3.22(32/89日目) ユーレイルパス
朝、ユースホステルの食堂で朝食を食べていると1人の男性が話しかけてきた。
佐藤と名乗る長期旅行中のこの人は、フランス方面から今朝バルセロナに到着し、これからバルセロナの街を観光する予定とのこと。見た目はキテレツ大百科で言うところの勉三さんのような雰囲気である。
自分も今日は観光する予定だったので一緒に観光することになった。
朝食を済ませ、まずはメトロを乗り継ぎバルセロナの代名詞とも言える未完の大聖堂サグラダファミリアへ。メトロを降りるとすぐ目の前に、独特のオーラを放つガウディの傑作が立ちはだかった。時間を忘れしばらくの間見惚れてしまった。
それにしても、マドリッドでのサンチアゴベルナベウスタジアムの時もそうだったが、メトロを降りて地上に出たらすぐ目の前にど迫力の建物が目に入ってくるという、演出というか仕掛けはかなりインパクト大である。
大聖堂の中に入ってみたかったが、勉三さんが
「入場料、高!」
と拒絶反応を示したので、外観だけ見て終了することとなった。まだしばらくバルセロナには滞在するので中に入るのはまたの機会にしよう。
カサミラなどを外から見学しモンジュイックの丘へ。
地下を走るゴンドラで丘の中腹まで行き、そこから頂上にあるモンジュイック城まで15分ほど歩いて登った。
勉三さんは夜行バスで来たのであまり眠れていないらしく、頂上に着く頃にはフラフラ状態で、城に着くと城門に向かわずに
「先に昼寝をする。」
と言って城門近くの芝生の上で大の字になり寝てしまった。
なんともマイペースな人である。
すぐに目覚めそうもなかったので、勉三さんを放置し自分は一人でモンジュイック城を見て回ることにした。頂上からはバルセロナの市内と地中海の素晴らしい景色が一望でき、風は少し強かったがすごくいい景色だった。
見学を終え1時間後、勉三さんの所に戻ると彼は目覚めていて、河原の土手で青春に浸る高校生のように体育座りをして遠くを眺めていた。
横に座り一緒に遠くを眺めていると、勉三さんが口を開いた。
「いい眺めだねぇ。ところでホテルに置いてある僕のリュックの中にね、ユーロラインパスという鉄道チケットがあってね。」
初めて聞くチケットの名前だった。
「今朝もそれを使ってバルセロナまで来たんだけど、これがあればヨーロッパ中の列車に一日中乗り放題なんだ。もちろんスペイン以外にも行ける。5枚綴りのチケットなんだけど最後の1枚が余っていて、僕はもう使う予定がないからもしよければ格安で譲ってあげるけど、どうだい?」
お互いに貧乏旅行の身なのでお金に困っているんだなという雰囲気はよく伝わってきた。
2,500Ptsで売ってくれるというが、問題はチケットを利用するときにパスポートチェックがあるということ。しかし勉三さんは
「ほとんどの場合、パスポートのチェックを受けることはないから大した問題じゃないよ。長距離バスにも使えるしね。青春18切符みたいなものだよ。」
「え、バスにも?」
バス移動を基本としていた自分にも使えるらしい。バルセロナからマドリッドに戻る時に使えるかも。
そう思い勉三さんを全面的に信用して買い取る約束をした。
明日以降はしばらくの間バルセロナを起点に近くの街に足を伸ばしてみようと思っていたので、少し遠くの街のフットボールを観戦に行ってもいいかもしれない。
勉三さんはこのユーレイルパスを使って東欧の方にも行ったらしく、数年前まで戦争をしていたボスニアやサラエボの方にも行き、戦車などが置かれているのを見てきたらしかった。
日が傾いてきたのでモンジュイックの丘を降り、ホテルで一休みして夕食を食べに街へ繰り出した。
バレンシア以外のパエリアの味が気になり再びパエリアの店に入ったが、バレンシアのパエリアの方が美味しく感じた。店にもよると思うが。
ホテルに戻り自分の部屋に行くと、残りの1つのベッドに日本人がいたので挨拶。彼はトルコからポルトガルへ移動している途中で、バルセロナに立ち寄ったとのこと。偶然にも彼も佐藤さんという名前だった。
明日は今回のもう一つのスポーツ観戦の予定であるF-1のチケットを買いに行ってみよう。
本日の出費
夕食 800Pts
ゴンドラ 350Pts
メトロ 125Pts