の水素、重水素、三重水素の3種類の同位元素があると書きましたが、このうち水素と重水素には放射能がありません。三重水素(トリチウム)にだけ放射能があるのです。

重水素はそもそも自然界にほとんど存在しませんが、放射能がないため、人体に対して特別な有害性はありません。
放射性を持たない、ただの同位元素ということになります。

三重水素(トリチウム)は放射能を持つため、これが水素の放射性同位元素ということになり、人体に対して有害性があるのです。

水素は燃やせば水になる我々の生活と関係が深い元素ですが、その放射性同位元素である三重水素については、その危険性を十分検討する必要があるわけです。

三重水素(トリチウム)も自然界にはほとんど存在しませんが、福島の原発事故で冷却のために海水を使ったことから大量に発生し、この汚染水を海洋に放出してよいかどうかが問題になっている物質です。

放射能があり有害で、水の構成要素として人体に取り込まれるものなのですから、海水中に放出などすべきではないのですが、多量の汚染水をどうするかという現実的な問題もあり、これをどう判断するかは、人類の未来を左右しかねない問題にも思えます。

科学技術にまつわる問題は、素人には理解しにくいのでどうしても他人任せになってしまいがちですが、社会の行く末を決めるのは、ぼくたち一人ひとりの意識に違いありませんので、この記事がこういった問題に関心を持つきっかけになることがあれば、これにまさる幸せはありません。

* * *

てなところで、この記事はおしまいです。

それではみなさん、ナマステジーっ♬

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