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「図書の家選書」第2期・むれあきこ「おどれ白鳥」

こんにちは、図書の家です。

配信にあたってはこちらのエントリにてご報告させていただいたのですが、
各巻のご紹介もしていきたいと思います!

このエントリでは、むれあきこ「おどれ白鳥」をピックアップいたします。

この作品は、1958年に若木書房から発行された貸本として発表されたものです。

むれあきこ先生は、この〈貸本〉で一斉を風靡したマンガ家です。
1951年、16歳のときに『神戸又新日報』に採用された4コママンガでデビューした後、55年に上京。『少女クラブ』をはじめ雑誌でもお仕事はされていましたが、主戦場は貸本誌や貸本単行本。50〜60年代の貸本ブームの中心作家のひとりとして、確認できているだけでもゆうに100冊を超える膨大な数の作品を発表しています。

しかし、基本的に貸本は読んだらそれまでのメディアであったため、むれ先生の作品が後の世の人の目に触れるのは大変難しくなってしまっています。このたび、電子書籍という形で、多くの人に作品に触れていただくことができ、本当に嬉しいです。もちろんこの「おどれ白鳥」、初単行本化です!

1958年に貸本に進出しその年に描いた長編の6作目である「おどれ白鳥」は、シンプルな線で描かれた丸みのある愛らしい絵柄の反面、ストーリーはとてもシリアスな内容。有名バレリーナである母と、その娘の親子関係を描いた作品です。

この時代、〈母子もの〉というのは数多く発表されており、いわゆる流行のジャンルなのですが、この「おどれ白鳥」は、主人公だけでなく母親の心情にも踏み込んだ描写がなされ、すれ違う親子の葛藤がより深く丁寧に描かれているのが印象的です。今読んでもリアルに迫るような問題を、作中の母子が乗り越えていく様には大きな感動があります。

むれあきこ「おどれ白鳥」(立東舎)より
むれあきこ「おどれ白鳥」(立東舎)より

家族関係の葛藤というのは、その後の少女マンガにおいてひとつの大きなテーマになっていくことを踏まえると、大変興味深く思えます。バレエという題材が、こうしたテーマを表現するのに適しているのかもしれません。

むれあきこ「おどれ白鳥」、この機会にぜひ読んでいただきたい一作です!巻末には、むれ先生からのコメントもあります、よろしくお願いします!


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