新型コロナ禍に於ける終末期医療
先日、実父が逝きました。享年81歳。現代においては少し早いのではないか?と思わなくもないが、こればかりはその人によるので、どうしようもない。
どんなに調子が悪くても痛いともなんとも言わないし、医者嫌いで自分からは絶対に行こうとしない。とはいえ、明らかに様子が普通ではないので、先ずはかかりつけに連れて行くも、さっきまで足が痛いと言っていたのに、問診になると「足はなんともない」などと言い出す始末。そりゃ、医者も困る。この時点で何か誤魔化してるな、とは思っていた。
翌日、大きな病院に連れて行くと、血液検査の結果が思わしくないので即入院。輸血を受けて様子をみることに。1週間ほどして精密検査の結果から、癌が判明。胃から出て、肝臓、肺へと転移していて、もう手の施しようがない状態。外科的手術や抗がん剤による治療は余計に寿命を縮めるだろうということで、積極的な治療は行わず、緩和ケアでもう長くはない残された時間を過ごすことにした。
この新型コロナウィルスによる非常事態宣言下、一般病棟は全く面会ができず、2週間の入院のうちでビデオ面会できたのが一度きり。緩和ケア病棟は予め登録した3名のみ面会が可能。もちろん、一度登録したら変更することはできない。登録できるのは同じ県内に在住する者のみ。県内在住でも2週間以内に、海外渡航や非常事態宣言下の地域に行った人も登録できない。面会時間は、15〜16時または、19〜20時の時間帯のうち、1人1日1回15分まで。一度に病室に入ることができるのは、2名まで。完全予約制。当然、出入りもチェックされる。
緩和ケアは基本全室個室なんだが、有料の部屋(日額7,700円)であれば、ソファーがあって、付き添いも可能。ただし、付き添いをするということは、一緒に入院する、というのとほぼ同義。1日に1回数時間家に戻るということは可能だが、途中で別の場所に立ち寄ってはいけない。もちろん、この場合も途中で付き添いの人が入れ替わってはいけない。
週のうち3日は在宅勤務で面会時間に合わせて途中抜け、というようなスタイルで対応した。幸い妹が近くにいるので、わたしが行けない時はかわりをたのんだのだけど、結局ほぼ全日来てくれた。お陰でとても助かった。3人で面会に行くときは、1人が控室で待機、後で入れ替わる。だいたい、母とわたしが先に入って後でわたしが妹と入れ替わった。
最期の1週間。月曜日に病院より呼び出し。今日明日にも危ないということだった。点滴や酸素吸入にはもう医療的な意味はないのでこちらから希望して外してもらった。ドクターも余計身体に負担がかかるのでその方がよいだろう、ということだった。
結局、妹が泊まり込みで様子をみてくれていたが、その日、翌日ともなんともなかった。確かに呼吸は浅くなっているし、肺の機能が低下して大きく息をしても十分な酸素を取り込めない状態であろうと思われた。そして3日目の夕方、わたしと妹がちょっと出た隙に逝ってしまった。まぁ、母と2人になりたかったのだろう。少し前まで、喋ることこそできなかったが、こちらのいうことは聞こえていて、瞼で返事をするなど反応もあったし、(絶対あるものではないけど)死前喘鳴もなかったし、少し前の回診でも割と安定してると言われていたので、ちょっとびっくりした。
COVID-19 関連だけでなく、今、病院全体に様々な制約がかかっていて、これはスタッフへの負荷は相当なものだと思う。そんな中で、最期のケアをしてくれた病院のスタッフには大変感謝している。