13 雑然の命│随想詩
ぼくの命は雑然としている。
何もかもが中途半端であり、とっ散らかっている。
おそらく一生このままだろう。
と思ったが、そう思うのはやめる。
この野放図にばらけていくぼくの関心が、ある日、美しく白き雪の結晶へと向けて、空気中の微塵の埃のひと粒から、軽々と成長を始めないとも限らないからな。
けれど一生このままでもいいのだ。この現状肯定こそがすべての基礎なのだ。今ここでの現実を認識しないことには、明日の変革は始まらないのだ。
雑然として粗雑に禅定を試みるのだ。
雑然として雑駁な前進を続けるのだ。
雑然にして雑音まみれの世界の中で。
腹を下したかのように、頭の中から漏れ出すゆるい想念の流体によって、硝子の向こうで密林を形作る、ミクロの半導体素子の網状組織に、魂の雄叫びを塗りたくってやれ。
無理に整然とさせようなどとは、あほらしい話で、ばかばかしい努力で、不条理な圧力じゃないか。
論理を直観で置き換え、意味を夢想と取り替えてしまえば、世界は今ここで、楽園になる、天国になる、極楽になる。
しかもその裏側にはいつも、地獄が潜み、煉獄が隠れ、魔界がこちらをうかがっている。
だから羅列するのだ、愛を希望を欲望を劣情を、憎悪を憤怒を嫉妬を羨望を、狂騒を渾沌を永遠を刹那を、無限を宇宙を微細を虚空を、そしていくら並べ続けたとて、どうせ切りなどないのだから、適当なところで、適当に手を打って、投げ槍を投げ出して、砲丸投げ用に方眼紙を丸めて、訳の分からぬこんにゃく問答に丸め込められた上に、雨にも負けて風にも負けて、一日玄米四合も食べられないので、南無無辺行菩薩、南無観自在菩薩、南無遍照金剛、そういうものを一瞬一瞬思い出すことにでもして。
ほら、窓から入ってくる西日の橙色の輝きに誘われて、西方浄土で神々と戯れて。
雑然と生きよう、ただ雑然と。
明日にも結晶が始まるかもしれないと、かすかな予感を感じながら。
(北インド・ハリドワル 2021-08-30)
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