自炊は楽しい
「一人暮らししたらちゃんとご飯食べられるのかしら」
就職が決まり、いよいよ家を出る日が近づいて来た時、何度も祖母に言われた言葉だ。
私は学生時代、一人暮らしをした経験がなかった。大学二年生までは実家で、大学三年〜四年は祖父母宅に住んでいたのだ。いずれにせよ通学には片道二時間ほどかかっていたので本音では大学の近くに一人暮らしをしたかったのだが、経済力のない学生の悲しさ、それはかなわなかった。そして親や祖父母と暮らしていたため、家事にはあまり携わってこなかった。もちろん洗濯物を畳んだり、風呂掃除をしたりといった手伝いはしていた。しかし食事の用意については、皿洗いくらいしかしたことがなかったのだ。
さすがにまずいと思い祖母に少し料理を習ったが、習得したとは言えないまま、一人暮らしが始まった。
念願の一人暮らしに、やはり気分は浮き立った。入社直後はほとんど残業がなかったこともあり、今後のためにもと自炊を始めてみた。
最初はネットで調べながら、色々な料理に挑戦してみた。今はネット上にいくらでもレシピが転がっているので、困ることはない。むしろ選ぶのが大変なくらいだ。はじめは材料の切り方もわからないほどだったが、だんだんと慣れてくるに従い、味見をしながら自分の好みに合わせて調整することもできるようになった。とても祖母や母の料理には届かないが、一応は形になる料理を作れるようになってくると、元々外食より家で食べる方が好きなこともあり、自炊が趣味の一環になってきた。
また、自分で料理すると栄養バランスも考えるようになってくる。元々、祖母も母も野菜好きなので自然に栄養バランスの良い食事を摂ることができていた。しかし自分で作るのであれば、頼れるのは自分しかいない。ネットや本で調べながら、偏りがないよう意識をしながら料理をするようになった。
ただ自分一人だとどうしても手抜きになり、何日も同じようなメニューになってしまうこともある。家族ができた場合に備えて、楽しみながらレパートリーをさらに増やしていきたい。